最初の取材地、オスマニエに到着しました
(4/5〜5/30まで、トルコ南部で避難生活を送るシリア難民を取材します。こちらはその現地レポートです。) レポートNo:210407
4月7日、日本から飛行機を乗り継ぎ、トルコ中南部の都市アダナに降り立ちました。二人の子供を連れての長い移動でクタクタでしたが、そこからさらに車で1時間半ほど東へ走り、最初の取材地オスマニエに向かいました。
新型コロナの流行下を、どのようにシリア難民が暮らしているのか。それが今回の取材のテーマです。もともと困窮状態にあった難民の暮らしは、コロナの流行でますます厳しいものになっています。
雪を抱いた山々が見えてきたら、オスマニエはもうすぐ。この街はかつてのシルクロード上にあり、様々な民族が行き交った土地。現在は落花生や高原野菜の産地として知られる農業都市で、トルコ南部でも物価が安いことから、多くのシリア難民が集まっています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/オスマニエ
(山々の麓にひらける街、オスマニエ。)
実はこの街には、2016年以降、シリアから逃れて難民となった夫(シリア人)の家族も暮らしています。もともとシリアでラクダの放牧を生業にしていた彼らは、トルコでも放牧業が続けられる土地を探し、行き着いたのがこの街だったそうです。
家族と会うのは約一年ぶり。オスマニエに到着した私たちをもてなすため、夫の家族がシリア料理ワラカ・エイナブを昼食に作ってもてなしてくれました。シリア人にとって昼食は一日の最も豪華な食事で、大体15〜16時に家族みんなで食べます。ワラカ・エイナブは、肉やスパイスを混ぜたご飯をぶどうの葉で包み、レモン汁をたっぷり絞ったスープで煮た料理。ひとつひとつ手作業でご飯を包み続けるという、とにかく手がこんだ料理なのです!
ぶどうの葉の他に、キャベツで包んだものも。訳あって最近まで、東京の我が家で、シリア人〝マーマ・ムハンマド〟と一緒に「ストイックなシリア料理」を作り続けた私にとり、もう、これを見ただけで、なんとも申し訳ないような気持ちとなるのです。いかに時間をかけてこの料理が作られたかが想像できます・・・!(詳しくは、最近のfacebookを参照ください)
家族はワラカ・エイナブのほか、マクシまで作っていました。マクシは、ズッキーニやナスの中身をくり抜き、そこにスパイスやひき肉を混ぜたご飯を詰め、トマトスープで煮込んだ料理です。昨日のうちから女性四人で作ってくれたとのこと。本当にありがたいことです。
ワラカ・エイナブと共に煮込んだ羊の骨。肉はあまりついておらず、骨の周辺のコリコリした軟骨部分を食します。骨も叩き割って、中のドロドロした液体を食します。元々砂漠の遊牧民にルーツを持つ、この一家らしい食文化です。
大量の食事が部屋に運ばれてきました!お腹はペコペコ!いただきます!といきたいところですが、私はまだお預けです。
今日は夫の友人も同席しているため、イスラムの宗教観から男女の席を分け、まず男性だけ先に食べます(家族以外の男性が混じっている場合。家族のみの時は皆で食べる)。その間、私は女性たちと台所に座り、男性たちが食べ終わるのを首を長くして待ちます。そして男たちが食べ尽くした残りを皿に綺麗に盛り直して、女性がいただくのです。これは家族以外の異性との接触を極力避けることで、家族の和を保とうとするイスラム文化からきたものです。
夫と結婚する以前、私は「外国人」として男性たちと同じ場で食事を食べていましたが、結婚後は、家族の文化に倣う形で、女性たちと一緒にとなりました。家族の一員として認めてもらっている証拠ですが、空腹時はウズウズします!涙
私の子供たち(4歳のサーメルと2歳のサラーム)は男性の席に混じり、男たちに食べさせてもらいます。
家族が住む貸家のベランダからの眺め。ちょうど太陽が沈む時間で、屋上やベランダで涼んでいる家族がたくさん見えました。夏の暑い時期は、屋上やベランダで寝ることもあるそうです。
一家の9歳のハニーニちゃんが書いて見せてくれた日本語。日本からいとこが来るからと(私の子供たち)インターネットで調べて書いたそう。嬉しいですね。
ガキ大将エブラヒム(11歳)と私の息子サラーム(2歳)。エブラヒムは夫の兄の長男で、2009年生まれ。私はそのときパルミラで、生まれたばかりの彼の写真を撮りました。そのエブラヒムが今はこんなに大きくなり、今は私の子供をあやしてくれています。時を重ねる素晴らしさです。
ところでトルコでは、コロナ対策のため、法的に移動制限が決められ、厳しく取り締まられています。
オスマニエでは、マスクをしないで外出している者は、罰金900トルコリラ(!)。なんと、日本円で約13000円に相当します。
さらに、土日の外出は禁止! 見つかれば罰金3200トルコリラ(!)。平日も、21時から朝5時までの外出が禁止で、こちらも見つかれば罰金3200トルコリラとのこと!
3200トルコリラといえば、日本円の45000円。これはこの街の平均月収に相当します。現地住民にとって、大変な額の罰金なのです。なんとしてでもコロナの感染を抑えるという、強い意志を感じますが、それにしてもすごい罰金の額です。私もマスクをつけ忘れないよう、取材を始めていきます。