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取締役10年更新会社の「会社法違反過料事件」の顛末と「異議申立て」手続き

裁判所から届いた事実と異なる「会社法違反過料事件」に対する「意義申し立て」手続きを行い、結果異議を認めていただき減額となりました。このような手続きに関する情報が少なかったので、以下に顛末をまとめてみました。

ことの始まり

コロナもピークを過ぎ落ち着き始めた今年の6月13日、高知地方裁判所民事法定係から1通の手紙が届きました。会社宛てに裁判所から手紙が届くのは初めてで、あまり良い想像はしませんが、とにかく中身を確認すべく空けてみました。

中身は裁判官から「会社法違反過料事件」の決定として、過料金16万円に処するというもので、最初意味が分からず目が点状態でした。とはいえ違反がないと連絡が来ることもなく、心当りがあるとすると「会社法第472条に関する通知書」が届いて、会社を廃止してない旨を届けなければならなくて慌てて手続きしたことと、この時に取締役改選10年の期日を過ぎて登記がされてないことを教えていただき、バタバタで半年後の約2年半遅れでこの登記を済ませたことでした。

内容を確認したところ、違反内容に記載された内容が大きく事実と異なる部分もあり、とにかく異議申し立てを行うため知人の弁護士に連絡したのがことの始まりでした。

会社法第472条に関する通知書

最初の発端となった「会社法第472条に関する通知書」とは、会社登記後12年を経過して登記のない株式会社は、事業を廃止していないときは管轄の登記所にその旨の届け出が必要で、届け出や登記がされない場合は、その期間の満了時に解散したものとみなされる法律です。

通常の会社では2年以内に取締役を改選し、登記する場合が多いのですが、株式を公開しない会社で定款で定めた場合は最長で10年間取締役を改選しなくても良いのです。無論私の会社は私が100%出資し、取締役も私1人の会社ですので、この10年を記載して定款を公証人役場で認証してもらった後に会社登記をしています。ですが、10年経過してすっかり取締役の改選と登記を忘れていたため、登記に関する手続きが全く発生してないため、会社法第472条に従い法務局が確認の所管を送付し、慌てて返送した次第です。

第472条 休眠会社(株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したものをいう。以下この条において同じ。)は、法務大臣が休眠会社に対し2箇月以内に法務省令で定めるところによりその本店の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その2箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす。ただし、当該期間内に当該休眠会社に関する登記がされたときは、この限りでない。

2 登記所は、前項の規定による公告があったときは、休眠会社に対し、その旨の通知を発しなければならない。

会社法第472条
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#3437
法務省 令和元年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00083.html

取締役の改選と登記

会社法第472条の対応後、コロナ下の4月にやっと余裕ができて、約2年半遅れで取締役の更新手続きを行いました。余談ですが、この手続きが本当に大変で、オンライン手続きが意味不明。普段から会社の登記や、決算や申告などは自分で行うぐらいの事務作業はできますが、わざわざ紙の作業を難しくしたようなシステムで、最悪でした。

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仕方なく法務局の電話相談の予約を入れて書類を一式作成、2度再提出を繰り返して、最後はコロナ下仕方なく法務局でリアル手続きを行い完了しました。その手続きが終わって約2か月後に、裁判所から会社法違反の過料事件の通知が届いたのでした。

裁判所からの届いた会社法違反の過料金通知

実際に届いた通知が以下です。まあコロナ下で多少の遅れは仕方ないのですが、平成2年6月に平成元年のお知らせが届くのはコロナだけが理由ではなさそうですね。

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内容を確認して心当りはあったので、謹んで過料を支払わなければと思いきや、その額に驚いたのが次の文章です。ちょっと待って、私が違反したのは2年半程度なの10年以上長いこと違反したことになっていますよね。会社の定款を確認せずに法務局が告発して、知らないところで決定するなんて怖すぎます!

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取締役は10年間登記を更新しなくても良い

会社法第332条1項、2項には以下の記載があります。

取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

以下は私の会社の定款ですが、取締役は1名で任期は10年以内と定めています。

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まさか法務局が法律と異なる過料請求を行ってくるとは、最初は本当に信じれませんでした。気を取り直して、ここは絶対対抗せねばと思い知り合いの弁護士さんに電話で相談することにしました。

知人の弁護士へ「意義申立て」の相談

運よく電話がつながり、経緯を口頭で説明のうえ異議申し立ての手続きをお願いしたい旨をお伝えすると、「意義申し立て簡単にできるから自分でやってみたら」と言われて拍子抜け。裁判所で異議申し立てが簡単というのは想像できませんが、貴重なアドバイスをいただいたので先ずは自分でやってみることにしました。

以外だったのが、裁判所で異議申し立て手続き方法を相談したところ、初心者にも丁寧に教えてくれたり、可能なアドバイスを頂くなどの素晴らしい対応をいただきました。正直、質問受け付けないオーラ満載でATフィールド全開しているものと勝手に思い込んでいました。

「意義申立て」手続きの実際

意義申し立ては意外と簡単に記載でできます。特に今回は、公証人役場で認証された会社の定款という確たる証拠と、故意でないことを証明するための遅れながらも取締役の登記を行った謄本があり、楽に手続きできました。

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以下の裏面は、謄本はまだ付属書類として記載していません。
会社の謄本については裁判所で対応いただいた書記官の方から付けた方が良いとアドバイス頂いて、このコピーの後に追加しました。

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手続きにかかった時間は、法務局で会社の謄本を取得する時間も含めて2時間半程度でした。以下は証拠となる謄本の記載部分です。

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最終的には16万円の過料決定が取り消され、4万円に

結果的には、異議申し立てから約半年後の12月、登記を忘れていた期間に応じた過料金4万円の会社法違反過料事件の決定連絡が12月上旬に届きました。無論、うっかりとはいえ手続きが遅れたのは事実ですので、今回は異議申し立てをぜすに2週間後の決定を待ち、その後届いた納付書で4万円の支払を終えました。

上記は私の異議申し立てが認められ結審したのですが、とはいえ取締役の登記を忘れていたのは問題なので、次の令和12年3月までには忘れずに登記をせねばと反省しています。

しかしながら、うっかり2年半申請が漏れていたことを過料事件として10年とされてしまうのはいかがなものでしょう。何のために定款を公証人役場で認証してもらって、会社を法務局に登記してデータ管理しているのかということを法務局の皆様にも再考いただければ幸いです。

最後に

今回顛末についてこちらで公開したのは、私自身が学んだことの備忘録でもありますが、今回のように異議申立てをする際の例がネットに少なく、私と同じように会社法過料事件で内容が違う指摘を受けた経営者のお役に立てればとの思いもありました。

また、個人的に電子国家と言われるエストニアをウオッチしていますが、エストニアでは手続きは全て電子化されて、法律も電子化に合わせて起業家を育むように制定されています。

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出展先:e-estonia toolkit より( https://e-estonia.gov.com.ee/e-estonia-toolkit/

取締役の改選と登記などは、今のIT技術を活用したらエストニアのように簡単に電子申請が可能になりますし、法務局からリマインドしていただければ、まともな会社はしっかり手続きして必要な費用を納めます。また税務署は年々申請がやりやすくなり、電子化は進んでなくても申請を忘れていたらハガキなどでアラートをしっかり連絡いただけるなど、私どものような中小企業に寄り添い始めていると感じています。法務局の手続きも、税務署と同じように中小企業に配慮いただければ幸いです。この日本の中小企業の時間を大切にして将来の税収増に結び付けるためにも!

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