格闘ゲームの糸口①【スト6】
実践論というより、考えをまとめたものです。
端書
筆者のプレイするランク帯はレジェンドです。
act3の最終MRは2307で、ブランカ1位でした。act4の後半からは、リアルの都合であまりプレイできていません。
レジェンドと言うと一般的には上位層ですが、もちろん、大会で活躍するような超上位プレイヤーとは差があります。彼らは本当にすごいのです。MR以上に、オープントーナメントで勝ち上がることは本当に難しい。
しかし彼らと異なり、自分はスト6から本格的に参入した新規プレイヤーです。
それが何を意味するのか?
つまり、多くのプレイヤーと同様だということ。経験が圧倒的に不足し、コマンドの技術も未熟。反応速度や優れた思考力といった素晴らしい才能は、秘められているのか不明。
レジェンドは、そういう一般人でもなれます。
LEGENDランクは限られたセンスを持つ天才の集まりではなく、ゲームに費やせる時間があって、かつちょっとしたコツを知っているだけです。
ゲームを漫然とプレイしているだけでは上達しないように、そのコツさえつかめば、今感じているような壁は簡単に乗り越えられます。
ヒット確認を練習したり、非常に難しいコンボを習得する。
そういった技術面とは別に、格闘ゲームにはパズルのような側面があります。すなわち、少し視点を変えたり、特定の状況における選択肢について深く考えてみると、それだけで実力が向上する余地があります。
ゲームプランを考える
キャラの操作、コンボは完璧。
確定反撃などの基本的なキャラ対策も学んだ。
では、それ以上はどうやったら上達できるのだろうか?
その時に差をつけられるのが戦略です。
攻略をすること、または戦略とは何か。
それはミクロでは地上戦や、ゲージ運用。コンボ・起き攻めの選択。
また大きなくくりでは、大局観やゲームプランにもなるものです。
まず手をつけるのは、地上戦ではない。
ほとんどのプレイヤーにとって、地上の差し合いよりも大切なことがあり、それが全体的なゲームの流れが見えているかどうかです。なぜか?
それは、細かい地上戦を行うこと自体が戦略の一つに過ぎないから。
中足を差す。置き技をスカして差し返す。微歩きに反応して小技を押す。
そういった地上戦は、難しくて曖昧で、リスクも伴います。それをしないで勝てるなら、それに越したことはない。
地上戦というよくわからないものに手を出す前に、もう少し楽をして勝てないか考えてみる。または、目的意識を持って地上戦を行う。
それが攻略の一つです。
コンボや局所的なキャラ対策と違って、リプレイを見るだけではわかりませんし、教えてくれる教材もあまりありません。だから自分で考えなくてはいけないし、それを考えるのは楽しい遊び方です。
単純な戦略を設定する
スト6はアクションゲームであると同時に、フレームとヒットボックスで構成された確率のゲームでもあります。
麻雀やポーカーと同じ。違うのは、技術介入度が非常に高いということ。しかし確率、つまり運で勝敗が大きく左右されることは同一です。
運要素は起き攻めの読み合いだけでは?
と考えるかもしれませんが、実際には立ち回りもすべて読みあいです。置き技は相手が前に来るのを読んだから置くのであり、ドライブラッシュは相手の意識が逸れていることを読んで走るものです。ただ難しく、起き攻めほど明示的ではない。
こういったゲームでは、期待値において効率的なプレイを行うことが勝率を向上させる上で非常に重要です。
起き攻めで読み勝ち続けることはできず、無計画にキャラクターを操作していては、計画を持った相手には長期的に負けてしまいます。
参考:
何が言いたいのかと言うと、運ゲーは効率の良い運ゲーをしている方が長期的には勝つということです。
スト6においては、それがゲームプランである。
技術に差がなければ、より良いプランを持っている方が勝ちます。究極的にはキャラごとに取れるプランの限界があり、それがキャラ相性となって最上位帯での勝率に反映されます。
ゲームの仕組みを理解する
その上では、ゲームを単純化することが有用な思考方法です。
例えば、リーチを重視して大攻撃だけを振り続けたらどうなるのだろうか?
立ち回りでは常に大Pを振る。大Pをガードされたあと、最速で再び大Pを押してみる。または遅らせて大Pを押す。
またはリターンを重視して、ドライブラッシュだけで攻め続けたらどうなるのか。
地上戦を放棄して、とりあえずラッシュを仕掛けてみる。近距離でもラッシュをしてみる。
後ろに下がり続けてみる。または、前に歩き続けてみる。
これらはごく原始的な戦略です。実行すると、様々なリスク・リターンが生まれます。
例えば大Pの例では、後ろ下がりに中足でリスクを負わせる必要があったり、全体フレームが重すぎるため飛びが噛み合いやすいといったデメリットの存在は、誰でも理解できると思います。
メリットの一つには、それを明確にし、理屈として理解できること。
そしてもう一つには、改善点とその改善案を想起できることです。
ここでは突進技や、ダッシュ攻撃としてのラッシュを単純な戦略として設定してみます。
ラッシュは通った時に有利フレームを獲得できるため、立ち回りで非常に魅力的な選択肢です。飛びも同様です。しかし飛びは、慣れている人なら反射的に対空を出されてしまいます。
26Fのインパクトが返せないのと同じように、暗転を含めた発生25Fからなるドライブラッシュを無意識に止められる人はそういません。
それが通る時と通らない時に状況を分けてみます。
通る時よりも、通らない時の方が大事です。ラッシュが通らなかった時、相手は別の行動・別の意識配分を選択しているのであり、それに対して有効な選択肢を設定すれば、戦略を向上させられるからです。
まず、相手が技を振っている時は失敗します。
当たり前のように感じるかもしれませんが、これが重要であり、その時には相手が置き技を降っている。プレイヤーのラッシュという行動を無意識にでも読んで、立ち回りの読み合いとして選択しているのです。
→置き技にリスクを与える必要がある。
それは地上戦であったり、弾に対しては飛びであったりします。
前述したように、このような過程があって初めて、地上戦という言葉が出てきます。最初から地上戦をただ狙ってもいいですが、より広い選択肢を持ち、そのメリット・デメリットを理解することが立ち回りの読み合いです。
そもそも地上戦という言葉の定義が曖昧ですが、狭義では「前進して技を当てる」「前進を止めるために技を置く」行動の攻防を指します。
これらの解説は、すでにyoutube等にあるかと思います。
しかしこれにしても、やはり仕組みを自分で理解するのが重要です。なぜ技を置くと差し返され、前に歩くと置き技に引っかかるのか。小技と中技の使い分けはどこにあるのか。どこが読み合いになっているのか。
弾も置き技です。
逆に言えば、弾はラッシュを止める上で非常に有効な手段であることもわかります。例えば豪鬼の強波動拳は、超リーチかつ発生12Fの置き技であり、ドライブラッシュの最速4Fが発生15Fなので激しく有効です。
ただの置き技ではタイミングと距離次第になってしまいますが、弾なら飛ばれさえしなければ常に一方勝ちできます。
こうなると次は、弾に対して有効なアクションを考えてみる。
能動的には、飛びや踏み込んで技を当てに行くこと。受け身なら、ジャストパリィからのラッシュや弾抜けなど。
次に、相手がラッシュを見ていても止められます。
相手がそれに意識を割いているなら、こちらは何をすればいいのか? 踏み込んで技を当てに行きやすくなり、弾を持っているなら弾を打ちやすくなる。また対空が難しいキャラなら、飛びが通るかもしれない。
余談。
意識配分の読み合いという意味では、中段はそれに該当します。
20F~の中段は、見てから立つかパリィを取れます。しかし中段を意識している時、防御側は投げ抜けがおろそかになる。つまり対の読み合いとして投げ択が成立し得る。
また、最速暴れもしにくいので、遅らせ打撃重ねも有効です。
読み合いに関しては、また別の機会に書きます。
このように、まずリターンのある行動と、それに対する相手のカウンターがあり、そしてそれに対して自分がリターンを取れる行動もまた存在します。
それらをできる限り明らかにしてみると、ゲームの全体構造が見えてくると思います。
大局観を獲得する
スト6の攻防において重要なのが、
・「どの距離で」「何を見ながら」「何をするのか」。
・それに伴って、ラインを上げるのか。下げるのか。
この二つです。
局所的な、弾を飛ぶ・飛ばないというような読み合いの前に。
どちらがラインを上げるのかというのは、キャラ相性(と付随する体力やゲージの状況)によって決定されます。
特定のキャラに対して(基本的なキャラ対策は抑えているのに)なぜか勝率が悪いのなら、それはこれらの要素の理解が不十分だからです。
それを見直すのがゲームプランの確立です。
例えばラシードに対して、ワールを見てからインパクトで返すという対策があります。これはワールに苦戦するマッチアップなら、特に有効です。どういうキャラかと言うと、弾も弾抜けも持たないキャラクターです。
その前提を理解する必要があります。通常技は届かない。ガードしていても状況は好転しない。ラッシュや飛びはワールで阻まれる。または、溜めワールで有利フレームを取られてしまう。
つまり、ラシードに対してはインパクトの間合いに入ることが一つの重要な戦略です。その間合いで、ワールを見る。見ながら技を当てに行く。
この時、ゲームはどのように変動するだろうか。
まず、こちらは距離を詰めて、ラシードがラインを下げています。
ラシードはワールを打たないかもしれません。前述したように、ワールを打たないという選択を相手が取ったと読んだ場合は、それに対してこちらも選択肢を変更し、よりリターンを取りに行くべきです。
重要なのは、常にワールを見ている必要はないということ。
意識配分の読み合いです。ここまで繰り返したように、それを明確にするべきです。
マッチアップは、攻めさせられる方が不利である
「基本的に」そうなっています。攻めなくていいなら、できる限り攻めたくないのがスト6です。
理由はいくつかあり、一つには意識配分において攻めている側が不利だからです。
例えば、ジュリやDJのラッシュ。それとキンバリーのラッシュ。この2つは何が違うのだろうか。
ラッシュの強さで言えば、キンバリーは相当に強いです。それに早駆けやOD彩隠形という強力な奇襲技も持っている。
しかしジュリやDJのラッシュの方が、相手としては止めづらい。
それは、ジュリやDJは追われる側で、キンバリーは追いかける側だからです。
つまり、キンバリーに対してプレイヤーは待つことができ、待ちながら対応するボタンを押して、ラッシュを止めることができる。
対してDJを前にすると、プレイヤーはエアスラッシャーに対応する必要があります。弾を前にしてはDJを追いかけなければいけない。
前に歩きながら、相手の攻めを受けるのはとても難しいです。それは、前に歩くのが多大な思考リソースを必要とするからです。
なぜか?
踏み込んで技を当てに行ったり、ラインを上げたりしている時、プレイヤーは相手キャラクターの位置を注視しています。
相手キャラクターが後ろ下がりをやめ、または前歩きに一瞬転じた時、こちらもそれに対応して操作を変える必要がある。なぜならレバーを前に入れたままでは、ガードができないからです。
対して後ろに歩いている方は、余裕があります。後ろ歩き=ガードだからです。何もしなくても、最低限ガードはできる。ならば余ったリソースは、相手の対応に費やすことができます。
次に地上戦として、前に歩いている方がリスクを負っているからです。
ラインを上げると言っても、前入れっぱではなく前後に動きます。しかし割合として、前に歩く=ガードを解く時間が長いので、被弾する確率が増加します。また防御側がふいに反転して技を当てに来た時、対応が難しい。
それだけではなく、例えば中足を差しに行く場合と、それを置き技で止める場合では、前者の方が全体フレームが長くなります。
地上戦の距離とは、一方の最長リーチ技の先端付近であり、中足は届きません。そこから技を当てに行くので、技のフレームに加えて前歩き分のフレームが加算されます。踏み込みが足りなければ技は届かず、差し返されるリスクがあり、また歩いている間は無防備である。
さらにスト6は通常技からキャンセルラッシュで密着有利を取れるので、歩きガードの価値が低い。
待つということは何もしないということではなく、待っている方が攻めに転じることも含めて、待つ側の優位性です。
追う側が不利としても、不利なりにやれることはあります。それがゲームプランです。
もしくは、それを相手が十分に理解していない場合、それを利用して期待値を高めることができる。
攻めなくてはいけない場面で、むしろ極端に下がってみると、相手はどのような行動を取るだろうか。
逆に、相手が攻めなくてはいけないのにそうしてこない場合、こちらは無理をする必要はない。99カウントが経てばゲームは終わります。
このようにして戦略を考えると、お互いのキャラクターが取るべき行動がなんとなくでも理解できます。
相手がそれから外れているなら、その戦略を立てた過程に基づいて、その相手をより搾取できます。
まとめ
一つ一つの行動にはリスク・リターンがあり、対となる行動がある。
立ち回りにおいて、取れる行動は無数にあるが、それぞれの期待値は異なっており、最適な行動が存在する。
それはインタラクティブに形成される読み合いである。
その仕組みを理解した上で、状況において効率的なプレイを選択することがゲームプランであり、ラインの変動は、その核となる要素である。
究極的に、どちらのキャラクターがより効率よくプレイできるかというのがキャラ相性である。
しかし実戦においては、相手が最適な戦略を取らない場合、こちらはそれに対応してより搾取した戦略を取ることで期待値を上昇できる。
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