佐倉紫の小説書いてみようぜスペース第三回用テキスト

○「一人称と三人称」というテーマでお話しさせていただきました。スペース内で出てきた例文を記載しておきます。


《例文1 背後からテニスボールが飛んできて頭に当たった(主人公が見えない場所)》

【一人称】
 テニスコートではテニス部の生徒が大会に向けて練習中だ。
(暑い中よくやるなぁ)
 ってぼんやり歩いていたら、いきなり後頭部にガンッとなにかぶつかってきた。驚いたのと痛いのとで思わず「いったぁ!」って叫んじゃう。
 頭を押さえながら振り返ったら、テニスボールが足に当たってコロコロと転がっていった。どうやらこれが頭に飛んできたみたい。
(絶対にテニス部の奴が打ってきたんでしょう?)
 思わずむかっときて、テニスコートに向けて「今のボール誰のぉ!?」って叫んでやった。

【三人称】
 テニスコートではテニス部の生徒が大会に向けて練習中だ。
 暑い中よくやるなぁ……と、テニスコートを通り過ぎながら紫がぼんやり歩いていると、彼女の背後からひゅっとなにかが飛んできた。それは彼女の後頭部にガンッと当たり、足下をコロコロと転がっていく。
「いったぁ!」
 たまらず叫んだ紫は、頭を押さえながら振り返る。そのとき、テニスボールが彼女の足に当たった。どうやら頭に飛んできたのはこれらしい。
(絶対にテニス部の奴が打ってきたんでしょう?)
 紫は思わずむかっとする。そして、テニスコートに向けて「今のボール誰のぉ!?」と大声で叫んだ。


《例文2 キャラクターが三人くらいいるとき(視点別に描かれるものの違い) 勇者一行》

【一人称】
 とうとう魔王が住む城の門までやってきたぞ。さすがのおれも武者震いがしてきた。
「よし、突入方法を考えよう」
 まずは作戦を練らなければ。おれが勇者らしく提案すると、さっそく剣士が手を上げてきた。
「突進あるのみ! 行きましょう、勇者さん」
 だが向かいにいた魔法使いは首を横に振ってくる。
「罠があったらどうするんですか。まずは突入経路の確保が先です」
 むぅ、確かに。うなずいたおれは「聖女はどう思う?」と声をかける。
「魔法使い様に賛成です。でもどんな罠があったとしても、わたしがみんなを治すから大丈夫ですよ」
 と片目をつむる聖女たん。ああああ、可愛い~! そして頼りになる~! おれ、魔王を討伐した暁には絶対に彼女と結婚するからな……! うへへ、想像するだけでちょっとよだれが……じゅるり。

【三人称】
 一行はとうとう魔王が住む城の門までやってきた。漂ってくる異様さに勇者はもちろん、パーティーの面々も武者震いを感じてしまう。
「よし、突入方法を考えよう」
 勇者が一行を振り返って勇ましく提案する。すぐに剣士が手を上げた。
「突進あるのみ! 行きましょう、勇者さん」
 だがそれに対し、勇者の向かいにいた魔法使いが首を横に振る。
「罠があったらどうするんですか。まずは侵入経路の確保が先です」
 この提案に、勇者は「むぅ、確かに」とうなずいた。そして背後の聖女に意見を求める。
 聖女ははきはきと答えた。
「魔法使い様に賛成です。でもどんな罠があったとしても、わたしがみんなを治すから大丈夫ですよ」
 聖女は自信たっぷりに片目をつむって見せた。
 可愛らしい聖女の仕草に、彼女に心底惚れている勇者は思わず身悶える。
 なにを妄想しているのか、よだれまで滲ませる勇者の姿に、剣士と魔法使いが若干しらけたような表情を浮かべていた。

・一人称は勇者の視線から語られ、勇者の感情だけで完結する。
・三人称は勇者を含め全員を端から見ている感じになるので、他のことにも目が向く。
(とはいえ一人称でもこの文章の場合、なんか魔法使いと剣士がしらけた目を向けてきている気配がするが、気にしない気にしない、とかって入れれば描写は可能)


《例文3 一人称と三人称のテンポの違い 母親紫と二人の子供、○子と○市》
【一人称】
 ありゃ、時計を見たらもう18時近くなってるじゃん。
「○子~、いいかげんに宿題やっちゃいなさい」
「やだー」
 ちぃ! 間延びした返事をしやがって。モラトリアム気取ってる場合じゃないっての。ってか○市までだらだらしやがって。
「○市も、いいかげんにお風呂に入りなさい」
「やだー」
 おまえも間延びした返事するんかい! まったく、どいつもこいつもー! めっちゃ歯ぎしりが止まらんわ。

【三人称】
 紫がふと時計を見たらもう18時近くになっていた。
「○子~、いいかげんに宿題やっちゃいなさい」
 紫の言葉に対し、○子は「やだー」と間延びした返事をする。モラトリアムを気取っている場合じゃないぞと、紫は思わずイラッとした。
 ○子の隣では○市もだらだらしている。
「○市も、いいかげんにお風呂に入りなさい」
 と紫が言うも、○市まで「やだー」と間延びした返事をしてきた。
 紫はたまらず(どいつもこいつも)と内心で歯ぎしりしてしまう。


《例文4 物語の続きを匂わせる(神視点・悪い例)》
 紫はため息をつきながら「じゃあもう勝手にしなさい」と子供たちに言い捨て、晩ご飯の支度に向かった。
 宿題と風呂を強要しなかったことで、このあととんでもない忙しさが待ち受けているとは知らずに……。

《例文5 物語の未来を匂わせる(神視点・いい例)》
 結婚式の夜が更けていく。
 街では多くの人間が祝杯を挙げ、新たな国王と王妃の誕生を喜んでいた。
 満天の星空の中、月も明るく輝いている。
 それはまるでこの国の未来を照らすような、美しく希望に満ちた光だった。

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