ゲーム理論原則(4)

頻度

(※途中の数式に明らかな誤植もしくは誤りがあったので修正しています)

頻度でプレイするという事はポーカーにおいて非常に重要な役割を果たしています。それがどういうことなのか、どういう場面で役立つのかを理解していきましょう。「頻度」は通常、CBやチェックレイズ、ブラフといったベッティングアクションと関連づけられます。これら全ての頻度は全体的なアグレッションと結び付けられます。アグレッシブなアクション回数(ベット、レイズ)を全てのアクションの回数で割ります。高いアグレッションを持つプレーヤーは低いプレーヤーにくらべてブラフの割合が高くなります。とりわけプリフロップがルースなプレーヤーに当てはまります。一方、アグレッション単体だけで見てしまうとだまされてしまう可能性があります。すなわち、かなりタイトなプレーヤー、ロックと言われるプレーヤー達によってです。彼らもまた高いアグレッションをもっていますが、それがブラフをたくさんしているということにはなりません。彼らはとても強いハンドをプレイしているだけなのです。彼らはあらゆるボードにおいて十分なエクイティをもっているので、高いアグレッションでプレイすることが許されているのです。

ゲーム理論に基づいた今日のゲームにおいて「頻度」が最も重要視されるのは特定のストリートにおけるベット頻度、とりわけリバーにおいてです。これは非常に複雑なトピックで、どの程度のブラフ頻度がもっとも利益的に機能するかという疑問に関して、様々な異なる視点があります。

最もシンプルなケースとして、あなたがショウダウンして勝つ可能性がゼロの場面があげられます。ブラフする他に勝ち目はありません。あなたはどのくらいの頻度でブラフを成功させなければいけないかを考慮しなければいけません。これには、ポットオッズによる、という簡単な解決策がすでにあります。もしあなたが100$のポットに100$打つとしましょう。この場合、あなたのブラフは少なくとも50%成功しなければなりません。ゲーム理論的観点から言えば、ブラフ頻度やベット頻度がブレイクイーブンであるかどうかという事が重要になってきます。

上記のモデルはあくまでも簡略化されたものであって、3つの点を考慮していません。第1に、通常はリバーでエクイティがゼロということはあまりないです。少なくともいくらかのエクイティはあるでしょう。第2に、普通はこれほどシンプルな状況にいるということがありません。例えば、上記の例では相手が決してレイズをしないという仮定に基づいています。第3に、あなたはブラフするレンジだけをもっているわけではありません。バリューベットするレンジもあるでしょう。以上の要素によって状況はかなり変わります。ゲーム理論的観点から見るブラフというものは、バリューレンジとベッティングアクションのバランスによるものだからです。

もしあなたが決してブラフせず、強いハンドの時のみベットしているなら、まともなプレーヤーは、よほど強いハンドを持っていない限りあなたのベットに全て降りるでしょう。あなたがチェックすれば、強いハンドがないと知られているので、ブラフによるベットで毎回ポットをとられてしまうでしょう。したがって、ミックスされた(強いハンドとブラフで構成された)ベッティングレンジをもつことが重要なのです。また、強いハンドやそこそこのハンドでバランスされたチェックレンジももちましょう。それでは、良いベット頻度というものをどのように計算するのか理解していきます。

最適なブラフ比率の真の価値は、エクスプロイットされないということにあります。こちらのベットに対してコールされてもフォールドされても、どちらでも構わないのですから。最適なブラフ比率は、バリューベット頻度とベット額に依存します。完璧なバランスによって相手はこちらをエクスプロイットできなくなり、大きなポットになったときに、相手は見通しのたたないまま大きなリスクを負うことになります。ではこれから最適なベットとブラフの頻度の計算を説明していきます。

以下の略語を覚えておいてください。

♠p:あなたがベストハンドをもっている確率

♠b:ブラフする頻度

♠P:ポットサイズ

♠B:あなたのベットサイズ

♠y:コールする頻度

ゲーム理論的には、相手がいかなるアクションを取っても(この場合コールもしくはフォールド)相手のEVに変わりがない時、最適なブラフ頻度であると言う事ができます。したがって、相手があなたのバリューベットに対したときとブラフに対したとき(相手視点で言えば、それぞれの場合でコールするかフォールドするか)のEVがイコールでなければなりません。あなたのEVは、ショウダウンよって勝つ見込みと、ブラフによる勝ちと負けとを結び付けて計算します。全て合算する前に、それぞれのシチュエーションを分けて計算していきましょう。

1.あなたのハンドが勝っていて、バリューベットを打つ時の期待値

E(w)=y(P+B)+(1-y)P

(※Eは期待値、wはwinningの略と思われます。)

このEV計算は簡単です。最初の部分は相手がコール(y)してくれて勝った場合の期待値で、2番目の部分は相手がフォールド(1-y)した時の期待値です。

2.あなたのハンドが負けている場合の期待値

E(l)=(1-b)(0)+b[(1-y)P-yB]

(※lはlosingの略と思われます。)

この公式はいくらか複雑です。最初の部分はあなたがブラフせず(1-b)、ショウダウンで負けた場合の期待値で、期待値は0になります。2番目の部分は負けているハンドでブラフした場合(b)の期待値です。相手がフォールドしたとき(1-y)はポット(P)を勝ち取り、相手がコールした場合(y)、あなたのベット分(B)を失います。最初の部分は常に0になるので、省略します。

E(l)=b[(1-y)P-yB]

3.あなたがベットして相手がフォールドする場合。

もし相手が絶対にコールしない(y=0)場合、あなたの期待値は単純に、E(l,y=0)=bP,ベットするたびに勝利します。したがって、バリューを最大化する為に常にブラフするべきです。一方、相手が絶対にコールするのならば、絶対にブラフしてはいけません。なぜならあなたのEVは、-bPになるからです。

上記で仮定している式では、相手は常に降りるか常にコール、あなたのハンドは常に勝っているか常に負けているか、になっています。いわゆるゲーム理論的視点で言うところの「ピュアストラテジー」です。これらの仮定は実際のゲームにはほとんど当てはまる場面がありません。相手はそれぞれの確率を適宜変更してきます。いわゆる「ミックスストラテジー」です。

ゲーム理論は、相手にどんな戦略をとられてもかまわない、ブラフとコールの頻度の均衡点があることを教えてくれます。これらの頻度をそれぞれ、b(opt),y(opt)と呼ぶことにします。(※optimal=最適から来ていると思われます。)

もし仮に相手が最適なコール頻度y(opt)でコールしてきたとしても問題ありません。こちらが最適なブラフ頻度b(opt)で対応すればいいのです。相手はコール、フォールドどちらのオプションでも利益を出すことはできません。これが完璧なバランス戦略の強みなのです。

最適なコール頻度は以下の等式で計算します。

[1-y(opt)]P-y(opt)B=0

展開すると、

y(opt)=P/(P+B)

興味深いことに、最適なコール頻度はあなたのブラフ頻度とは無関係であり、ポットオッズにのみ依存しています。これは、最適なコール頻度が相手の戦略如何に関わらず相手のEVが増えも減りもしないからです。最適なコール頻度はただ、ポットのサイズとベットのサイズに依存します。これはまた、最適なコール頻度が常にEVを最大化するというわけではないということも示しています。ただ単に相手のバリューベットとブラフに利益をもたらさないと言うだけの事なのです。

このことは、先に言及したGTO戦略とEXP戦略の間の話とは異なります。もし相手が常にブラフする、あるいは絶対にしないということを知っていれば、かれのプレイに対して正しくアジャストします。しかし、相手がミックスされた最適な戦略を使ってくるなら、以下に示す等式でレスポンスを計算します。相手視点からみたあなたの最適なブラフ頻度b(opt)を算出してみましょう。

E(opt)=-pyB+p(1-y)(0)+(1-p)[by(P+B)+b(1-y)(0)+(1-b)P]

ではこの式を一つ一つ説明していきましょう。最初の部分は、あなたに、勝っているハンドでバリューベットをされてコールした時のEVです。2番目の部分は、フォールドしたときのEVで、当然ゼロになります。残りの部分で、相手のハンドが勝っているシチュエーションを処理します。[]内の最初の部分は、あなたがブラフして相手がコールし、ポットとあなたのベットを勝ちとった時のEVです。2番目の部分は、相手がベストハンドをもっているにも関わらずフォールドした場合でこちらも当然ゼロEVです。最後の部分は、あなたがブラフする事をあきらめてチェックし、ハンドで勝っている相手がそのままポットを勝ち取った場合のEVです。0になる部分を式から排除し、並び変えます。

E(opt)=(1-p)[by(P+B)+(1-b)P]-pyB

相手の最適なコール頻度によるEVはあなたの正しいブラフ頻度に無関係なので、y=0とy=1は同じ値にならなければいけません。このことから最適なブラフ頻度は、

b(opt)=[pB/(1-p)]/(P+B)

ではこの式を実際に応用してみましょう。あなたは50%の確率でベストハンドをもっていてポットサイズのベットをしようとしています。このケースでは、50%の確率でブラフになるわけです。

b=[0.5/(1-0.5)]/(1+1)

b=1/2=50%

b=50%

ベストハンドを持っている確率はそのまま50%で、ベットサイズをハーフに変更して計算してみましょう。この場合の最適なブラフ頻度は、

b=[0.5*0.5/(1-0.5)]/(1+0.5)

b=0.5/1.5=33%

b=33%

もしあなたがハーフベットするのならば、ブラフを控えバリューベットを増やします。なぜなら、相手はよりコールに傾くからです。ご覧の通り、ベットサイズはあなたのブラフ頻度に影響を与えます。ベットサイズが小さくなるほど、ブラフの頻度を少なくします。相手により良いポットオッズを与えてしまうからです。

では違う例を出します。あなたは30%の確率でベストハンドをもっていて、ポットサイズのベットをしようとしています。あなたの最適なブラフ頻度は、

b=[0.3/(1-0.3)]/(1+1)=21.4%

b=21.4%

もしあなたのハンドが30%の確率でベストハンドならば、ポットサイズのブラフを21.4%の頻度でするべきと言う事です。相手はコールしようがフォールドしようが利益を出すことができません。しかし、あなたのブラフ頻度が最適でないのならば、相手は利益を出すことができてしまいます。もしあなたのブラフ頻度が21.4%以下であるならば、相手は常に降りるべきです。逆の場合、相手は常にコールします。あなたが最適なブラフ頻度でない為に、相手はあなたのエクスプロイットしているのです。同様に、相手が最適なコール頻度でないのならば、ブラフ頻度をアジャストしてエクスプロイットしていきます。

これが「最適戦略」の真の意味です。あなたが最適な頻度を保っている限り、相手はあなたをエクスプロイットできなくなり、あなたからEVを獲得するいかなる戦略も探しえません。これらのブラフ、コール頻度の最適戦略はいわゆる、「ナッシュ均衡」と呼ばれるものです。

相手が最適なコール頻度を保っているのか、それともエクスプロイット可能なのかを見極めることは非常に重要です。もし相手が優秀なプレーヤーでバランスの取れた頻度でプレイしているのであれば、こちらは最適なブラフ頻度で対抗するべきです。そうでない場合は、相手の戦略のリークを探し、エクスプロイットしにいくべきです。もし相手がコールしすぎるならば、ブラフを減らしてバリューベットを増やします。相手が降りすぎるのであれば、ブラフを増やしていきます。

要点

♠最適なブラフ頻度を保つ目的は、相手がいかなる手段をもってしても利益を出させないということにあります。

♠最適な方法のブラフはブレイクイーブンになります。(ナッシュ均衡)

♠最適なブラフ頻度はあなたをエクスプロイット不可能にします。

♠ゲーム理論によるブラフ及びコール頻度は、相手もまた最適にプレイしてきたときに最適になりえます。

♠不完全な頻度の相手に対しては、EXP戦略をもってより高いEVを獲得します。



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