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【マニア向け】管楽器にエフェクター

たまに自分的に話題になるのでここらでまとめを。

昔からいろんなプレイヤーがやっているのですが、
定期的にブームがやってくるようで、今またブームです。

講習会みたいなことをやってほしいと話もあったのですが、
こんな時期なのでnoteに書いてみます。

ライブハウスなどで管楽器を演奏する場合、ほぼ100%マイクを使います。
レストランバーなどのBGMのお仕事の時は生音のときもありますが。

管楽器から出る空気振動を一旦電気信号に変換してスピーカーからまた空気振動となり、お客様の耳に届くわけです。
奏者がどこまで自分の出音に責任を持つかということですが、
ほとんどの場合、マイク以降はPAさんにお任せです。
先日noteに書いたクリップマイクを持ち込む人も増えましたが、
そこから先はPAの領域です。
マイクを持ち込むことすら嫌うPAさんもいらっしゃいますので
事前の打ち合わせをしっかりとやります。
「しっかりとした音出せば後はこっちで最高にしてやんよ!」
と言っていただけることが多いですが、
クリップマイクだけならいざ知らずエフェクターを持ち込むということは、
音色を切り替えるとレベルが変わってしまうのでPA側ではどうにもできないことが発生します。電気レベル的に同じ出力に合わせていても、周波数特性や聴感上の問題でハウリングを起こす場合があるのでリハーサルでは「こんな音を使います」ということをしっかりと伝え、トラブルが無いようにしましょう。

まずエフェクターとはなんぞやという話なのですが、
一番馴染みがあるのはカラオケで歌うマイクにかかっている
いわゆる「エコー」

これはリバーブとディレイの組み合わせなのですが、
この辺のエフェクターはライブをやるとPA側でやってくれていると
思います。

管楽器でエフェクターを操作する上で重要なのはギタリストやベーシスト
と同じで足元で操作を完結できることが第一条件となります。
お手伝いしてくれる人がステージ袖にいて、操作してくる場合は
コンピューターのプラグインでもいいのですが、
なかなか現実的ではありません。

ギター用、ベース用ではエフェクターはたっっっっくさん売っています。
ひと通りのエフェクター が内蔵されているマルチエフェクターでも
安いものだと数千円から。

管楽器でそれらを使うにはちょっと工夫が要ります。
管楽器はマイクで音を拾うのでそれをそのままギター用のエフェクターには
入れられないのです。
端子の種類だけでなく、電気信号の種類が違うのでめっちゃ音痩せします。
安価なギター専用マルチでは周波数レンジがギターに合わせてるので、管楽器では合わない場合もあり。

音質を第一に考える場合であればミキサーにマイクを入力して、
ミキサーからセンドリターンでレコーディングなどで使われるマルチエフェクター(主にラックタイプ)を使うのが一番ですが、
これだと足元で操作できません。(MIDIフットスイッチを使えば可能な機種もアリ)

僕が1番重要視しているのはバイパス時の音色の劣化です。
エフェクターを使うと言ってもライブ全体のメニューとすれば
ほとんどは生音のはずです。常にショートディレイをかける人もいらっしゃいますが稀です。
なのでエフェクターに繋げたマイクをバイパスした時にも中の回路に信号が通っているので劣化を感じないモノを選ぶようにしています。
マイクを2本立てて生音はこっち、エフェクターかける時はこっち、
というようなことも可能かと思いますが、PAさんの仕事を増やしてしまうので、なるべく1回線で済むようにしましょう。

「では実際にどういうものを使っていけばいいのか」

まず考えるべきはどういう音色を出したいのか、ということになりますが、
僕の場合ですとそんなに音色数は多くなくて
「コーラス」
「デチューン」
「オクターバー」
「ハーモナイザー」
「エンべローブフィルター」

くらいで後はそれの組み合わせです。
「ループプレイ」をする時にも使います。

最初は単体で全てを揃えていくと大変なので、
ボーカル用のマルチエフェクターを買いましょう。
僕が一番最初に買ったのは
Vocal300という機種です。
とりあえずなんでも出来ます。
難点はバイパス時の音色が細くなってしまうこと。
ファンタム電源が供給できないのでクリップマイクを
そのまま付けられないこと。

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少しコンプをかけてイコライザーで中域を持ち上げた音色を一つ作ってそれをバイパスとしていました。
なので常に使いっぱなしという状況ですね。ファンタム電源に関してはこれの後継機種のVocal400で付きました。

不満があったわけではないのですが、BOSSから新しいボーカル用にエフェクター が出たので乗り換えました。
VE-20という機種です

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こちらも一通りのことは出来ます。ファンタム電源も付いてるし、なんならルーパーも付いています。結構長いこと使っていたと思います。
でもやはりバイパスの音色が気になり、フットスイッチが少ないので操作性に難点がありまたも乗り換えw
でも初心者にお勧めするなら今でもこれか後述するZOOMのA1が良いかと思います。

で、この頃から隣のギタリストの足元が気になり出しますw
いっぱい並べてんなー、全部使ってんのかなー、カチャカチャ踏み分けてかっこいいなー、、、ということで似たようなシステムを組もうとしました。
ちょうどこの頃テクニカからSLICK FLYという機種が出まして、
こちらはエフェクターではないのですが、
エフェクター用のセンドリターンをひとつ作ることができる機械です。
普段はマイク信号がそのままPAに送られ、フットスイッチを踏んだ時だけセンドから繋げたエフェクターに信号が送られるというものです。
しかも市販のギター用のものが使えるように設計されています。
なんてニッチな商品だ!と思いましたが、僕にはぴったり!ということで
こんなシステムを組んでみました。

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詳しい方は各エフェクターも見ただけで「あーこんな音色使ってんのね」
なると思いますが、基本的にはLINE6M5という空間系マルチとZOOMマルチストンプというマルチで作っていました。
ハーモナイザーだけはどうしてもマルチで良いのが作れなかったので専用機を足してます。銀色の小さい3つのやつは名古屋のビルダーの方にお願いして作ってもらったボリュームを調整する機械です。
ボリュームペダルで調整するところをスイッチ一発で任意のボリュームに変えられるとてもありがたい機械♪
左下のスイッチ3つ付いているやつはスイッチャーと言って各エフェクターのオンオフをするものです。
これでだいぶ色々なことができるようになりました。
ちなみにマニアックなネタですが、各エフェクターを繋いでいるコード(シールド)はカナレの24chマルチをバラしたもので、細いのにしっかりとしています。

しばらくこれで運用していたのですが、こだわるほどにSLICK FLYのバイパス時の音に不満が。。。
バイパスしていると言っても中の回路は通っているので、直でPAに繋げている時と比べてしまうと。。。
中のコンデンサを良いものに改造したりして少し良くなったのですが、これを買い換えることになります。

やはりレコーディングで使うようなマイクプリアンプがいいのでは?となって色々と検討を始めます。
その手のマイクプリはラックタイプなので、せめてハーフラックであること。音が細くならないこと。インサート(センドリターン)が付いていること。
そこで行き着いたのがSummitAudio2BA-221という真空管のマイクプリです。

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ただノイズが少し気になったので中の真空管を良いものに変えてノイズを減らして組み込みました。

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このようにw
足元にラック機材を置くことになるとは。。と思いましたが、音は抜群によくなりました♪
インサートにエフェクトループを作ったのですが、フットスイッチで切り替えるような装備はありませんでしたので、EmpressのEQを間に挟み、踏んだ時にインサーションをショートできるようなケーブルを作って足でオンオフを操作できるようにしました。
赤いケーブルは楽器業界ではあまり使われないのですが、オーディオマニアには有名なベルデンの88760というアルミラップシールドです。普通の網線タイプのシールドよりもノイズをシャットダウンすることが出来ます。
とても硬くて製作しづらいケーブルなのですが、こう言った動かさない場所への使用にとても適しています。
完璧とも思われたこのボードですが、意外と短命でした。
ラックのマイクプリの出力が大きすぎてかなり絞らないと、PAの方で扱いづらいレベルになってしまうのです。もちろん絞れば良いのですが、そうするとこの真空管の持ち味が活かせないと。。

と悩み始めたころにコレが出ました。
RadialVoco-Locoです。

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この機械はとっても優秀でして、SLICK FLYに似ているのですが、圧倒的に音が良いのです。
こういうものが売られるということはそれなりに需要があるということなんですなー。
エフェクトをかけた音をWET、かけてない音をDRYというのですが、
そのバランスまでフットスイッチでいじれるわけです。
そして簡単ではありますがEQも付いている。
このWETのバランスをつまみひとつでいじれるメリットは計り知れず。
管楽器にエフェクターをかける場合、エレキギターと違うのはそもそも

「マイクを通さない生音が大きいこと」

が上げられます。ライブハウスの規模がキャパ20人くらいのところだと、
どんなにエフェクトをかけても生音が勝ってしまうんですよね。
当然エフェクトを100%WETに設定します。
生音は直接聞こえてますからね。
逆にそこそこ広いところですと、生音よりもスピーカーから出る音の方が圧倒的に大きいため、少し生音を混ぜてやらないと管楽器ぽさが消えてしまう。。という調整をつまみひとつで行えるわけです。
ということでコレにチェンジw

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そしてせっかくなのでオールチェンジ!
ということでかなり変わりましたねw
それぞれの音色に対してより専門的な単品にしてみました。
Voco-Locoに入力された信号は一旦コンプに流れます。
コンプで少しこもってしまった音をトーンを明るくする機械を通した後に
プログラムスイッチャーに入ります。
空間系のメインはEventide、strymon、フリーザトーンを使い分けていて、
足りない音色をZOOMのマルチストンプで補う形となっています。
フリーザトーンのディレイはタップを踏まなくても周りの音を察知して、
自動的にテンポ出ししてくれる超有能機械!

電源もかなり気を使ってノイズレス!
消費電力も偏らないように計算してしてケーブルもOYAIDEに変えて、
なんならハンダも銀の音響ハンダ!MIDIケーブルまで自作!
とまあ自己満足ボードは突き進んできました。
もうコレで打ち止め!満足!これ以上必要とされることはない!
となっていたのです。

ところが世の中はデジタルの流れに一直線です。
ひと昔前であればフルデジタルのエフェクターはデジタル臭い、
細い、固い、
などと言われ便利さを取るかアナログでめんどくさいけど、
音色を取るかのどちらかでした。
何しろメモリーができるというのがデジタルの最大のメリット。
上のボードでも各エフェクターはデジタルなのでメモリはできるのですが、
2系統のMIDIで同期したりかなり複雑な回路を組んでしまったので、何か現場でトラブルが起きた場合、瞬間的な対処が出来ないわけです。
原因を探すのに時間がかかる。。。

そして時代はフラグシップと呼ばれるマルチ時代へ突入するのです。

Fractal Audio Systems、Kemper、LINE6などです。
中でもXLRインプットがあるLINE6のHELIXに惹かれました。
マイクが直接挿せるフラッグシップはコレくらいでしたからね。

日本での発売が決まる前にもうお願いしてしまいました。。

ここまで読んでいただいた方にはお分かりだと思うのですが、
僕はただの新しもの好きですw

ですが、こちらもやはりギター、ベース用ということで
マイクが直接挿せるにもかかわらずそう言った使い方をしている人は
見かけません。YouTubeで探しても海外でボーカルで使っている人がいたかなーくらいです。
最初は試行錯誤で「何でもできる!」という代わりにシステムは複雑でした。
結局レクチャーを受け、なんとか形にすることが出来ました。
ボードはすごくシンプルに変身w

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EWIもそのまま入力して、同じ機械を通してるのに別回線だろうとサックスと同じ回線だろうとどちらでも行けます。何台分のシステムを同時に動かせるようになりました。同期モノのスタートとストップも行けるし、ロケーターをセットしておけば、同期モノのサイズをリアルタイムで変更できます。
デメリットは重いくらいw

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ギタリストと並ぶとこんな景色になることも。。w

ただお出かけする時はこんな荷物。。

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白いツアーケースにこの機械が入っています。

13キロw

音の作り方ですが、一番最初にルーパーを配置してまず何かを簡単に録音します。
それをループしながら音を作っていきます。
リアルタイムで吹きながら作っていくと結局生音が大きすぎてどんな音がスピーカーから出ているか分からなくなってなっちゃうので、
他のシステムでやる場合にもルーパーはあった方が便利です。
あとは現場で少しバランスをいじれるようにしておくと良いかと思います。

僕がスタジオで音を作り込む時はこんな感じです。

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最終的にはDAWで録音してみて周波数やレベルのチェックも行います。

HELIXの場合、良い感じのStudio系マイクプリのシュミレーターが入っているので、それを使うことをデフォルトとしています。いわゆるバイパスでもEQとそのシュミレーターは通しています。めっちゃクリアです♪

アップデートを繰り返し、最新のバージョンではマイクインのレベルインジゲーターがつきました。以前はマイクがどれくらいでゲインでクリップするのが音を出さないと分からなかったのでとても便利になり、文字通り「完璧」になりました。
できないことはないですね。
ただし、同じゴールを目指すのに複数のアプローチがあるのでどうやろうかと迷う時はあります。

ということで今のところHELIXに落ち着いています。
年末あたりにはまた変わるかもしれませんがw


よく聞かれるのはまず何をすれば良いか?

ということ。
どんな音が出したいですか?と聞き返すのですが、何ができるかどんな音が出せるかを本人が知らなければ、漠然としてしまいますよね。
なので、エフェクターがかかってると思われる音源を聴かせてもらえると質問に答えやすいです。
音を聞けばこういうエフェクターを使っているということがわかります。
そうするとオススメできる機種が絞られてきます。あとは予算ですね。
最近ZOOMからA1シリーズとしてアコースティック楽器用にマルチエフェクターが発売されました。少し前に同じタイプのギター、ベース用で発売されていた機種のパラメータをいじったモノなのですが意外と良かったですw
この値段でこんなことが出来てしまっては僕の今までの研究はいかにw

マイクの電気レベルインピーダンスなど気にしないでも最近のボーカル用マルチと呼ばれるものは問題ありません。
サックスで言えばマウスピースやリードを色々と変えて自分の音を模索してきたと思うので同じようにエフェクター にも相性があると思います。
ZOOMのA1やBOSSのVE-20はアルトのマウスピースでいえばメイヤーの5Mです。まずは「普通」を知らなければ人と違うことはできません。
コレらのプリセットだけでも最初は良いと思います。
ただしちゃんとした生音が出てないとダメですからね。

今後デジタル機械はCPUの価格が安くなって安価な機械にも良いものが搭載されるようになり、内蔵メモリが増え、音色がよくなっていくと思います。音色を作るセンスや実際の曲中での使い分けなどは「経験」「練習」が必要です。楽器を演奏するのと同じです。ギタリストと同じでエフェクター の使い方含めてその人の技量なので、今日明日ですぐに出来るようになる訳ではありません。ですが出来たらとても楽しいです♪
興味はあるけど難しそう。。。と感じて敬遠してた方へこのnoteが手助けになれば幸いです♪

それとも余計に混乱させてしまったでしょうかw
ここまで読んでいただいた方はすでにマニアックな人なので必要ないかもしれませんが、機材を買ったけど出したい音が出ないなどのレッスンもしますので連絡ください♪



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