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ロリータファッションの事

長らく着ていなかったロリータ服を衣装ケースから取り出して1着ずつ、虫に食われていないか、カビが生えていないか。手入れの仕方が分からず洗濯できずに放置して濃くなってしまったシミや、洗濯しても落ちなかった黄ばみなど。そういったものを1着1着チェックした。

事務所から独立してまずはロリータ服を引っ張り出した。
事務所にいた頃、着るななんて一言も言われていない。
でもなんとなく、自分という「女優」の一貫性として、わかりやすくカテゴライズしてもらうために、ごちゃごちゃした情報はふせて、ロリータも表に出さなかった。
ロリータ着てると必ず不思議ちゃんやら何かしらのキャラを求められる。そうでなければ紛らわしいから着ない方が賢明だと思っていた。

ロリータは私の一部だ。これは何年も言っていることだけど、私はロリータを、服として好きなだけなのだ。

ゆいちゃんはなんでもできるけどなんにもできない、と、もう20年くらい言われ続けていて、要素を多くすると濁る、といった定説を自分に向けられるのも嫌だった。

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一度オーディションで映画下妻物語にゆかりのある方がスタッフとして参加しているとわかっていたとき、
自分が実はロリータファッションを好きで、下妻市のロリータファッションコンテストでグランプリを獲った経歴があると自己紹介で話したら、その場の温度が一瞬5度くらい上がって、その場のみんなで、なんか爆笑した。

それはたぶん「好き」が実を結んだ瞬間だ。

事務所に「所属」して「女優」の私を受け入れてもらうために私は、たくさん悩んだり考えたり失敗したりたまにうまく行ったりも、したけど、たぶんこのオーディションの時の
「なんかみんなで爆笑」

は、その中でも特別だった。受けを狙ったわけでもなく、ただ「好き」が産んだ結果をお伝えして、その場にその「好き」に関わった人がいた。

まさかこんな日が来るなんて。
自分が好きで好きでたまらなかったもの、こと、が、こんな形で受け入れてもらえるなんて。

それは気に入られようとして取ってつけた特技でもないし、機転が効くアピールでもなかった。

ただロリータファッションに憧れて、田舎で実家の農作業の手伝いをして貯めたお小遣いで集め始めたフリルやレースやリボンがたっぷりついたお洋服たち。

学生の身分で洋服に(しかも全然実用的じゃない洋服に)こんなにお金をかけるなんて自分はダメなやつだ…堕落だ…って思って胸を張った趣味とは思えなかったけど、大人になって、まさかのこんな形で、私を助けてくれる。


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ねえねえところで、ロリータ服めっちゃかわいいな?着ちまおうか、にやり

と少し前から考えていた。
やっぱりかわいい。
私は30代になったらロリータ絶対着れないって思ってたし、実際20代後半でも「まだ着れるかな…」って恐る恐る家で着てみたりして、なんとなく顔つきがもうロリータ似合わないね、って鏡に映った自分を見て少しがっかりしていた。

でも今。なんか、やっぱ着ても良いんじゃない?って改めて思っている。

私はバリバリのロリータだった頃、よく聞いていた言葉がある。これ言うのは決まって女性たち。

「ロリータかわいいよね。私も一回着てみたいんだよね」

そう言われるたび、バリバリだった私は「実際着る勇気もない癖に、ロリータ服を気軽に可愛いなんて言うな」と、心の中で(たまに口に出して)毒づいていた。ロリータ服は可愛い。けど、着て、出歩くとなると、10年前はまだまだそれはなんだか自傷行為的だったのだ。わざわざ高いお金を出してアイテムを揃えておめかししていざ街に出れば心ない人からの盗撮、ヤンチャな感じの方々からヒュオーッとか萌ーッとか叫ばれ、子どもからは指をさされ…

最高に可愛い服を着て、最高に可愛くなった自分で街を歩くだけで、こんなにも嫌な思いをする。それでも着たい。だって好きだから。
そういうものを勝手に背負ってしまって、あのバリバリの人は、ロリータファッションを着るには何かしらの覚悟が必要、と思い込んでいた。
だから気軽な「かわいいよね。着てみたい」の一言が悲しくて、怒っていたのだ。私はこんなに、傷ついているのに。

着たければ着れば良い。似合う似合わないとか年齢とか関係ない。ロリータ可愛いって思うなら高いお金出してアイテム揃えて、着てよ。

って本気で思ってた。
でもそれ、今の自分じゃ言う資格も、思う資格ももうないな。だって30才を超えて、顔つきが似合わなくなって、とか自分で言って、なんかつまんない奴。

でも同時に、可愛い、着てみたいけど勇気が出ない、って人の気持ちもやっとわかった。やっとやっとわかったよ。
私はもう歳だから、顔が似合わないから、って言う理由で、かわいいかわいいロリータファッションを、一生着ないのか!!!!???かわいいかわいいロリータの自分を、一生見ないのか!?!?

答えは!!!

NOだ

私は、ロリータファッションが好きだ。大切だ。なくならないでほしいし、むしろもっと発展していってほしい。そして、ロリータファッションかわいい、着てみたい、と思ってきっと一生着ないであろう人の手助けをしたい。着て欲しい!

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先日、かわいい大学生の後輩ちゃんがハロウィンのイベントで仮装をすることになった。衣装の案は綾波レイのプラグスーツとか、水着、とか、まあ色々出たんだけど、私は何故か「ロリータ着たら?貸すよ?」と口走った。

私は下妻物語の桃子からたったひとつ影響を受けた台詞がある。

「1番大切なものは人に貸さない」
これで、私はこの先一生自分のロリータ服だけは、人に貸さないと誓った。

何よりお気軽なコスプレ感覚で自分の大切なコレクションを消費されて汚されるのが嫌だった。ロリータはコスプレじゃなく、ファッションだから。
よくメイド服と混同されて
「お帰りなさいませご主人様、とか言うの?w」

とか聞かれるのも慣れっこになって、ロリータとメイドの違いを説明するのももう疲れて、
「言わないよ☺️」
で会話を終わらせたりしていた。


カタギの人間にロリータファッションを理解してもらうなんて無理

という結論に行き着いたまま何年も経って、ある日かわいい後輩ちゃんになんのためらいもなく出てきた「貸す」という選択肢。


私はロリータファッション存続の危機を感じているのだ。じつはロリータブランドはこの数年でいくつもなくなっている。ええ、もう2度と、あそこのブランドのお洋服は買えないのね、、という痛ましいニュースが多く耳に入った。


ロリータ服が売れないのだ。みんな着ないから。

そして、そんな売上不振の一端を担っていたのはきっと私のような謎のこだわりロリータ警察だ。
私はたまに街で見かけるにわかっぽいロリータを厳しく取り締まっていた。心の中で。
でも、そういう意地悪なロリータ警察(わたし)のせいで、きっとロリータデビューに踏み出せないでいる人はいるだろう。敷居を高く感じさせているのは私のような人間なのでは?

かなり私のせいだ!!かなり責任を感じている。
このままでは大好きなロリータブランドが絶滅してしまう。私のせいで。


今いるロリータさんたちがこれからも新作が出るたびにガンガン買い物してくれれば良いけど、それはいつまで持つかわからない。

だったら、ロリータ服を購入する大元の人口を増やせば良いのでは???

そのためにここで大切なのが
「ロリータ可愛いよね。一回着てみたいんだよね」
の皆様である。
頼むから着て欲しい。できればアイテム一式揃えて。

ロリータを着てみたい人たちが、夏に浴衣を着るみたいに、ひな祭りとか(ハロウィンでも)で着るためにロリータ服を購入するという慣例ができれば、かなりこれは、、、ロリータファッション再興あり得るのでは…!

そんな思いからなのか、ハロウィンの「コスプレ」が入り口でもいいから、このかわいい大学生の後輩ちゃんに、ロリータファッションに触れて欲しかったのだ。自己満だ。


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前の日に黒白のコーデか、ピンクのコーデかファン投票で決めるとのことだったので、当日は一応その2パターンでコーデ一式揃えてスーツケースに詰め込んでご自宅へお邪魔した。
まずはファン投票で人気の多かった黒白コーデ。
ブラウスもジャンパースカートもヘッドドレスもBABY。ペチコートもソックスも。
やはり私の睨んだ通り、似合う。黒白は初心者にはまず間違いないのと、彼女の髪型、髪色、肌のトーンから、絶対黒白は似合うと思っていたのだ。
しかし同時にピンクのコーデも絶対絶対似合うのに…と心の中で悔しがっていた(ちなみに私はピンクに投票した)

全身大変身を完了して、お宅のお庭(秘密の花園みたいなかわいいお庭!)で撮影会して、私もママ様も2人とも大興奮でかわいい可愛いと写真を撮りまくった。ママ様も「わたしも着てみたいのよね」とぽつりと言うから、是非着てみてほしかったな…

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たかがハロウィンのコスプレなんだから、ホームセンターでも売ってる安いメイドのぺらぺらのコスチュームでも良かったのかもしれない。それだっていつもと違う広がったスカートにフリルで、十分かわいいし、楽しい気分になれるだろう。

でも本物の、一枚一枚細部までこだわって縫いつけられた繊細なレースやよく見ると服によってそれぞれ違う可愛いボタン、後ろ姿まで可愛いバッスルのシルエット。そう言ったものに全身包まれると、やっぱり胸の高鳴りの質は違うと思う。
実際に、後輩ちゃんにドロワーズ、ブラウス、ペチコート、フリルのペチコート、パニエ、と一枚ずつアイテムが重なっていくたび、私たち(主に私)はもう、キャアキャアを通り越してギャアギャア、可愛い可愛いと、大騒ぎしていたのだ。

後輩ちゃんも、きっとこの楽しさを、実感してくれたと思う。

少し昔に流行ったファッションで、その存在は今の子たちも知っていて、でもなかなか着るまでにはならないかも知れない。
でも仮装といった形でも、ロリータファッションに触れてもらえて、本当に嬉しかったな。

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ハロウィンイベントは夜まで続くので私は服を預けて帰ったのだけど、イベント後半ではピンクの方も着てくれていて、こちらも私の睨んだ通り、めちゃめちゃ可愛くて似合っていて、なんか…すごく嬉しかった…
そして本人も、ピンクはさらに気分が上がる、ってコメントしてくれていて、そうだよねそうだよね!ってなった。
みんな自分はピンクのロリータとか絶対に合わない!って言うけど、似合うピンクを見つければ絶対似合うから!
超可愛いから!

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そんなわけで私の、ロリータファッションアドバイザー(勝手に)記念すべき第1回はこんな感じで始まり、こんな感じで終わったのでした。
衣装のレンタルはこれからやって行く予定はないけど、ロリータファッションに挑戦してみたい、一度は着てみたい、とか、ロリータファッションの事で悩んだり一歩踏み出す勇気がない皆様。

プリンセスオブロリータの細川唯がなんでもお手伝いしますよ!

困っている人は連絡ください🎀

困ってなくてもロリータファッションについてお話ししたい方も大歓迎🎀


細川唯でした👑

あなたのおかげで生きているのかもしれません。