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廃部寸前の演劇部が蘇り、そして半年で崩壊した話

高校入って数日たったとき、部活動勧誘会があったんですよ。体育館のステージでいろんな部活がいろんな特色を活かして勧誘してる中、演劇部の番になって。
でも壇上には誰も上がらず、映像が流れただけでした。

「演劇部は今年は私一人で、私も3年生なので活動は参加できないんですけど、誰も入ってくれなかったら潰れちゃうんで…まあ、よかったら来てみてください。」

はっきり言って何も惹かれる要素は無かったんです。
でも"潰れる"とまで言われると流石に憐れみが湧いてきちゃって、僕は演劇部に入ることを決めました。

入部希望者は〇日〇〇時に〇〇教室へ   演劇部
という雑な張り紙に従い向かってみるとなんとそこには9人ほどの生徒がいました。大豊作です。やはり潰れるという言葉の力は強かったのでしょうか。
顧問の先生も今年から来た先生ということで、全員ゼロからのスタートでした。

最初は皆で演劇の基礎的な練習をして、いつから放置されてるかわからない倉庫(埃まみれの衣装、溶けて使い物にならない延長コードとかしかない)を片付け、1ヶ月ほど経ったときだったでしょうか

4人辞めました

OMG 廃部まっしぐらだよ
演劇において5人って割ときついんですよ、照明音響が存在する以上舞台に三人以上出ることが不可能になります。
登場人物三人?何ができる?
性別比も終わってます。女子三人。めちゃめちゃ可愛い男子一人。俺。
おい男子役出来るのが俺しかいねぇ。

まあ与えられたものでやるしかないんでね。顧問の先生が適当に台本を見繕ってきてくれました。
題名は「ふたりぼっち」
そう、名前からわかる通り登場人物が少ない台本です。登場人物の総数は5人

え?足りないんじゃないかって?そうだが???

どうやって解決したのでしょうか?
僕は音響 兼 役者とかいうイカれた 大変な兼業をすることになりました。
まあ問題はそれだけじゃなかったんですけどね、例えば機材が8割方壊れてて使い物にならないとか。予算が1年間で5000円しかないとか。生徒会がふざけやがって。セット作るどころか作ったとて運搬すらできないんだが?

でもあの日々は楽しかったです。ゼロから演劇部を立て直していく中で僕達の中には連帯感も生まれつつありました。

それが壊れてしまったのはいつだったのでしょうか。

ある時練習の最中に一人の女子が突然泣きだしてしまったんです。今でも何故泣いてしまったのかは分かりません。
その時部室にいたのは4人。主役の女子二人と俺、泣いてしまった女の子でした。

「どうしたの?」「大丈夫?」何を聞いてもその子は首を振って泣くばかりで要領を得なかったんですよ。
僕には本当に何も分かりませんでした。僕は音響の仕事をするためにちょっと離れた場所にいたっていうのと、その仕事の合間に隠れてマインスイーパーをしていたのもあって。
事態が変わらず10分ほど経ち、面倒くさくなってしまったのでしょうか主役の女子のうち一人が言いました。

「落ち着かせるためにとりあえず一人にしてあげよう」

そしてその発言にもう一人も同調し、二人は教室を出ていきました。

俺にはそれが信じられなくて、泣いてる人を広い部屋に放置することが正解だとどうしても思えなくて、出ることはありませんでした。

仲間だと思っていた人全員に放っておかれて、それで泣きやんだとて俺だったらもう一回泣き出すなと思って。
とりあえず落ち着くまで隣にだけはいようと、一人にだけはさせるものかと思って。
30分くらいでしょうか、落ち着いてくれました。
泣く理由なんて自分から話さないなら触れてほしくないだろうと思って、元気になるまで雑談してました。
二人はこちらが呼びに行くまで戻ってきませんでした。

俺とその主役の二人の間に亀裂が入ったのはそこからでした。
その二人と俺とでは人の心、心情における理解が決定的に違うんだと理解して、なんかすごく「嫌だな」と思ったんです。
軽音サークルにおける音楽性の違い、みたいなことなんでしょうか。

そこからやめよっかな〜と漠然と思い始めて。泣いてしまった女の子もそう思ってたんでしょうかね。

何かを察したように何も関係なかったもう一人の男子が「やめようかなと思ってる」と言い始めました。
とりあえず今の舞台完成して大会行くまでは辞めるの待って……と宥め伏せながら、俺も同じタイミングで辞める決意を固めました。滑稽ですよね、辞めないでと言っている人間が一番辞めたがっていたなんて。

俺は何も言わないまま練習して、大会行って、まあ楽しかったです。
大会が終わって、男の子が辞めて、全道大会に進出して、まあそろそろ辞めるか〜と思って。

全道大会に進出して!?!?!?!?

OMG 演劇部立て直しすぎたよ 全道行くなよこれから辞めるってときにさぁ……

まあコロナ禍だったのが功を奏しましたね。動画提出での審査だったんですよ。全国は行かなかったんで全国行かなかったって言われたタイミングで電撃で辞めました。その後は知りません。

かくしてうちの高校の演劇部は廃部寸前から全道大会への出場という快挙を成し遂げた後に、部員の6割が退部するという史上稀に見る事件を引き起こしました。

僕はその後放送局に入ったんでその後は知りません。
半年後にそのときの主役の女の子の片方が俺の彼女を勝手に自称してるとかいう事件も発覚するんですが今回はここまで。

長文ですが読んでくれてありがとうございました。

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