ファッション守破離〜講座⑵の捕捉〜

YUKAKU 黒田です。
ここでは以前の『ファッション初心者・迷走者向けの講座⑵』の中で載せた下の図について、もう少し詳しく話したいと思います。

守・破・離について

初心者・迷走者講座では、上の図で言うところの守までしか教えないと言いました。なぜならほとんどの方が、守までで十分だからです。
とまぁ、ほぼ同じことを講座⑵でも言っているのですが、十分てどういうこと?を深掘りしつつ説明していきます。

図では青い矢印で趣味性を表しました。色が濃くなるにつれて趣味性が高いということです。
趣味性が高まった"破"の段階では、それぞれが好きなジャンルと、そのジャンルの中でのかっこよさのモノサシ、型があります。
例えばパンクファッションでは、革ジャン、スキニーなパンツ、引き裂かれたTシャツ、スタッズ、チェーン、安全ピン…など、
ストリート(ここではヒップホップ等のB-BOYファッションとします)では、ツバが真っ直ぐなベースボールキャップ、オーバーサイズのTシャツ・パーカー、新品のように綺麗なスニーカー…などです。(記号と捉えても良い)
このような例な各ジャンルに見られ、いわゆるステレオタイプのようなものですが、個人の好みや趣味・信条が強く出ていると言えます。
ここでポイントとなるのは、それぞれのジャンル間にはグラデーションはあるものの、基本的には互いのモノサシでは測ることができないということです。
古き良き英国紳士のようなクラシックなスタイルを好む人が、B-BOYスタイルをリスペクトすることはあれど、自分までその格好をしたい!と思うことはほとんどありませんよね。(ダイバーシティってこういうことだね!)
もちろん各ジャンル間はグラデーションになっているので、親和性の高いジャンルも存在します。(パンクとグランジ、ストリートとミリタリーみたいなね)
互いのモノサシで測れないということは、つまり響かないということです。

響かない。好みではない。
だからといって嫌いになるわけではありませんが、少なくともファッションにおいてはグッドボタンを押さないということです。
ベジタリアンの方が肉汁溢れるアメリカンステーキをグッド!とは思いませんよね?
趣味性が高い同士でもグッドボタンを押されにくいのですから、ましてや趣味性や熱量に高低差のある⑵・⑶層からはもっと押されにくいです。

ここで皆さんの心に問いたいのは、ファッションにおけるこの趣味性の高さを求めていますか?ということです。
パンクロックが好きだからといって必ずパンクファッションをするわけではありません。ヒップホップ好きが必ずオーバーサイズを着るわけでもありません。もちろん自分の趣味性を示す、自己表現はできますが、そもそもファッションで自己表現をする必要性が皆にあるわけではありません。
(さらに突っ込めば、自己表現の必要性も疑わしい)
趣味性が高くなればなるほど、グッドボタンを押されにくくなる。言い換えれば理解が得られなくなります
つまり趣味性が高くなるほどに、共感も得られにくくなるのです。

当たり前ですが、この世界はファッションだけで回っているのではありません(デカいツラはしてますが)。しかし人間社会での第一印象や見た目の力いうものは想像以上に大きく、左右されるものも少なくありません。
それでも外見の趣味性を高くしたいと思いますか?
清潔感があり好印象、それで十分ではないですか?
これが私が「ほとんどの方が守までで十分」と思う理由です。

とはいえファッションは楽しいものです。服好き、ファッション好きにとっては、たとえリスクが高まろうとも、それ以上に自分の見た目をインスタントに変化させるのが楽しくて気持ち良いのです。
そんな感覚が極まっているのが"離"の段階です。

"離"の段階は、例えるならば創作料理です。
もちろんここでも好みはありますが、あらゆるジャンルの、あらゆる素材やアイテム、テクニックを使って、見たこともない新しいものをその身で体現したいという層です。前衛的なんて言い方もあるように、アートのような試みを日々続けています。

まさしく趣味性の極致
誰に何を言われようと、どんなに怪訝な顔をされたり笑われようと、己で培ってきたセンスを武器に創造を繰り返しています。もしも街中で人に迷惑がかからないのなら、羽根でも角でもつけたいくらいの勢いです。
趣味性も最大リスクも最大。それが離です。

簡単な話、破や離の段階になるのは明日からでもできます。
よしやるぞ!とオリジナリティを最大にするだけですから。
けれど、その姿が美しく在る方は割合かなり少ないなぁと感じてしまうのが私の本音です(ここは肌感で申し訳ありません)。
ではその原因はなんなのか?それは守を怠っていたからなのです。
基本の型や長年をかけて培われてきた”普通”には、万人が感じる美しさが隠れています。
もちろんセンスが鋭く、ハナから優れた創造性を発揮できる方もいるでしょう。しかしほとんどが基本の型や万人に通ずる美しさとはなんぞやと少しずつしっかりとした足場を固めていくからこそ、高いところに手が届くのです。
切り方から煮方、炒め方など料理の基本を学び、それに沿って作るのが守。
だからこそ、私はここで守の大切さを推しています。

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