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瞬きの中になら、永遠はありますか。

虎ノ門ヒルズ 東京ノードで開催されている
「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」を観に出かけた。

元々、蜷川実花さんの写真は好きだ。
学生の時分、自分で撮った写真の彩度をガンガンに上げて真似してみたこともある(我ながら浅はかである)。
映画も、ヘルタースケルターとさくらんは劇場で観た(Dinerや人間失格、ホリックは観ていない。アマプラで観れるようだから観てみよう)。
キャラクターっぽい衣裳やセットで撮影された人物写真が、若い頃はとても好きだった。
色鮮やかで毒々しくて、パンチが効いていておしゃれで。
そして、だんだん風景写真や花の写真もいいなぁ、と思うようになった。とくに造花と青空や、散っていく桜や、金魚なんかの写真が好きだ。

今回は開催情報を知ったのが遅く、会期終了までもう間もなくだったのであわてて予約をした。昨日でチケットが完売になったようなので、危ないところだった。
あまり前情報を入れないまま、会場へ向かった。

メインビジュアルが鮮やかに咲き誇る花と枯れて朽ちていく花なのがとても好きだと思った。諸行無常の響きありって感じだ。

最初は暗いところから始まった。目を凝らさないと、人にぶつかってしまいそうな暗さ。

写真ではわからないからやっぱり会場に行ってよかったし、苦手なコンタクトを入れて行って本当によかった。
無数の白い藤の花の間から、光が差している。

中には枯れたエンゼルトランペットもあった。
造花に混じって生花が飾られているのが特徴的かもしれない。

最初は混んでいたけれど、このスペースはあっという間に人がいなくなり、すぐに私ともう一人だけになった。

奥へ進むと、今度は街の景色や揺れる水面が映し出された箱がたくさん置かれていた。夜中のテレビみたいな、雨降りの窓みたいな。

床に映る光もカラフルで夜の街のネオンみたいだ。

廊下にも写真が飾られている。
この脚の写真が好きだな、と思ってなんとなく撮った。赤がビビッドなのと、ストーリーを感じるのが良い。
移動した先では壁と天井一面を使った映像が観られたのだけれど、すごくガチャガチャしていて映像の切り替わりが早く、基本的にぼーっとしている私はついていけなくなってしまった。目まぐるしく変化することを狙った作品だと思うので、単純にnot for meというやつだ。金魚の映像はとても綺麗だった。

また少し暗い場所を経ると、今度は楽園というものがあるならばきっとこんな場所なんだろうと思えるような空間が広がっていた。

(このあたりが最も混み合っていて、満員電車みたいでなかなか前に進めず、後ろからは押され、たいへん困った。けれど、写真をたくさん撮りたくなる気持ちはとてもわかる。し、それを狙った展示だとも思う)

色とりどりの造花で埋め尽くされていてここだけ時間が止まっているようで、美しいけれどちょっと怖い感じもする。

空の写真を背景に、造花と生花が入り混じって活けられている展示。
これが個人的にはとても好きだなと思った。よく見ると、枯れて朽ち始めている生花がいくつもある。会期終了直前だから見られたこの展示のベストな状態とも言えそう。壁には他にもこの花たちを撮った写真がいくつも飾られていた(本来写真が見たくて来ているのでとても嬉しかった)。

もう少しだけ続く花のカーテンをくぐって進むと、また小部屋のようなかわいらしい展示があり、混み合う中一枚だけ写真におさめておいたのだけれど、あとで見返したら人のスマホ画面が映り込んでいたりしてどうにもここに載せる気にはならなかった。ので、写真はなし。

その先の展示がまたよかった。

天井から吊られた複数の丸いスクリーンに、風景の映像が投影される。
スクリーンはかすかに風に揺れている。
それを、ビーズクッションに身を委ねて見上げるというもの。
ここはスルーしていく人や休憩スペースみたいに使っている人も多々いたけれど、私はとても気に入った。もはや、映像を観ながらそのまま眠りたかった。
見たことはないけれど、走馬灯を見ているような気持ちになってひどく安心して目を瞑ってしまいたくなった。

ふと思い出したんだけれど、前にPlatformの基礎稽古で「氷の像になって、3分で溶ける過程を体で表現する」というのをみんなでやってみたことがあった。
溶けるというのはつまり死ぬようなもので、それを怖いとか嫌なことと感じる人と、安心したり幸せと感じる人がいることが話していてわかった。
私は後者だった。だから、この展示が走馬灯みたいに思えたのかもしれない。
実際こんなに綺麗なものではないかもしれないけれど、こんな感じであってほしいから、スマホの画面ばかりではなくて美しいものをもっともっとたくさん見よう、と思った。

最後の展示は、撮影禁止。
なんだか特別なものを観たような気持ちで、暗転まで見届けて会場をあとにした。

ポップアップストアでは、廊下に展示されていた脚の写真が使われたマルチケースと、梅の花のポストカードを買った。

ポストカードは展示を見に行くたびに少しずつ増やしている。お気に入りの写真が目につくところにあるのは気分があがる。

写真よりも映像やインスタレーションが主な展示だったので「思ってたんと違う」なところも結構あったけれど、面白かった。自分の死生観みたいなものも少し思い出したし。
今年は芝居とはまた別のジャンルも積極的に体験しに行ってインプットしたいなぁと思う!

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