ラズ

ルール

ベッティングストラクチャー:リミット、アンティ

ゲームタイプ:スタッドポーカー

進行:ゲームの開始時に全員がアンティを支払います。そして、2枚の伏せられたカードと1枚のオープンされたカードが全員に配られます。その後、オープンされたカードが最も弱いプレーヤーが、「ブリングイン」という小額の強制ベット、もしくは「コンプリート」という1SB(スモールベット)と同額の強制ベットを、どちらか任意で支払います。

次に時計周りで順番にアクションが回ってくるのですが、最初のプレーヤーがブリングインしたのなら、それと同額をコールもしくは1SBのレイズ(もしくはフォールド)ができます。最初のプレーヤーがコンプリートしたのなら、1SBをコールもしくは2SBにレイズという具合です。ベット、レイズ額が固定されていて、4ベットがCAPな点は通常のリミット制と変わりません。

次のラウンドからはブリングインはなく、各ラウンドで1枚ずつカードが配られ、1番強いカードの人がチェック、もしくは1SBのベットを選択してまた時計回りに進行します。ラウンドごとに、最初にアクションする人が変わり得るというのが、スタッドゲームの特徴です。

スタッド系は全部で5ラウンドまであり、3ラウンド目から最後の5ラウンドまでは、倍額の1BB(ビッグベット)固定でゲームが進んでいきます。なお、2~4ラウンドで配られるカードはオープンされて全員見る事が可能で、最後の5ラウンドに配られるカードは伏せられます。

ハンドの強さ:いわゆるローゲームです。A-5ローと呼ばれ、Aが一番強くその次に2、3、4、5と続き、Kが最も弱いカードになります。最大7枚配られるカードの中から5枚を抜き出して役にします。オマハハイローやスタッドハイローと異なり、9~Kがローカードとみなされないと言う事はありません。5枚の中で最も弱いカードが9ならば9ローとなります。ショウダウンまで行った場合、最も低いローハンドを持っているプレーヤーが勝利します。同じローの場合、例えば同じ8ローを持っている者同士であれば、その次に弱いカードを比較します。8732Aと86532であれば7よりも6の方が強いので後者の勝ちになります。3枚目以降も同じ方法で比べていき、5枚全く同じ場合は引き分けです。なお、ストレートとフラッシュの役はこのゲームに存在しません。

雑感

最大7枚の中から5枚を選んで役にすると前述しましたが、その5枚が全て異なるランクでないとかなり弱くなってしまいます。一応ペアローと呼ばれるものも役として認められているのですが、Kローよりも弱いため、ショウダウンで勝つことはまずないでしょう。例えば、最後のストリートまで行って配られたカードがAA22334だったとします。強いランクのカードばかりで一見強そうに見えますが、A、2、3のどれかがペアにならざるを得ないので5枚異なるランクの役にすることができません。当然Kローにも負けてしまいます。よって、最初に配られる3枚の中にペアがあるとローハンドができづらく、3枚全てが同じカードだった場合、論外に弱いハンドとなってしまいます。スターティングハンドで最も強いのがA23、最も弱いのがKKKとなります。

よって、スターティングハンドを評価する際は、ランクの強さよりもまず3枚全てが異なるカードかどうか(ペアがないかどうか)を見ます。つまり、AA2と873を比較した場合、後者の方が良いハンドとなります。これは少し考えれば分かる話しで、残り4回のドローチャンスで前者は有効なカードを3枚引かなければならず、後者は2枚引ければ良いわけです。この差はかなり大きく、ペアハンドは4回中2回ミスすると(良いカードが引けないと)アウトになってしまいます。まずは、ペアハンドが弱いという事をしっかりと認識してください。AA2などを強いハンドのつもりでプレイしている人を見かけたらターゲットにしましょう。ただし、こういったハンドの使いどころがないわけではないので、一概にペアハンドで参加しているからフィッシュだと決めつけるのは早計です。この辺りは後述します。

大雑把な話しですが、ショウダウンまで行った際の決着ハンドは8ロー、9ローあたりになることが多いです。ナッツ(A2345)はスターティングハンドにもよりますがかなり出来にくく、6ローも珍しい部類に入ります。その分、ほとんどの場面でバリューハンドになるでしょう。反面、Tロー以下のハンドはショウダウンまで行った場合(特にマルチウェイになった場合)は負けている事が多く、弱いハンドであると言えるでしょう。しかし、相手が見せているカード(ドアカードと呼びます)にJ、Q、Kが多くあれば、勝っているという判断もできそうなので、その辺りは相対的なものと思ってください。あくまで、最初からTローやそれ以下のハンドを作りにいくのがあまり良くないという話しです。イメージ的には、ヘッズに持ち込めれば8ローでも行けそう、マルチウェイでは7ロー以上のハンドが欲しいなという感じです。自分の後にアクションを残しているプレーヤーが多い状況で873とかをもらうと(プレーヤーのドアカードにもよりますが)あまりプレイはしたくないですね。アーリーポジションほど参加ハンドを絞るのは、全てのポーカーの基本になります。

3rd street

それでは、最初のラウンド(3rd streetと呼びます)の理屈についてぼちぼち説明していきましょう。このラウンドでは、プレーヤー全てが1枚カードを見せています。これはとても貴重な情報ですので、プレーヤーがフォールドしてカードが見れなくなる前に、ざっとで良いので全員のドアカードを確認する習慣をつけましょう。見せているカードはたった1枚ですが、ラズにおいてはその見せているカード1枚が非常に重要なのです。スタッドハイ(通常のポーカーと同じ役の強さのゲーム)と比較してみましょう。このゲームの場合、例えばXX2と見せていても、XXの部分がAAだったりKKだったら強いハンドと言えます。いささか乱暴に言ってしまうと、2枚強いカードがあれば勝負になるのがスタッドハイなのです。しかしラズは、良いカードが5枚必要です。4枚がいくら強くても、5枚目が弱かったら台無しになってしまいます。よって、ドアカードが役に組み込まれる確率が高いという話しになります。例えば、XXJと見せているプレーヤーがいたとしましょう。このプレーヤーのハンドは一番強くてもA2Jとなり、Jロー以上に強いローハンドを作ろうと思ったら、4回のドローチャンスで3~Tを3枚引かなければいけません。4回中3回都合の良いカードを引くってかなりのギャンブルだと思いませんか?つまり、このプレーヤーが参加した場合、そこそこの確率でJローもしくはそれより弱いハンドになるだろうと判断できるわけです。1枚見せているカードが重要と言った意味がお分かりいただけたでしょうか。よって、XXJなどで参加してくるプレーヤーはほぼ間違いなくその辺りの理屈を分かっていないプレーヤーという事になります。A2Jなどを持っていて、Aと2が強いから参加できる!くらいに思っているのかも知れません。こういったプレーヤーは格好のターゲットになります。

以上の理屈が分かっていれば、スチールに行けるタイミングというものも見えてきます。一例をあげましょう。自分までフォールドで回ってきて、ハンドが(KQ)3だったとします(3がドアカード)。1枚でも弱いカードがあると良くないラズにおいて、KQ3という2枚悪いカードがあるこのハンドは通常何も考える余地なく捨てるハンドです。しかし、残っているプレーヤーのドアカードがJやQと言った弱いカードばかりだとしたらどうでしょう。前述した通り、こういったプレーヤーのハンドは良いものになりにくいです。加えてこちらは3という強いカードを見せています。であれば、こちらがレイズ(コンプリート)して降ろせる確率は充分にありそうです。全員分のアンティ+ブリングインをスチールしに行く価値がある場面と言えるでしょう。ポットオッズ的にも高い成功率は要求されていませんので、積極的にポットを取りにいきましょう。仮に、XXJというプレーヤーがこちらのスチールを疑いコールしてきたとしても、次のストリートで悪いカードを引いてしまえば、流石にこちらのベットに対して降りざるをえなくなってしまいます。相手が良いカードを引いても、こちらも良いカードを引いていれば、強気のベットが可能になります。見せているカードはこちらの方が強いからです。また、残っているプレーヤーの中にAや2といった強いドアカードを見せている人が1人くらいいたとしても、そのプレーヤーが今までタイトにプレイしてきているなら、スチールできるかもしれません。相手は(JT)2のような弱いハンドを持っているかもしれないのですから。

参考までにスターティングハンドの引ける確率を記述します。

3枚が9以下:約24%

3枚が8以下:約16%

3枚が7以下:約10%

7以下に絞ってしまうと、タイト過ぎてアンティ負けしてしまうと思います。基本的にタイトにプレイするのが正しいゲームですが、残り人数やその場のシチュエーションに合わせて適宜調整していきましょう。

目安として、最も強いハンドであるA23と様々なハンドの、3rd street時点でのエクイティ差を掲載します。

相手が最強のA23だったとしても、こちらのハンドがある程度まともであれば勝負になるということが何となく分かってもらえると思います。次のラウンドで引けるカード次第で逆転が普通に起こりえるので、ペアがなくてどれも悪くないカードであれば充分参加が可能です。では、次の図を見て下さい。

ご覧の通り、ペアがあったり悪いカードが1枚でもあったりすると途端にエクイティの差が出てしまいます。3QKなんて10回に1回しか勝てません。最弱のKKKなどは最早ネタですねw どんなに良くてもKローより良くはなりませんので、A23がペアローにでもならない限り勝てない事からこのような絶望的エクイティ差になるのです。

こちらのURL http://www.propokertools.com/simulations 、ラズのエクイティも調べられますので、色々なハンドを入力してみて下さい。

同じスターティングハンドでも、扱いが違ってくるという場面も存在します。例えばA48というハンドがあったとしましょう。しかし、この3枚のうちどれがドアカードかによって方針が違ってきます。もし(A4)8という形の場合、相手にそれほどのプレッシャーを与えることはできないでしょう。暫定的にこちらが8ローであることは相手にも知られていますし、最終的に8ローより強くなる確率もそれほど高くありません。逆に(48)Aという形であれば、こちらが主導権を握りやすくなります。当たり前の話ですが、Aという一番強いカードが見えていて、マージナルな8というカードは自分にしか見えていないのですから。

スターティングハンドについてもう一つ考慮しなければいけないのが、カードの生き死にです。スタッドゲームは当然相手の見せているカードは使えませんから、これをカードが死んでいると表現します。例えば、自分がA46というハンドを持っていたとしましょう。この場合、欲しいカードは2、3、5あたりですね。この辺のカードが多数死んでいると、自分のハンドが進展する確率がより低くなります。逆に、A、4、6が死んでいたらどうでしょう。ラズは、ペアになる事をできるだけ避けたいゲームです。ペアになるとはつまり、ハンドが進展しないという事だからです。よって、自分の持っているハンドと同じランクのカードが死んでいるということは、それだけ自分のハンドがペアになりにくいという事になります。つまり、A、4、6が多く死んでいるというのは良い知らせなのです。引きたいカードと引きたくないカードを認識して、それらがどのように死んでいるかを確認しながらプレイしていきましょう。

参考として、カードの生き死にがエクイティにどれだけ影響をあたえるかの画像を掲載します。(画像提供:まうさん)

A23と678を比較しています。一番上を見て分かる通り、基本的にA23の方が良いエクイティを持っています。そして前述したとおり、自分のハンドと同じランクが死んでいる場合ペアになりづらい(=ハンドが進展しやすい)ので、エクイティ差はさらに広がります。しかし、678にとって都合の良い死にかたになった場合はどうでしょう。なんと、エクイティは互角となってしまいました。カードの生き死にの影響が良く分かっていただけると思います。

前からレイズが入っていて、それに対してコールするかリレイズするかの判断ですが、自分のハンド3枚全てがオリジナルレイザー(OR)のドアカードより強く、かつ自分に必要なカードが十分生きていれば確実にリレイズします(ORがXX7で自分が653、A24がほとんど見えていない時など)。自分に必要なカードが3枚以上死んでいる場合相手の方がエクイティが高いという事態が良く起こりますので。ORのドアカードがA~5であったとしても、6ローあたりは充分勝負になるのでリレイズしてみてもいいかも知れません。相手のクローズカードに7や8が含まれている可能性もありますので。7ローや8ローあたりは、自分のドアカードが何かにもよりますが、コールに留めておくのが良いでしょう。不利なエクイティでポットを大きくしてしまうと、ポットオッズでずるずるとコールしてしまい、多くのチップを投げ出してしまうということにもなりかねません。また、相手のルース具合にもよりますが、スチールに行けるような場面で毎回レイズしてくるような相手に対しては、相応に強いドアカードでもってリレイズ(スチールに対するディフェンス)してみても良いでしょう。スチールの頻度が高いということは、それだけ相手の実際のハンドが弱い事も多いので、相当弱いハンドであればその場で降ろせてしまう事さえあります。

ここまでを踏まえて、3rd streetの大体の方針をまとめてみましょう。

・ブリングインをしなければいけない時は、レイズに対してほぼフォールドして良い。自分のドアカードが一番弱いという事なので。

・残っているプレーヤーが多く、彼らが見せているドアカードが強ければ無理をしない。相当に強いハンドで参加する。

・残っているプレーヤーが少ない、彼らのドアカードがおおむね弱い、自分のドアカードが強いという条件が揃っていれば、実際のハンドが弱くてもスチールを仕掛けていく。

・オープンする時、前からのレイズに対処する時は、自分のハンドにとって都合の良いカードと悪いカードがどういう死にかたをしているか、自分のドアカードが何か、相手のプレイ傾向などを考慮して、ハンドを相対的に評価する。

4th street

3rd streetでレイズが入って誰かしらがコールする、もしくはリンプがあって2人以上のプレーヤーが残った場合、第2ラウンド(4th street)が始まります。ここから最後のラウンドまで、最初にアクションを起こすのは見えているカードが1番強いプレーヤーです。XXA8とXX47という2人のプレーヤーが残った場合、後者が暫定7ローなので、最初にアクションしなければなりません。この事から、主導権は最初にアクションするプレーヤーにある事が多くなる、と言えます(マルチウェイではこの限りではなかったりするのですが)。XX58とXX2Jという2人が居た場合、後者がベットに対してレイズもしくはチェックに対してベットするという行為はかなり不自然なものになります。見えているカードが弱いからです。最大7枚中5枚は使わなければいけないラズにおいて、見えているカードの強さはゲームに重大な影響を与えます。この2人のヘッズアップになったとしたら、ほぼ間違いなく前者がベットして、後者がコールもしくはフォールドするという展開になります。割とお約束展開になりがちなゲームだなという印象を持っています。前者にしてみれば、相手は強いハンドに進展せず、こちらはそこそこのカードを引けました。よって、ベットをしない理由がないのです。逆に、後者がベットに対してレイズはほぼあり得ません。見せているカードが相手より弱いのですから。この事から、主導権がラウンドごとに移り変わりやすくなると言えるのがラズの特徴でしょう。3rdでオリジナルレイザーだったとしても、悪いカードを引いてしまえば立場は変わってしまいます。

それではまず、4th streetで自分が良いカード(good card)を引ける確率はどのくらいあるでしょうか。

A~7はおおむねgood cardに分類され、T~Kはおおむねbad cardに分類されます。8,9は相手次第でどちらにも成りえると言ったところでしょうか。ただし、good cardが良いものになるとも限りません。A23というプレーヤーにとって、ペアになるA,2,3はgoodではないのです。そうするとgood cardは4~7ということになります。そして、それらが3rd streetで何枚死んでいたかを記憶していれば、good cardを引ける確率が求められます。スタッド系ゲームで一般的な8人テーブルの場合、自分視点で計10枚のカードを確認できます(自分のカード3枚+7人の対戦相手のドアカード7枚)。つまり、他のプレーヤーのクローズカードを含め、42枚のカードが残っているわけです。例えば、4~7を引きたいカードとした場合、16/42がgood cardを引ける確率となります。ただし、それらのカードが死んでいる場合はその枚数だけ引く勘定になります。死んでいるgood cardの枚数をXとすると、(16-X)/42という式になりますね。大体2枚くらい死んでいる場合が多いので、14/42=0.333となります。3回に1回は引けます。8,9を許容するのであれば確率は少しあがります。3枚死んでいると仮定すると、21/42=0.5で、2回に1回は引けますね。このあたりの確率を大雑把でいいので頭の中に入れておきましょう。

では、4th streetがヘッズアップになったとして、どのような展開になるかを考察していきましょう。前提として、自分及び相手はある程度まともなプレーヤーであり、ペアのないそこそこのハンドを持って、良いドアカードを見せているものとします。

4th streetで自分と相手がどういうカードの引き方をするか、大雑把に分類すると以下のようになります。

① 自分:good card 相手:good card

② 自分:good card 相手:bad card

③ 自分:bad card 相手:good card

④ 自分:bad card  相手:bad card

実際には8や9がどちらともつかないカードになるのでパターンはもっと複雑になるのでしょうが、便宜上この4パターンを見ていきます。

①の場合:状況にあまり変わりはありません。より強いカードを見せている方が大抵ベットして、相手はそれにコールするというのが普通の流れでしょう。もし先に打てる方(強い方)がベットしてこなかったとしたら、相手の強いカードがペアになってしまったと考えるのが妥当です。(A4)64といった具合に。スロープレイの可能性はほぼ無視して良いです。リミットゲームでのスロープレイはただ単にバリューを取り逃す事の方が多いですから。よって、相手のチェックに対してはベットしていきましょう。もし自分が4thでペアになってしまったら…難しい状況ですが、引きたいgood cardが多めに死んでいたとしたらフォールドしてしまっても良いと思います。ただ、フォールドしすぎるプレイヤーは相手にとって御しやすいので、その辺りはバランスを取っていかないといけなくなります。相手もペアになっているかもしれませんので、4thではコールし、5th(次のラウンド)で再評価するというプレイも必要になってきます。

②の場合:あなたにとって一番良い状況です。確実にベットしましょう。スロープレイはしません。単にバリューの取り逃しになるだけでなく、チェックアラウンドして5thで互角に戻ってしまうかもしれないからです。この状況であなたがチェックしても、相手がベットしてくる事はほぼないので、チェックレイズも考えなくて良いです。

③の場合:あなたにとって一番悪い状況です。相手はほぼ間違いなくベットしてくるでしょう。当然、それに対してレイズは絶対にしません。こちらの見せているカードの方が弱いのですから。よって、コールかフォールドかという話しになってくるのですが、これにはポットサイズが関係してきます。ポットが大きいほどポットオッズが良くなるのでコールの正当性があがります。ポットが小さければ、フォールドの方が正しくなってくるでしょう。その際も何のカードが死んでいるかを考慮に入れます。引きたいカードが多く死んでいるほどフォールド寄りになるでしょう。というのも、この状況になった時点で、5thで逆転する事がないのです。仮に5thで②のような引き方をしても、互角に戻るだけですから。5thで①、④でも負けたまま、③は更に状況が悪くなります。よって、②の可能性に賭けてコールするためには相応のポットオッズが必要になるのです。もしあなたが3rdでかなり強いハンドを持っていたとしたら、リレイズによってポットを大きくし、こういった場面になってもコールできるほどのポットをあらかじめ作っておくべきでしょう。

④の場合:状況に変わりはありません。どちらも打ちづらいですが、まだマシなハンドを持っている方が打ってくる事もあります。しかし、どちらもハンドが進展したとは言い難いので、打たれた方としてもあまりフォールドはしたくないでしょう。5thで自分の方が良くなる可能性もあるのですから。

4th以降のストリートでも、カードの生き死には重要なファクターになってきます。これは自分のハンドもそうですが、相手のドアカードが死んでいるか生きているかも考慮します。例えば、XX68と見せているプレーヤーがいたとして、6や8が多く死んでいればそれだけ相手がペアになっている確率が低い(=相手のハンドが良いものになっている可能性が高い)と言うことになります。ゲームをしながらそこまで考えるのは大変かと思いますが、ハンド履歴を見返して、場面ごとに自分のエクイティがどのくらいあったのかを大雑把に計算してみると良いと思います。

4th street まとめ

・引けたカードによって主導権は移り変わるものなので、3rdで自分がオリジナルレイザーであったとしてもそこに固執しない。

・基本的にこちらが相手より強いカードを引けた場合はベットしていく。スロープレイやチェックレイズはあまり考えなくて良い。

・自分が悪いカードを引いてしまった場合は基本的にベットされてしまうものと考える。その際コールするかフォールドするかはポットオッズやカードの生き死にによって決定する。

・カードの生き死には自分、相手双方を考慮する。相手のドアカードが多く死んでいれば、こちらのカードが勝っていても有利ではない場面もある。

5th street以降

5th street以降はBB(ビッグベット)と言って、ベット額が倍になります。これによってポットオッズも変化しますので、その事をまず考慮に入れて下さい。しかし基本的には4th streetでの考え方を5th以降も引き継いでいきます。ストリートが進むほど、見えているカードも増えて、相手との優位差も大きくなり得ます。ベット額も増えますので、大きく不利になってしまった場合はフォールドもそれだけ多くする事になるでしょう。例えば、自分が247TJ、相手がXX386となってしまったら、ベットにフォールドせざるを得ません。6thでこちらが良いカードを引いて、相手が悪いカードを引いたとしてやっと互角かもしれない(相手がペアになっていれば)という状況なので、コールはできないでしょう。相手がハンドを完成させている可能性もあるので、その場合こちらは都合のよいカードを2回とも引かなければいけないわけです。

こちら367J4、相手XX258などはどうでしょうか。こちらは4thこそ悪いカードを引いていますが、5thでどうにか良いカードを引けました。相手は8ロー完成もしくは8ロードローと考えると、残り2回のドローで十分まくり目はありそうです(A、2、5を6thか7thで引ければ良い)。ただしこう言ったケースでもA、2、5がどれだけ死んでいるかを考慮してください。すでに相手に2と5は潰されているので残りは10枚です(他に死んでいなければ)。4thからヘッズアップになり5thまで来た場合、不明なカードは38枚です。10枚のカードを2回のどちらかで引く確率…詳しい計算は省きますが、約47%になります。であれば、5thでベットされたとしてもコールする価値はあるでしょう。

こちら327J8、相手XX278はどうでしょうか。この場合、こちらが良いカードを引けたとしても、相手がペアでない限り同じ87ローという事になります。相手とかぶっているカードが多いので、相手がペアになっている可能性がその分低くなっているというのもこちらにとってマイナスでしょう。こちらが1枚ビハインドで、良いカードを引いてもやっと互角という状況です。こういったケースでは早めに見切りをつけてフォールドという選択が正しいように思えます。相手との距離差を測って、1枚よりビハインドであれば、難しい決断を迫られ続けるよりもフォールドしてしまった方がよいでしょう。とにかくどういったケースであっても、相手との距離感、まくり目のあるカードの枚数、カードの生き死に等は常に意識し続けて、正しいと思える判断を下してください。この辺りはラズでも難しい部分になりますので、実戦とその振り返りで精度を上げていって下さいとしか言えません。

6th streetまで行くと、見えているカードが4枚になります。これによって、相手のハンドがどの程度進展したかをある程度見積もり自分のハンドと比較します。相手のドアカード4枚全てが良いものであったら、ほとんどの場合ハンドは完成している事の方が多いでしょう。XXA367と見せているプレーヤーがいたとしたら、ツーペアになっていない限りハンドは強くなっているはずです。この場合、自分が76ロー以上に強いハンドを持っていないと対抗しづらいでしょう。相手のドアカード3枚が良いものであった場合はどうでしょうか。例えば、XX23J6などです。この場合は、XXの部分に2,3,6が含まれているとハンドは完成していないです。しかし、すでに完成している可能性もあるので、相手のハンドを低く見積もりすぎる事もできません。相手のドアカードがペアになっている等で、良いカードが2枚の場合もあります(ex.XX337Q)。この場合、相手のハンドは良くてもまだQローです。こちらのドアカードが良いものであれば、ベットできる状況でしょう。相手としてもコールすることが難しいドアカードになっています。なおラズ特有の話しですが、相手に絶対勝っている事が分かる場面というものが存在します。例えば、相手のドアカードがXX388Jとなっていたらどうでしょうか。ラズは7枚のカードから5枚を必ず使わなければいけません。このケースだと、8を使わずにハンドを完成させる事が不可能なのです。よって、自分が7ローをすでに完成させていたとしたら負けている事はありません。考え方としては、ハンドの強さはどんなに強くてもドアカードで2番目に良いカードまでという事です。2番目に強いカードが9だったとしたらそのプレーヤーが9ローより強いハンドを持っている可能性はありません。逆に自分がそうなってしまった場合は、ブラフが絶対に通りませんのでほぼ間違いなくベットはできないでしょう。

6thでドローミスをしてしまった場合、残りのドローは1回だけですので、よりシビアな決断が求められます。ポットが十分大きくなっていて、相手との距離も1枚以内なのであれば、オッズコールも可能でしょう。ただし、再三言っている事ですが、引きたいカードが死んでいるかどうかはゲームの間中ずっと気にかけてください。あまり多く死んでいると、引き目が20%を下回ってしまう事もあり、コールができない状況も増えてきます。

負けている(であろう)場合の話しばかりしてきましたが、こちらのドアカードが相手に勝っているようであれば積極的にベットしていくべきです。クローズカードに1枚くらい不都合なカードがあったとしても、ドアカードが勝っているのであれば、相手にプレッシャーをかけていけます。ドアカードに著しい差があれば、相手もフォールドせざるを得ないということは多々あります。自分のハンドに正直になりすぎて、ドアカードは良いけど実際はまだ完成していないからベットできないという気持ちもあるかもしれませんが、それよりも相手にフリーカードを与えてしまうことの方が問題になる事が多いです。こちらのドアカードの方が良い場合は、もっと自信を持って打っていきましょう。

7th streetまで至った場合、お互いもうドローはできません。実際に勝っているか負けているかのどちらかです。なお、最後のカードは伏せられて配られます。

7thに至るまでの互いのアクション、ドアカード、デッドカードを考慮して、正しい判断を下すstreetです。全てのポーカーの基本になりますが、こちらが勝っていそうで相手がコールしてくれそうなのであればバリューベットを打ちます。前述したように、確実に勝っていると分かっている場面もあるので、その場合の判断は容易でしょう。

相手に先にベットされた場合の判断は難しいですが、ポットが十分大きくなっていて(オッズが十分良くなっていて)、こちらも8ロー程度の相応なハンドを持っていたならば、オッズコールという選択肢もあります。ただ、相手のドアカードがXX3468Xといった場合、これを8ローと見積もるのは少し甘い気がします。特にこちらがそこそこのドアカードを見せている場合などは、相手が6ローといった相当に強いハンドでバリューベットをしている可能性が十分にあります。ただし、相手がドローをミスして、フォールドさせるしか勝ち目がないという状況にあることも多々あるので、そのあたりは相手のこれまでの傾向やドアカードを考慮して適切なアクションを取ってください。ただ、降ろすためだけのブラフレイズはよほど条件が良くないかぎり控えたほうが良いでしょう。相手にオッズコールされて無駄な損失を出してしまう事の方が多いでしょうから。

こちらが先にベットできるけれども、チェックコールをした方が良い場面もあります。こちらが346789Q 相手がXX5J6KXだとしたらどうでしょうか。ドアカードはこちらが勝っているため、4thから6thまではベットします。相手にドローのチャンスがあるうちは、そのドローに値をつけるべきですから。しかし、7thに至って、もうドローはありません。こちらは87ローになりました。そして相手もこちらのハンドをそのあたりに見積もっているでしょう。こういった場合、相手がこちらより弱ければフォールドされてしまいますし、こちらより強ければコールもしくはレイズされてしまいます。ポーカーの基本に「勝っている時は降りられて、負けている時はコールされるのならベットするな」という言葉があります。このようなケースではチェックコールに留めて、相手のブラフに期待し、もし負けていても被害を小さくするというようにした方が良いでしょう。無論、相手の傾向も考慮しますが(弱いハンドでもフォールドできないプレーヤーに対してはマージナルなハンドもバリューハンドになりえる、ブラフの多いプレーヤーに対してはベットよりもチェックコールのほうが期待値が高くなる、等)。

まとめ

この文章は主に、「ラズを始めたいけど指針となるものがない」という方や「ラズをいくらかやってみたけど要領がよく分からなかった」という方などを対象に書いてみました。最後に、要点をいくつか抜粋して終わろうと思います。

・スターティングハンドの基準は基本的にはタイトに。弱いハンドは後のストリートで難しい判断を迫られる事が多い。

・3rd streetではスチールおよびスチールに対するディフェンスを意識する。相手の傾向がタイトであるほどスチールの頻度を増やし、相手のスチール頻度が高ければディフェンスの頻度を増やしていく。

・自分と相手双方にとって都合の良いデッドカード、都合の悪いデッドカードというものがありそれを常に意識しつづける。デッドカードによって双方のハンドの強さは相対的なものとなる。

・相手との距離差をより正確に測れるようになっていく。難しい部分なので、実戦を多くプレイして徐々に精度をあげていけるようにする。

・ドアカードが強ければ積極的に、ドアカードが弱ければ慎重にプレイする。

ざっとまとめてみました。この記事についてのご意見、感想、質問等は気軽にコメントにておよせください。以上です。

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