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波多野澄雄・赤木完爾・川島真・戸部良一・松元崇・兼原信克『決定版・大東亜戦争(上・下)』(新潮新書)

最強のドリームチームによる『決定版大東亜戦争』。私がご指導を頂いた方ばかり。


戸部先生、赤木先生、波多野先生、庄司先生の三先生は、それぞれ防大教授、そして防衛研究所研究官を務め、防衛省内で膨大な軍事史関連資料を読まれた専門家であり、軍事史学会で会長職などを務めた権威。


大変な量の軍事史資料がありながらも、日本の歴史学の世界ではなかなか、軍事史的な戦争史および軍事史研究(歴史学の世界では、社会史的な戦争史研究はありますが)は市民権を得ずに、防研系の歴史家によって研究がなされてきました。


そして、中国近代史のトップランナーの川島真さんと、歴史書を書き、歴史を愛しまた歴史家に敬意を示してこれた官僚トップの、兼原信克元内閣副官房長官補と、松元崇元内閣府事務次官。歴史を学ばず、歴史家や歴史研究にも敬意を示したり、価値を感じない方が圧倒的に多い中で、官僚として頂点を極めてかつ、余暇に歴史書を読むことをやめないお二人の方々が、現代的な問題意識を失わずに歴史を論じることはとても価値があります。


こういった方々の歴史研究の成果は、なかなか歴史学の世界では省みられず、十分に参照されることもなかったような気もします。マルクス主義や、階級闘争史観、あるいは庶民や民衆の視点から権力を批判することが自明とされてきた歴史学の学界とは距離を置き、むしろ徹底的に資料や事実を追及して、イデオロギーを排した歴史研究の成果を刊行する価値はとても大きく、また多くの方にお読み頂きたいと思っております。

(2021年7月16日記)

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