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2024年の年頭のご挨拶

新年、明けましておめでとうございます。2024年となりました。今年が、昨年よりも、良い一年となるよう願っております。

2023年は、世界では二つの戦争が同時に進行するという、奇妙で不幸な空気に包まれていました。とりわけ、国際政治学者として、どのようにしたら平和が実現するのか、そしてどのようにしたら戦争を回避できるのか、ということをこれま歴史的な視座から考えてきたことからも、独特な無力感を抱いておりました。冷戦終結時の独特な明るさと進歩を感じ覚えている世代ということもあり、戦争と対立が支配する時代の到来を、理不尽なものと感じています。まるで、フロイトが世紀転換期のウィーンで精神分析の視座から暗い時代を感じとり、またカフカが文学を通じて不条理さを描いていた時代が再現されるかのように、重く暗い雰囲気が世界を覆っているように思えます。

フロイトとカフカが漠然とした不安と理不尽さを感じたその後の世界は、2度の世界戦争を経験しました。

私は、人類が一世紀の時を経て、多くの教訓を学び、同じような過ちを繰り返さないと信じています。これから世界が、大国間の戦争の時代に突入すれば、その人的および物的な被害は想像を絶するものとなります。とはいえ、世界中で民主主義の後退が見られ、SNSでは荒んだ醜い言葉が溢れ、人々の対立や摩擦、喧騒ばかりが目についてしまいます。果たしてそれが、私がそのような側面ばかりを見ているからなのか、あるいは歴史の歯車がおかしな方向へと回転し始めたのからなのか、前者であることを願っています。

私自身、研究は滞り、事務的な対応の遅れで多くの方々にご迷惑をおかけし、自分自身でタイムマネージメントがうまくいかずに思い通りにいかないことの多い一年でした。これからは、少しでもそのようなご迷惑をおかけせぬよう、よりいっそうの努力をします。同時に、世界が混迷の時代に入り、新しい事態が次々と起こる中で、従来の想定や認識を大きく改めねばならないような思考が必要となっていると感じています。しかしながら、そのような時代にこそ、巨視的な、歴史的視座から現在を見つめ直し、それを相対化して、一つ一つの出来事の意味をより深く理解して、適切に解説ができるように努力したいとも思っています。それが、歴史的な視座から国際政治を学ぶ立場にある研究者としての使命だと考えています。

今年もよりいっそう、多くの方々のお力添えを頂き、お仕事をご一緒できればとも願っています。そのような中から、ささやかな喜びを感じ、新しい発見を得て、知的刺激を得続けたいと考えている次第です。どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。


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