第6章 マインドセット

ポーカーの心理学的側面はこの本の主要な部分ではありませんので、この章はいくらか手短に終わらせようと思います。ただし、心理学がポーカーにおいて大事ではないという事ではありません。マインドセット(心構え)は、とりわけ今日のゲームにおいて、あなたのウィンレートに重大な影響を及ぼします。近年、PLOプレーヤーの技術的レベルは大いに発展しました。レギュラー達に対抗する時は、技術的な優位よりも、むしろ精神的な安定やマインドセットがしばしば重要視されます。自分のAゲームを可能な限り維持し、B、Cゲームに陥らないのならば、誰でもより多くの利益を出せるでしょう。

私たちは以降のセクションで、「感情」「セッション管理」「キャリア管理」「バンクロール管理」について議論していきます。全てのプレーヤーはこれらのトピックについて深く掘り下げていくべきです。いくつかの要素は、あらゆる場面で有用になるでしょう。よって、これらのトピックについて読み、さらに学んでいく事をおすすめします。

感情

ポーカープレーヤー達は多くの時間を、戦略を学んで結果を改善させようとする事に割いています。こういった、数学的、技術的要素について考慮している時、私たちはしばしばゲームの最も重要な側面を忘れているかもしれません。すなわち、ポーカーは人間がプレイしている、という事です。人間にはたくさんの感情があります。大きなポットを勝ち取った時のスリル、サックアウトする喜び、フィッシュに負ける事への怒り、フロップにヒットしなかったり相手のナッツにばかりぶつかってしまう、と言った時に起こるティルトなどです。

ポーカーを正しくプレイしていく上で「感情」は、単に付随するもの、微妙な影響しか及ぼさないものではありません。私たちは機械ではないのです。ポーカーと感情は、常に連れ合うものである事を受け入れなければなりません。プレイ中にこの事を無視しようとしても、感情の影響は、ダウンスイングの中にいる時ほど顕著になります。クアッズを恐れて、トップセットのフルハウスでレイズできなかった覚えはありませんか?相手がほとんどブラフをしない事を知っているがゆえに、他のプレーヤーであれば必ずスタックオフするべきどころで、出来なかった事はありませんか?

私たちの脳は、バッドビートやネガティブな感情ほどよく覚えていて、コインフリップを勝った事や誰かにフリーロールをしたなどの良い記憶は忘れていく傾向にあります。ドミネートされていたセットでスタックオフしてしまった時のことなどを考えてしまいます。あるいは、60%のエクイティがあるハンドを負けた事なども同様でしょう。あなたはフェイバリットですが、40%は負ける可能性があります。しかし、こういったハンドで負けた時あなたは、サックアウトを食らわされてしまった、と感じてしまうのです。ネガティブな感情は、私たちがAゲームをしていく上で、常に脅威であり続けます。

以上のようなメカニズムがどのように働くかを理解していく事が大事です。感情はとても強力なもので、あなたの思考能力を即座に圧倒してしまいます。記憶に積み重なったバッドビートによる感情は、あなたの決断を乗っ取ってしまうのです。とりわけ、長いダウンスイングが続いたときなどは、ほとんど無自覚にそういった状態に陥ってしまうでしょう。ネガティブな感情はどんどん成長し、どうやってAゲームをしていたかを忘れさせ、ひどいプレイばかりさせてしまいます。そしてついに自制がきかなくなり、合理的な思考ができなくなってしまうのです。言い換えるならば、あなたはティルトをしていると言う事になります。ポーカーをプレイするにあたっては、感情的な問題を理解し、コントロールする事こそが重要なのです。

「何故こんな事ばかり起きるんだ!」「こんな事は現実ではない!」「私はなんて不運なんだ!」こういった感情に陥った時、あなたはティルトしています。そしてあなたは必然的に、Bゲームあるいはもっと悪いゲームをしてしまうでしょう。ティルトには様々な形があります。極端に短い期間に多くのバッドビートを食らう事によって起こる「ランニングバッドティルト」、セカンドナッツでいつも負けてしまい、こんなことは正しくないと思う事によって起こる「インジャスティスティルト」、馬鹿げたミスプレイをした自分に対しての怒りの感情から来る「ミステイクティルト」、自分はベストプレーヤーで、負けるはずなどないと思いこむ「エンタイトルメントティルト」などです。

ティルトを取り除くための鍵は、感情を無視し、次回のセッションで問題が解決される事に期待する事ではありません。ネガティブな感情があなたのゲームにどう影響し、どう解決したら良いかを学ぶ必要があります。まず、ティルトを起こしている自分自身に自覚的になる事からはじめましょう。ティルトしてしまう典型的な状況を解析し、その様な場面が再び起きた時に、自分自身を客観視するのです。ゲームに及ぼす感情の影響を解決するポイントは、「コントロール」です。

あなたの決断に深刻な影響を及ぼす、積み重なった感情は、ポーカーをプレイする上での現実的なリスクになります。しかしそれを無視しようとしたり、直ちに解決しようとしても、それは不可能な事です。状況をコントロールする能力を向上させていく中で、感情による衝撃やその強烈さを徐々に減らしていきましょう。あなたのゲームのクオリティに、感情が深刻な影響を及ぼすと言う事に自覚的であることが、最も大切なのです。ティルトしてしまった時の唯一の解決策は、直ちにプレイする事を止めて、次のセッションのための集中を取り戻す事で、それによってあなたのバンクロールは守られます。しかし、問題を排除したと言う事にはなりません。

よってあなたは、ネガティブな感情やティルトが、バッドビートによって起こるものではないと言う事を知る必要があります。自分が理不尽な仕打ちを被ったと思いこむことによって、ティルトは発生するのです。自分より弱いプレーヤーにポットを奪われたり、あるいは、95%のエクイティがあるハンドで負けた苦い経験などが考えられます。これらの事を、非常に不運で、不当であると思ってしまうかもしれません。しかし結局は統計上の結果であるに過ぎず、100回プレイしていれば5回は起こることなのです。

感情、とりわけティルトをコントロールする上でのよりよい方法として、セッションで起こる全ての事に対して全体的な見方をする、と言う事があげられます。それによって、バッドビートやサックアウトは、ゲームで起こり得るごく普通の事であると受け入れていけるでしょう。「晴れの日もあれば、雨の日もある」、実に自然な事です。セッション中に起こる事に対して正しくアプローチする事が、感情を管理する上で重要なのです。悪い結果を普通の事として受け入れる事によって、あなたの集中と落ち着きは保たれるでしょう。ティルトによって感じてしまう、非現実的な予想から解放されているはずですから。

いくつかのセッションで体験するかもしれない重い感情をバランスさせるための、安定した枠組みを作る事は非常に有益です。これはセッション管理のためにも重要になってくるでしょう。次のセクションで私たちは、より良い感情整理のための、セッション及び時間管理の有用性を議論していきます。

感情をゲームから完全に排除する事はほとんど不可能に近いと言う事を念頭に置いてください。私たちは人間であり、人間には感情があるのです。Aゲームをプレイする能力に影響を及ぼさないように、感情を受け入れてコントロールする事こそが、あなたの最終目標となるべきです。

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