鎌倉殿の13人とカタールの52人

2022年12月18日

テレビ好きのわたしにとっては忙しい日だった。
2か月前に予約していた美容院は、なぜか夕方の時間。
この日はドはまりした「鎌倉殿の13人」の最終回があり、M-1もあり、深夜にはワールドカップの決勝戦が控えている。

まずは、「鎌倉殿~」に間に合うように家に着かなくては!
なんとか到着。
M-1は前半部は録画済。後日見よう。そして予約していた鎌倉殿をキャンセルしてHDD録画はM-1に充てよう。
ワールドカップはわたしがどう転んでもいいように、予約録画だ!

段取りを整え、「鎌倉殿」に向き合う。
冒頭から楽しくて仕方ない!吾妻鑑を読みふけるのは、てっきり長澤まさみちゃんかと思いきや、まさかの松潤、しかも次回の家康として!ヤラレタ。
それ以降、あっと言う間の1時間だった。
この1時間の怒涛の展開にいちいち振り回されながらも、最終回として終わってしまうことがもう既に寂しくて寂しくてたまらない。
次々に回収される伏線も、いちいち、唸りたくなる嬉しさ。
そして「退場」していった人物があれよあれよと登場してくる。
渦中ではあんなに感情移入していたのに、
「あ。そーいえばこの人も出てたんだった!」とすっかり忘れていたことに気づいたりする。
それくらい、たくさんのひとの、たくさんの物語が紡がれていたこの1年間。
歌舞伎コンビの絡みは、歌舞伎ファンとしてツボだった。

ラストシーンは、しっかりと北条義時の最期だったのに、政子の物語でもあり、泰時の物語でもあり、平六の物語でもあり、のえの物語、りくの物語・・・
なんということだ!三谷幸喜!
登場人物全てで、スピンオフ企画が成り立つではないか!!!!
一時は「全部大泉のせい」と、完全に大泉洋が主役に思えた前半だったのすら、忘れていた自分に驚愕する。
なんなんだ!三谷幸喜!

大きな歴史の流れを描きつつ、その渦中で生きる人々の心の機微をこれほどまでに豊かに繊細に描いたドラマをありがとうございます!
人間はいずれ誰でも、命を終える。
死に際、死にざまに、そのひとの人生が集約される。
教科書で教えられた史実では悪者っぽい扱いの人たちも、結局は1人の人間。置かれた立場はさまざまあれど、恋もし、笑いもし、泣きもし、嫉妬もし、怒りもし、悩みもし、それらの時間の積み重ねが「生きる」ということなのだ。
悪いヤツなんて、ホントはいない。誰の視点で物事を見るかで、イヤなとこやダメなとこはあっても、みんな愛すべき存在なんだということを、1年かけて毎週、じわじわと見せつけられた気がする。
あっぱれ。

平六と小四郎、酒を酌み交わすシーンは絶品だった。
コンプレックスと好意は、これほどまでに表裏一体なものかと、驚いたし納得もした。
結局のところ、この2人の絆は、相当なものだったのだなと。
いろいろぶちまけられて、小四郎は平六を退場させることだってできたのに、それはしなかった。むしろ、太郎を頼む、と言った。
なんなんだ、泣ける。

言わずもがなの、ラストシーンの政子と小四郎。
すすり泣きの声をバックに流れるエンドロールなんて、初めて見た。
すごいものを見せられた。

一息ついてからM-1のリアタイに移ってみたけど、衝撃が強すぎて、M-1が入ってこない、かすんでしまったよ。
そしてぐったりと寝落ち。

ワールドカップ決勝戦は、翌日夜に録画を視聴。
ニュースでどちらが優勝したかはさんざん流れているから、まあ、そうなんだろうな、と思って見始めた。
が、しかし。

なんなんだ!
ずっと面白い!
ボールの展開が早い!
中だるみの時間がない!
ゴールがすごい!

あっと言う間に前半が終わる。
そして一転した後半も、あっと言う間に終わる。
延長戦もあっと言う間に終わる。

楽しい!
終わらないで!
もっとずっと見ていたい!

PKを見守りながら、決着がつくことへの興奮と、終わりがくることの寂しさとがせめぎあう。
素晴らしい戦いだった。
「にわか」ながら、心が動いた。
動きっぱなしだった。
テクニックもそれぞれ素晴らしい。
判断力や、持久力、点を取るんだ!勝つんだ!という強い気持ち。

神様がいるならば、メッシに与えられた「優勝」というご褒美。
若いエムバペの、なんともうかがい知れない「無表情」2人のギャップが、ひとつの時代の変わり目を感じさせる。
エムバペのこれからが、本当に楽しみで仕方ない。

PKで決まった決着、ということで、
誰かの過失、とかじゃない、
誰もが本当にやり切った!
というなんだかとてもピースフルなエンディングに思えた。
なんかね、「鎌倉殿~」の最終回を観終わったときと似たような感じになったんだよね。
誰かがMVP、とかじゃない。
みんな、みんな、ブラボー!

時代の潮目が変わったような、何かのスイッチが入ったような、そんな象徴的なものに、わたしには思えたのだ。
2022年12月18日に発信されたことが。
鎌倉とカタールで、13人や52人どころか、みんな、みんな。

ちょっとおいしいおやつが食べたい。楽しい一杯が飲みたい。心が動く景色を見たい。誰かのお話を聞きたい。いつかあなたのお話も聞かせてください。