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妖気ただ音もなく

名古屋市美術館新収蔵品。

全くもって鷲掴みされました甲斐庄楠音(かいのしょうただおと) 誰?いやこの感じ見覚えが…ある…ぼっけえ、きょうてえ…‼︎‼︎‼︎ そうだ!めちゃ怖 面白かった岩井志麻子の小説だ。いかん、ゾクゾクする。日本画2点、鉛筆画1点、掛け軸ニ幅、合わせて5点の前を行ったり来たりする私。     

ポスターになっている『女の顔』や妙な鉛筆画の『椅子に倚る女』もいいけれど、一番グッときたのは『手鏡を持つ女』何このぼんやりと艶かしい気配は。まるで息をしているかのようだ。そして華奢な掛け軸の『美人図』と『悪夢』この二幅に描かれているのはそれぞれ女と骸骨。なんと同じポーズである。これは楠音の謀か…すでに恐ろしいストーリーが展開されているような。

角川文庫 岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてい』

一旦落ちつこうとぐるりと室内回ったら、、、もう一点。描いても描いてもきりがない、やめるときが分からないと仰る御歳101歳、野見山暁治(こちらも碧南藤井達吉現代美術館の展覧会で♡♡♡となった作家)の油彩『ふり返るな』もあって、なんとまぁ良いじゃありませんか新収蔵品。どうした皆の衆、なぜ見にこない。しかし、とにかくですね今日は大正デカダン甲斐荘楠音。かいのしょうただおと。カイノショウタダオト‼︎    

甲斐荘楠音の描く妖気に当てられボーっとした顔のままもう一つの常設展示に入りました。ら、、なんと高校時代の美人な同級生(市美でお仕事してるのです)が監視員でいて「変わらないわね」「そちらもね」「先生はお元気でいらっしゃるかな」「私たちとそんなに歳は離れていなかったのよね」と女の園で過ごした日々も思い浮かぶ始末。懐かしさというより、女は女を呼ぶのよね。生理は伝染しちゃうのよ。というアレ的な感情の中、閉館のアナウンスが響く。  

メインの企画展『布の庭にあそぶ』で庄司達さんの美しく柔らかな白い布の図形で静かに整ったはずの心が、ただ音もなく妖しく染まった一日となったのでした。


後日、甲斐荘楠音は風俗考証家でもあると知り、これまた大好きな映画 溝口健二「雨月物語」の衣装考証をしていたことも分かり、これは持ってかれるはずだわと深ぁく納得した次第です。 

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