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山手線ゲームのプロ道とは?必勝テクニックを初公開!

合コンのゲームでしょ?という風評被害

山手線ゲームというと「合コンで女子に飲ませるゲームでしょ?」と思われる方も多いだろう。初めに言うとこれは勘違い甚だしく、風評被害と言っても良いレベルだ。

確かに僕が山手線ゲームを始めたのは、大学時代、誰かにお酒を飲ませるためだった。僕には、理由もなく誰かに飲んでもらえるような「盛り上げスキル」がなかったため、「負けたら飲むよね?」という理由を作るのに、山手線ゲームは最適なゲームだった。

幸い、子供の頃からひたすら真面目に勉強してきた僕には、無駄な知識が多かったため、このゲームで負けることがほとんどなかった。どのくらい真面目だったかといえば、中学高校は友達も彼女も作らず、毎日2時間欠かさず勉強していたくらい真面目だった。

ゲームに勝てば自分は飲まなくても良いので、お酒に弱くても飲み会を楽しめる。面白い話題が思いつかなくても、ひたすらゲームという「アジェンダ」があるので楽できる。山手線ゲームは、ガリ勉のオタクには最適なツールだったのだ。

しかしこの山手線ゲームを何年も続けていく中で、イノベーションは起きる。実は高度に洗練されたプロとしての生き様があるのでは?という求道者としての血が騒ぎはじめた。

※本記事では飲酒を強要するような合コンにおける古臭い山手線ゲームのイメージを払拭し、シラフでも十分楽しめる山手線ゲームの奥の深さを解説します

山手線ゲームは「タイマン」で行う競技

何を言ってるのか?と思われるかもしれないが、山手線ゲームは通常1対1の2人で実施する競技だ。35才になった今でも、基本的には週に1回タイマンの山手線ゲームを鍛錬している。

「タイマン」で行う理由は、シンプルだ。まずテンポが速く、難易度が格段に上がる。プロとしての道を極めると、4人以上の山手線ゲームでは全く負けなくなる。つまらないのだ。

想像して欲しいのだが、自分が身長5メートルの巨人になったとしてバスケットボールを楽しめるだろうか?指が太すぎてボールはつまみづらいだろうが、味方からパスを貰えれば100%ゴールを決められるだろう。

山手線ゲームでもまさにそういう気持ちになる。難易度が低すぎるのだ。さらにプロの競技人口も限られるため、少人数制にならざるを得ない。

また後述するが、山手線ゲームの本質は「守り」ではなく「攻め」だ。3人以上になると、自分の左隣は攻められても、自分に攻撃してくる右隣には対応できない。技術が拮抗してくると、強敵を直接下せないのが非常にもどかしいのだ。

とはいえいきなり「タイマン」はハードルが高いだろう。プロとしての競技を楽しみたいなら、どれだけ多くても「3人」が限界である。このNOTEを読んでくださった方には、まず3人で集まる飲み会を設定していただきたい。

初心者が陥る「お題」定義のミス

前置きが長くなったが、ここから山手線ゲームのプロとしてのテクニックを紹介していこう。まず初心者が陥りがちなのが「お題」定義の曖昧さだ。

よくある勘違いだが、自分だけ勝つお題を設定するのは興ざめだ。プロ山手線ゲーム協会の紳士協定にある通り、最低2回ずつは回るお題を出すというのが周知の事実だろう。つまり忌まわしくも合コンで使われる「信号の色」はNGなのだ。

むしろ自分が負けるかもしれない、相手にとって得意なお題の方が挑戦的だ。自分に不利なお題で勝つことには大きな意味がある。まず次回以降のゲームで心理的優位性を持てることが大きい。後述するが、山手線ゲームは「相手の余裕を奪い心理的優位性を獲得する」ことで勝利する。そのための布石になるのだ。

本題に戻そう。まず注意すべきが「定義の厳密さ」だ。曖昧な定義をしてしまうと相手にお題を「乗っ取られる」リスクが発生する。

ここで皆さんに質問だが、「ケンメイ」というお題で何を思い浮かべるだろう?わざわざカタカナで書いたことで皆さんも警戒しているだろうが、口頭でこの音声を聞いた時、普通の日本人なら「県名」と解釈するだろう。山手線ゲームなら妥当なお題だ。

しかしプロ界隈でこのお題を出すと「マルチーズ」は正解だが、「北海道」は不正解になる。

マルチーズは「犬名」なので文句なしの正解だ。一方で、北海道は「道名」なので当然不正解だ。

何を馬鹿なことを言っていると思われるかもしれないが、定義ができていない以上、相手に付け入るすきを与えてしまっている。音声でしか定義できない以上、反論はできない。

これが合コン会場なら、多数決で「マルチーズ」は負けるかもしれないが、ここはプロ競技の会場だ。突っ込んだ方が負けである。

補足説明するが、山手線ゲームは誰かの回答に物申した瞬間にゲームが終了する。その物申しが正しければ、回答者の負け。物申しが誤っていれば、物申した人の負けだ。

不用意に「マルチーズって何?」と物申した瞬間、その人の負けが確定するのだ。

本来の意味の「県名」でやりたいなら、例えば「都道府県名」や「100ヘクタール以上ある県名」と言わなければならない。「この中の2人以上が認める」という前置きを置くのも定番のお題定義だ。

またプロが口癖として発する「現在実在する」という前置きも過去にハックされたトラウマから存在する。「国名」というお題で、「神聖ローマ帝国」や「アリアハン」と言われればお題が破綻してしまう。

また例えば「ポケモンの名前」というお題では、「ニックネームなしバグ技なし」という前置きが必須だ。「タロウ」や「ゔっっゔァ」と言われてしまえば、それも無限に終わらない千日手となってしまう。

初心者へのオススメでいうと、どんなお題でやるにせよ、かならず冒頭に「現在実在し、この中の2人以上が認める」という枕詞を付けるようにしよう。

「お題ハック」からゲームが始まる

ゲーム開始者から「お題」が発せられて始めにすべきことは「お題ハック」である。先述した通り「いかにそのお題を破壊できないか?」を、自分の番までに考える。

典型的なハック方法は、その音声から拡大解釈できるテーマがないか?ということだ。例えば「国名」を100個くらい言ったあと、両者もう後がないフェーズで決め手になるのは「神聖ローマ帝国」「ムガール帝国」と言えるかどうかだ。

実際にお題を破壊するかどうかよりも、「いつでもこのお題は破壊できる」という「心の安心」が勝負を決めるのだ。

皆さんも、山手線ゲームの経験があれば分かるだろうが、回答が思いつかないときの「パニック状態」が最も危険だ。「何も思いつかない!やばい!」となると思考能力が急激に落ち、ますます思いつかなくなる。常に心に余裕を持つことが、山手線ゲームで勝つ上で最も重要だ。

「いつでもお題を破壊できる」という心の拠り所が、お題を破壊するまでもなく相手を葬り去るための保険になる。

お題ハックで気をつけなくてはならないのは、お題ハックに夢中になるあまり、本題側の「回答済み」を記憶できなくなることだ。

「タイマン」山手線ゲームで一番難しいのは「相手が言ったことを全て記憶する」ことだ。相手が重複回答した場合、突っ込まなければならない。しかしお題ハックに夢中になりすぎると、本題側で何を言ったかを記憶できなくなる。人間の脳は2つのカテゴリで同時に進行する山手線ゲームを、両方記憶できるほどは良くできていない。

お題ハックはあくまで「保険」である。自分がハックしたことを言いたくなる気持ちは抑えて、懐刀として収めておこう。

序盤で「得意なカテゴリ開放」で心の余裕を作る

ようやく「せーの、はいはい」から山手線ゲームが始まる。ここまでに3,000文字も書いてしまった。SEO記事なら1位を取れてもおかしくない文字量だ。そのくらい山手線ゲームが熱狂的競技であることを皆さんに伝えたい。

最初の回答ターンですべきことは「自分の得意なカテゴリを開放する」ことだ。

まず前提として、山手線ゲームには「大カテ小カテシステム」というルールがある。

大カテゴリを言った後、小カテゴリは全て言えなくなる。つまり「犬」と言ったあとに「マルチーズ」や「柴犬」は言えなくなる。

逆に小カテゴリを言った後、大カテゴリは言えなくなる。つまり「マルチーズ」と言ったあとに「犬」「哺乳類」「生物」は言えなくなる。

このルールを逆手にとるのが「得意なカテゴリ開放」だ。つまり自分が得意なカテゴリは「小カテゴリ」から言うことで、「大カテ潰し」を防ぐのだ。

例えば「昆虫」というお題(厳密には、「現在実在するこの中の2人以上が認める昆虫、ただしニックネームバグ技なしで種としてWikipediaに記載があるもの」)を想像して欲しい。

自分がクワガタの種類に自信があるなら、対戦者に「クワガタ」と言われる前に、「アカアシクワガタ」と言わなければならない。小カテゴリが開放されたため、自分は全てのクワガタを言えるようになり、相手はこちらのクワガタが全部言い終わるまで勝てない。

相手:トンボ

自分:アカアシクワガタ

相手:セミ

自分:ノコギリクワガタ

相手:アリ

自分:ヒラタクワガタ

となる。

相手が昆虫博士でもない限り、絶望感が溢れてくる。これで心の余裕を奪っていくのだ。

ここで重要なのが、自信満々に「クワガタ」の名前を発すること。「僕はこのあと無限にクワガタについて語れるんだけど何か?」という堂々たる発声に相手は絶望する。可能なら「セミの小カテゴリ」も開放してさらなる絶望も与えよう。

相手の得意な大カテゴリを潰す

前項同様に序盤ですべきは「相手の大カテゴリを潰す」ことだ。相手に得意なお題だと認識したら、むしろこちらを先行させる。

例えば、僕はアニメ以外のテレビを全くみないため、芸能人の名前を殆ど知らない。そんな僕に「アイドルの名前」などという知性を感じさせないお題で挑んでくる輩が居たとしよう。

そんな時まず最初に回答すべきは「ハロプロ」「ジャニーズ」などだ。マニアックなアイドル名を意気揚々とたくさん叫びたい対戦者の心を出鼻からくじく先頭打者ホームランを狙う。

ここでお気づきの方もいるだろうが、山手線ゲームの勝敗は知識量に比例しない。相手の心をいかに折るかが全てだ。得意な領域がすべて闇に葬られた焦燥感は計り知れない。

「大カテ潰し」で唯一注意すべきは、紳士的な範囲で潰すことだ。先述の通り山手線ゲームは紳士淑女の競技だ。「アイドルの名前」を潰したいがあまり「ホモサピエンス」などと言ってはいけない。これはもはやお題に適合していないのでアウトとも言えるが、超大カテゴリを潰すことで審議を有耶無耶にする行為はゲームそのものをつまらなくするので避けたい。

巧妙に罠を仕掛ける

カテゴリの攻防が終わり、ようやくゲームのスコープが決まる。お互いに回答の粒度が揃い、残り回答数が見える。この段階ですべきは罠を仕掛けることだ。

ここで言う「罠」は、重複した回答をしてはならないという山手線ゲームの基本ルールを使った技である。

例えば「調味料」というお題で「NaCl」と回答する。

「NaCl」と「塩」は、厳密にいうとカテゴリにズレがあるものの、概ね同じ物を指すため重複アウトになることが多い。

相手に化学の知識がなければ、次々に化学記号で調味料を潰していく。「CH3COOH」「NaHCO3」という具合だ。

この技は単純に相手が間違って「罠」にかかるという可能性以上に、相手の心の余裕を奪うことに貢献する。

どこに地雷が埋まってるか分からない道を歩くのは、大変な心理的恐怖を伴う。これが心の余裕を奪い、思考を鈍らせ、結果的に回答できなくなる。

他にもあえて相手に突っ込ませる高度な「罠」も紹介しておこう。

例えば、JRの駅名で「小川町」と回答するなどがそれに当たる。関東に「小川町」という駅は2つあり、都営新宿線の「小川町」と、埼玉県にあるJR線の「小川町」が該当する。

「JRの駅名」というお題で、少し焦ったように「お、おがわまち!」とどもりながら言うと、意気揚々と対戦者がつっこんでくるが、それがまさに罠にかかった獲物である。

このように罠には様々な種類があり、山手線ゲームをアートたらしめる要素となっている。

相手の心を徐々に蝕む

ようやくゲームも中盤だ。何度もお伝えしているように、山手線ゲームは相手の心の余裕を奪い、思考力を鈍らせていくゲームだ。

通常、時計回りで答えていくため、自分の左隣に座った人が攻撃対象になる。この左隣が何を次言いたいかを常に想像しながら回答していく。

「山手線の駅名」というお題であれば、「目黒」と言ったあとに「目白」と言いたくなる。これを逆手に取り、相手が「目黒」と行った後はすかさず「目白」と潰す。「日暮里」「西日暮里」なども同じ関係だ。

さらに相手がよく使う駅は焦ったときに想起しやすいため、どんどん潰していく。初めての対戦者なら、ゲームを始める前のアイスブレイクでその人となりを理解しておくのも重要だ。

当然、プロ同士なら相手も同じことを考えて自分の心の余裕を奪いに来る。ここで勝敗を分けるのがここまでに仕掛けてきたストックだ。

山手線ゲーム初心者は、次のターンまでに言えるストック回答を1~2個用意するが、これは本当に甘すぎる。カルーア原液よりも甘い。

ストックすべきは、罠の数、開放したカテゴリの数、破壊できるお題設定などだ。いくらでもゲームを根底から覆せるという心の余裕が自らの思考を冴え渡らせる。

心に余裕を持ち、思考できる状態を維持し、あえてストック回答は用意しない。相手が回答した瞬間に、次相手が何を言いたいか想像して、瞬発的に回答していくのだ。

この時、ありえないくらい自信があるように発話すること。相手に「やばいこいつ余裕ある、まだまだ回答できそう」と思わせることで、心の余裕を奪っていく。もう後がなくても、ありえないくらい自信があるフリをしよう。

怪しくても突っ込まない勇気を持つ

いよいよゲームも終盤だ。お互い精神的にきつくなりつつも堂々と振る舞う。ジョジョ第3部スターダストクルセイダーズのダービー・ザ・ギャンブラーに対する承太郎をイメージしよう。

思考が冴え渡っていると、ここまで何が回答済みか全て記憶しているだろう。しかし人間の脳はそこまで高スペックではない。さすがに忘れることもあるし、お酒も回っているかもしれない。

相手の回答に突っ込むのは山手線ゲームの醍醐味だが、やりすぎは禁物だ。明らかにおかしい時以外に突っ込むと相手の「罠」にハマる可能性も高い。

よほど自信がない限りは、スルーする勇気を持つことも重要だ。3人で実施する場合、自分より高ランカーのプロに突っ込ませるのも有効だ。

山手線ゲームの敗因の30%くらいは、このツッコミによるものだ。高頻度のツッコミは勝率を下げることを覚えておこう。

一方で、自分がもう何も回答できないと悟ったときに、ファイナルアタックとしてとりあえず突っ込むのはありだ。もしかしたら対戦者がブラフで回答しており勝手に負けてくれるかもしれない。

最後まで諦めないのもプロとしての堂々たる振る舞いだ。

有識者として堂々とウソをつく

心に余裕がなくなったら、まず初めに堂々とウソをつこう。自分の心に余裕がないほど後半戦なら、相手にも余裕がないことがほとんどだ。多少のウソでも気づかない。

可能なら自分の得意なジャンルほどウソをつこう。自分の開放した小カテゴリならウソはつき放題だ。このウソが暴かれるのは、対戦者がやけくそでファイナルアタックつっこみをしてきた時くらいだ。

以前「恐竜」というお題で、「サルマドン(垣内の想像上の生き物の名前)」と恐竜博士になったつもりで回答したら当然のごとくスルーされた。

以後「サルマドン」は恐竜の名前として、プロ界隈では通っている(すでにウソだとバレてしまったが…)

繰り返して言うが、山手線ゲームは知識量の勝負ではない。「心の余裕」の勝負だ。ウソすらも、月火ちゃんの白金ディスコばりに通してみせてこそプロといえる。

以上が、山手線ゲームの基本テクニックである。長々と書いたが、ここまでの思考が、わずか1分以内の出来事だ。なんとエキサイティングな競技であることか!皆さんも今すぐやってみたいと思われることだろう。

初心者にオススメの練習法「乗り換えゲーム」

初心者はまず、相手が回答してから考えるという思考を練習する必要がある。そのためにオススメの練習法が「乗り換えゲーム」である。

「乗り換えゲーム」の基本は山手線ゲームと同じだ。時計回りに、1つずつ電車の駅名を回答し、重複するか言えなくなれば負けだ。

独自ルールは以下の3つである。

1)乗り換えずに行ける駅名を言う

池袋→品川(山手線で一本)、東京→博多(新幹線で一本)など、電車の種類によらず一本で行ける駅名を回答する。このルールにより、右隣の人が回答してからしかお題が定まらないため、思考の練習になるのだ。

2)隣の駅はNG

池袋→新宿(埼京線で隣)、渋谷→品川(成田エクスプレスで隣)など、各駅でも快速でも隣あう駅名は回答してはいけない。このルールにより、視野の広い思考が身につく。

3)徒歩NG

地下鉄の駅に多いが、「後楽園」と「春日」など徒歩で乗り換えられる駅名を同一の駅とみなすのはNGだ。例えば、池袋→神保町は、厳密に言うと、池袋→(丸ノ内線)→後楽園→(徒歩)→春日→(三田線)→神保町、と見なされる。これをOKとすると、全ての駅が徒歩でいけなくないというお題の崩壊を招くためNGとする。極論、参勤交代するつもりなら東京→博多も歩けるからだ。

この乗換ゲームを極めれば、山手線ゲームの基礎が概ね身につく。ぜひともおすすめしたい。

最後に

誰も興味がないと薄々知りつつ、僕の半生をかけた山手線ゲームへの想いを書き綴ってみた。大学1年生から本気で始めたので、競技歴は約17年にわたる。なんでこんな無駄なことを17年も続けてきたかは甚だ疑問だが、これから山手線ゲームを始めようと思う誰かの役に立てば幸いである。

目的とアジェンダがない会話がひどく苦手なため、山手線ゲームは無思考に誰かとコミュニュケーションできる最適なツールだと思う。

現時点で認定プロは3名ほどだ。ぜひとも鍛錬を重ねた上で、プロ試験を受けに来て欲しいと切に願う。

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