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年の瀬に激動の2022年を振り返って

コロナ禍でオミクロン株が広がる中で、さらに2月にはウクライナでの戦争が勃発したこの1年間。

1年前の私は、イギリスのケンブリッジ大学で在外研究中。この1年間で、アイルランド、ギリシャ、アメリカ(ワシントンDC)、ポーランド、スペイン、チェコ、アメリカ(ロサンゼルス)、ブリュッセル、そしてアラブ首長国連合と、コロナで様々な制約や、戦争および原油価格高騰、労働者不足などからの、航空会社と空港の混乱を経験しながらも、数多くの海外出張と、対面での国際会議への参加がありました。世界で多くの旧友と会えたことは最良の喜びです。

ケンブリッジ大学ダウニング・カレッジにて

マドリードNATO首脳会議で、目の前で「新戦略概念」が採択される様子を眺め、またブリンケン国務長官やトラス外相の演説を目にしたり、ディッチリー財団の年次会合でトニー・ブレア首相と立ち話をする幸運に恵まれたりと、国際政治学者として動きつつある国際情勢の鼓動を感じられることもできました。他方で、戦争が人心を醜いものに変えて、日本国内でもネット空間などでは激しい言葉が飛び交う姿を目にして、何度と
なく寂しい気持ちにもなりました。

こちらがそのNATO Public Forum 2022
ウクライナ市長の兄弟。元ボクシング王者。
女性のみの政治指導者のセッションという、NATOならではの風景。


ヨーロッパ国際政治史を研究してきて、今回のウクライナでの戦争を歴史的な視座から論じ、その意味を論評する必要も感じて、メディアやSNSなどでも発信しました。ところがかつてない程の激しい批判や中傷を浴びて、それらの「世論」の空間もまた、「戦場」となっていることを実感しました。

こちらはBSテレビ東京の日曜サロンにて。日経新聞の高名な政治記者、芹川陽一さんと。

そのような動揺する国際政治を眺め、慌ただしい一年を締めくくるためにも、現在は毎年恒例にもなりつつありますが、某出版社の宿泊施設に泊まらせていただき、歴史を著述する作業の中で深く沈思する幸福を味わっています。まるで山頂から平原を俯瞰するような、過去の歴史を展望する機会を得ることは私にとって国際政治学者として最も幸せな時間であり、最も重要な時間です。新しい一冊の夏の刊行を目指して努力しています(他の単著と編著、監訳も当然ながら)。

1年間での在外研究と、コロナ禍でのオンラインと対面での作業の混乱を経験して、9月に帰国後は多くの事務作業が停滞し、メールでの返信も遅れ、しばしば失礼な対応をしてしまったことを反省しています。どうかご容赦をいただければ幸いです。

新年が明けても、おそらく戦争は続き、国家間の対立は残り、人々の心情も荒んだままになるかもしれません。それらに加えて、経済もはたして順調に好転していくのか、不安も漂います。ただし、数十年、数百年という長い歴史的な視座から、人々がより良い世界、より良い生活のために闘ってきて、勝利を得てきたことを感じながら、わずかな希望をまた感じています。それが、歴史を学ぶ意義であり、喜びでもあります。


ブリュッセル出張時に歩いて散歩をしたグランプラス。

学生時代から現在まで、外交史的な視座から現代の国際政治を学び、論じることに、一抹の不安も疑念も感じたことはありません。むしろ、そのような営みを30年ほど続ける中で、これまで以上に、国際政治を学び論じる上での、その外交史的な方法論の意義への自信を強く感じ、またそれを社会で実践しているつもりです。まだまだ自らの力に不足があることは十分に承知していますが、それでもこの世界に来たからには、自らの望むこと、そして社会や学生に求められることを行い、どのような批判や中傷を受けても自らの信じる学問を続け、それを文章に綴っていく信念です。それが日本語のこともあれば、英語のこともある。専門家向けのこともあれば、一般向けのこともある。

アブダビで、日頃からお世話になっている親しい方々との嬉しい集結。

それぞれが自らの信じる方向へと、学問の成果を活用し、発信していくことが重要なのではないでしょうか。

そのようなことを考えながら、今、激動の2022年を回顧して、自らの来たりし道を振り返り、新年を迎える心の準備をしたいと思っております。


4年ほど前に、ウクライナで英語放送のテレビに出演した際の写真です。

本年も多くの方に支えられ、助けられ、ご指導をいただきました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

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