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【箱根駅伝】青学・原監督を叩く前に考えておくべきこと

ここ数年、箱根駅伝をほとんど観なくなった。

その理由は、レースの筋書きがほぼ出来上がっているからだ。

筋書きのないドラマを生み出すのがスポーツの魅力のはずなのに、レースが始まる前から勝者が決まっている。

それくらい、箱根駅伝の青学は強い。そして、今回も同じようになると思った。3区が終わった時点では...

驚異のピーキング力、40区間で二桁順位は1区間のみ

青学の異常な強さ、それは4連覇中の各区間の順位を見ると一目瞭然だ。

往路・復路合わせて10区間で競う箱根駅伝、4大会になると合計40区間を走ることになる。

そして、青学は4連覇中の40区間で二桁順位に終わったのは93回大会の7区のみ。それも11位だから、本来なら及第点の成績だ。

残り39区間は全て一桁順位。この驚異のピーキング力が青学の4連覇を支えた要因の一つと言えるだろう。

そして、このピーキング力は、今大会の復路でも存分に発揮された。区間記録を含む3つの区間賞、残り2区間も区間2位と申し分ない結果を叩き出した。

戦国駅伝で勝ち続ける難しさ

往路のブレーキがあったとはいえ、優勝タイムは11時間を切る10時間55分50秒という好タイム。これは、4連覇を果たした前回より1分50秒ほど速い。

駅伝は気象条件によってタイムが大きく左右されるため、一概に比較はできないが、今回も総合優勝をしておかしくない成績だ。

しかし、それでも勝てない。今の大学駅伝のレベルはそれぐらい上がっているのだ。

「打倒、青学」に執念を燃やし結実させた東海大学、往路を新記録で制した東洋大学だけでなく、今回4位に食い込んだ駒澤大学も復活の狼煙を上げてきた。

一方で、平成の前半に箱根路を沸かせた山梨学院大学、神奈川大学、早稲田大学、中央大学はシード権を逃している。一時、復活を印象付けた明治大学も苦杯をなめた。

国学院大学、帝京大学、中央学院大学、拓殖大学などが着実に力をつけ、いわゆる伝統校の看板が通用しなくなった。

過去に5連覇、6連覇を達成した大学はある。しかし、今のようなハイレベルな争いの中で、4連覇を達成してきた青山学院大学はやはり異常としか言いようがないのだ。

今こそ振り返りたい、原晋監督の功績

「ゴーゴー作戦」を打ち出し、今回も大会前に勝利宣言をした原監督。

しかし、5連覇を逃した今回はバッシングに晒されることが予想される。

特に、マスコミや「それ見たことか!」と原監督を良く思わない陸上関係者からの批判は容易に想像がつく。

確かに、出たがりな性格からなのか、最近はバラエティ番組などで頻繁に目にする。

しかし、少なくとも現在は、自分が目立ちたいだけであれだけマスメディアに出演しているわけではないはずだ。


「陸上をメジャースポーツにする」

原監督は常々こう口にする。

私も陸上、それも長距離をやっていた人間だからこそわかることだが、あの駅伝の盛り上がりは他の陸上種目では決して見られない。

日本最高峰、それこそ国の代表を決定するオリンピックの選考会を兼ねた時でさえ、競技場の観客はまだらだ。

ビジネス的な観点からすると、駅伝と記録を出した時のみ注目を集める男子100m 以外はお話にならないと言っても過言ではない。


にもかかわらず、陸上界は変わらない。

原監督はもちろん、今回の箱根駅伝で的確な解説を披露した渡辺康幸氏も、旧態依然とした陸上界を批判している。

原監督の功績は、何と言ってもこの旧態依然とした陸上界に風穴を開けたことだ。

指導者の過去の経験にのみに囚われ、科学的根拠のない非合理的なトレーニングがまかり通っていた長距離界に、科学的かつ合理的な「青トレ」などを提唱。

その手法を書籍などで公開し、常識を大きく変えた。


また、原監督がメディアに登場することで、視聴者は自然と「駅伝」を想起するようになる。このマーケティング効果も陸上界にとって非常に大きいだろう。

今後の狙いとしては、駅伝だけでなく、陸上競技全般のマーケティングにつなげることも視野に入れているのではないだろうか。

「出る杭は打たれる」を抹消するために

今回、原監督を擁護する内容の文章を書いているが、私は決して青山学院大学や原監督のまわし者ではない。

あえてこのような文章を書いているのは、「出る杭は打たれる」ことが、日本社会から根絶されるのを望むからだ。


日本から突き抜けた人材が育たない大きな要因の一つは、チャレンジして成功した者を妬み、叩き潰してしまうためだ。

そして、それを見た若い世代はますますチャレンジすることに億劫になる。

あらゆる識者も指摘する日本の課題。箱根駅伝でそれが浮き彫りにならないことを願うばかりだ。


原監督を叩こうとしている人に告ぐ。

彼が過去に築いた功績を踏まえ、健全な批判を展開して欲しい。

そして、束の間の休息を経て、次回の箱根に向けて走り出す選手たちに恥じない文章を書くべきではないだろうか。

(写真:山田 雄一朗)

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