Chat GPTと学ぶベンチャーキャピタル法務

この記事は法務系Advent Calendar2023のエントリーです。
前職でほんの少しだけご一緒した仲沢さんからバトンをいただきました!


ご挨拶

はじめまして。こんにちは。森と申します。
現在7年目の弁護士で、先月まではSaaS企業、今月からは宇宙スタートアップで法務を担当しております。いわゆるインハウスローヤーです。
また、昨年12月より株式会社ジェネシア・ベンチャーズという独立系シード・ベンチャーキャピタルでコンプライアンス業務を担当しております。

去年は法律書サブスクサービスについて記事を書きましたが、今年はベンチャーキャピタル法務について、Chat GPT(GPT-4)を活用しながらつらつら書いてみようと思います。

ベンチャーキャピタルとは

(ご存じの方も多いかと思いますが)ベンチャーキャピタル(以下「VC」)とは、高成長が見込まれる未上場企業(以下「スタートアップ」)に出資をして当該スタートアップの株式を取得し、将来的に当該スタートアップが株式を公開(上場)又は M&Aをした際に株式を売却することで、大きな値上がり益の獲得を目指す投資会社や投資ファンドのことを言います。

なお、GPT-4に「VCのビジネスモデル、ステークホルダーについて教えて」と聞いてみると以下のとおり回答してくれました(概ねその通りだなと思っており、改めて「GPT、すげえぇぇ」となっています)。

ビジネスモデル
1. 資金調達
:VCは、機関投資家、富裕層、ファンド・オブ・ファンズ、大学のエンドウメント基金などから資金を調達します。これらの出資者はLP(リミテッド・パートナー)と呼ばれ、ファンドの主要な出資者です。
2. 投資:調達した資金は、主に初期段階または成長段階のスタートアップ企業に投資されます。VCは、高いリスクを負いながらも高いリターンを期待して、これらの企業の株式を取得します。
3. バリュー・アップ:投資した企業の価値を高めるために、資金だけでなく、経営支援やネットワークの提供、戦略立案の支援などを行います。
4. エグジット:投資した企業が上場(IPO)したり、他の企業に買収されたりすることで、VCは株式を売却し利益を得ます。この利益は、LPへのリターンとして分配され、VC自体もマネジメント・フィーとキャリード・インタレストを通じて利益を得ます。

ステークホルダー
1. LP(リミテッド・パートナー):資金提供者であり、ファンドの成功によりリターンを得ます。
2. ポートフォリオ企業:VCから投資を受けるスタートアップや成長企業。これらの企業は資金だけでなく、ビジネスの知識やネットワークも得ます。
3. VCチーム:投資先の選定、デューデリジェンス、ポートフォリオ管理、エグジット戦略などを担当する専門家。
4. その他の投資家:同じ投資領域における他のVC、エンジェル投資家、ストラテジック投資家など。
5. 規制当局:投資活動を規制する政府や金融監督機関。

GPT-4

これまでやってきた業務の振り返り

ジェネシアでの業務を開始してからちょうど1年になるので、今年、自分がこれまでやってきた業務の一部を振り返ってみようと思います。

  • 規程類の整備

  • 社内勉強会の実施

  • 支援先向け勉強会の実施

  • 利用規約等の作成

ほかにも色々ありますが、上記のような感じでしょうか。

社内勉強会としては、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)が会員向けに発行している「JVCA Compliance Handbook」をベースに、メンバーが理解しておくべき重要論点について幅広く説明を行っています(金融商品取引法(適格機関投資家等特例業務、インサイダー取引)、犯罪収益移転防止法(マネーロンダリング)、利益相反管理、投資勧誘など)。
VCは金融業である以上、コンプライアンス担当だけでなく、一人ひとりのメンバーが上記について理解しておく必要があると強く感じています。

また、支援先向けの勉強会としては、ハラスメント等の一般的なもののほかに、法改正情報(例えば、今年10月1日に施行されたステマ規制)のポイントを整理し、短時間の勉強会を開催したりもしています。
後者は自分の思い付きで始めたのですが、法改正情報を勉強する良いきっかけになるので、今後も開催していきたいなと思っています。
(先月、日経新聞でこのような記事も出ており、ハンズオン支援の一環としてコンプライアンス面でのサポートを行うVCが増えつつあるようです)

そもそも「VCのコンプライアンス」って何?

「VCのコンプライアンスにおける重要イシューは何か?」
「どのような体制が必要か?」

ジェネシアに参画して以来、考え続けているのですが、なかなか上手く言語化できていないなと感じているところです。
なので、GPT-4に「VCのコンプライアンス体制の在り方、重要イシューについて教えて」と(今更ながら)聞いてみました。

コンプライアンスの観点からの重要イシュー
1. 利益相反の管理:投資決定において、利益相反の状況を避け、透明性を確保する。利益相反は、公正かつ倫理的な意思決定を損なう可能性があります。VCは多くの場合、異なるステークホルダー間で利益が衝突する状況に直面します。このため、利益相反を適切に管理し、透明な意思決定プロセスを確立することが不可欠です。
2. 適正な情報開示と透明性:投資家や市場に対して正確かつ透明な情報を提供することは、信頼の維持とリスク管理の観点から極めて重要です。情報の非開示や不正確な開示は、投資家の信頼を損ない、法的な問題を引き起こすリスクがあります。
3. マネーロンダリング防止:資金の出所を確認し、マネーロンダリング防止のための適切な措置を講じる。不正資金の流入を防ぐことは、国際的な規制遵守の重要な側面です。VCは、投資家と取引の適正性を確保し、関連する法律や規制を遵守するための厳格なプロセスを設ける必要があります。
4. データ保護とプライバシーの遵守:投資家やポートフォリオ企業の機密情報を保護するための適切なデータ管理とセキュリティ対策は不可欠です。データ漏洩は、法的責任の問題だけでなく、企業の評判を損なう可能性があります。
5. 規制当局への報告とコミュニケーション:必要な報告書の提出と、規制当局との適切なコミュニケーションを維持する。規制当局への適時かつ正確な報告は、透明性を保ち、規制違反のリスクを減らす上で重要です。これには、適切な監査、財務報告、およびその他の法的要件の遵守が含まれます。
6.サイバーセキュリティの強化:デジタル化の進展に伴い、サイバー攻撃やデータ侵害のリスクが高まっています。VCは、自身とポートフォリオ企業の両方に対する適切なサイバーセキュリティ対策を講じる必要があります。
7. ESG(環境・社会・ガバナンス)基準の統合:現代の投資家は、財務的なリターンだけでなく、環境や社会への影響も重視しています。ESG基準を投資プロセスに統合することは、長期的な価値創造と持続可能性の観点から重要です。

コンプライアンス体制の在り方

1. 明確なガイドラインとポリシーの策定:コンプライアンスに関する明確なポリシーと手続きを文書化し、従業員に周知する。
2. 継続的な教育とトレーニング:従業員に対して定期的なコンプライアンス関連のトレーニングを提供し、法令遵守の意識を高める。
3. リスク評価とモニタリング:定期的なリスク評価を行い、コンプライアンス関連のリスクを特定し、監視する。
4. 内部報告システムの整備:不正行為や違反を報告するための内部報告システムを設置し、匿名性を保証する。
5. 独立したコンプライアンス機能の設置:コンプライアンス部門を独立させ、適切な権限と資源を与える。
6. 関係者とのコミュニケーション:投資家、ポートフォリオ企業、規制当局との間で透明かつ効果的なコミュニケーションを維持する。
7. 継続的な改善とアップデート:コンプライアンス体制を定期的に見直し、最新の法令や市場の変化に適応させる。

GPT-4

…なるほど。重要イシュー、コンプライアンス体制、いずれも違和感なく、改めてGPT-4すごいなと感じています(勉強になるな…)。

できているところもあれば、まだまだなところもあるなと感じており、特に重要イシューの「7. ESG(環境・社会・ガバナンス)基準の統合」は頭になかったので、来年以降しっかり取り組んでいきたいなと思っています。
(ジェネシアは支援先スタートアップのESG支援にも力を入れているので、やらねば)


ということで(GPT-4の力を借りながら)つらつら書いてきました。
これからもVCのコンプライアンスについて考え、折を見て発信をしていきたいなと思っているので、VC関係者の皆さま、フィードバックをいただけますと幸甚です。

Advent Calendarも終盤ですね。明日はTomoya Sakaiさんの記事をお楽しみください!


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