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Jully との一期一会と僕らの旅

昨日は移動日でした。
ジュリーという不思議な女性と出会った。

人はなぜ生きて行くのか。
時に理不尽な出来事に心を痛めたり、
根源的な悪と対峙することを余儀なくされたり、
不運としか言いようのないような場面を
切り抜けて行かなければならない。

ジュリーは飛行機に遅れてやってきた。
正確には時間内なんだけど、我々はzone1という1番最初に搭乗すべき順番にも関わらずだいぶ後のタイミングで乗ってきた。

僕は窓側席に座っていて、
通路側にはボビーオロゴンみたいな黒人男性が座っていた。 

彼女は自分の席に少し面食らっていたように思えるが、
取っ手がなかなか収納出来ない機内持ち込みサイズのスーツケースをガチャガチャやって、なんとか頭上に締まって我々の間に座った。

おそらく、旅慣れていない。
zone1の間席は1番最後に埋まる。
値段が割高な割には、人気のない席だからだ。
急遽決まった旅なのか購入が遅れていたのかもしれない。

彼女はボビーオロゴンにこのチケットはこのフライトで合っているかというような意図の質問をした。
ボビーはろくにチケットをみる素振りもなく、関心がなさそうに、
お、おう。
と返した。

僕はやることがなかったので、
身体を休めることにした。


ひと眠りして目を覚ますと
綺麗な青空が窓から見えてみとれていた。

写真におさめて眺めていると、
ひらひらと手が視界に入ってきた。


こんな声のかけられ方初めてかもしれない。

振り向くと、
中国語で話しかけられた。

中国語を話しません。  
と僕が答えると、頑張って英語を喋ろうとしていた。
彼女はGoogle翻訳を使おうとしたけど、
空の上では使えなかった。

「ゆっくり落ち着いて話してみて。大丈夫だから。」

そう手を差し伸べると、
彼女は携帯電話を指さして、窓の外を指さした。
どうやら彼女は空の写真を撮りたいようだった。

オーケー、わかりました。
手伝ってあげる。

僕は彼女から携帯を受け取り、何枚か空の写真を撮った。

なれないカメラのせいか、
流れる景色のせいか、
あんまり上手く撮れなかったけど、
彼女は満足そうにしていた。

それからお互い手持ち無沙汰なので
ぽつりぽつりと話し出した。

思っていたより、意外とコミュニケーションが取れる
もちろん不完全な情報もあるけど

ジュリーはMRTの路線図をずっと眺めている

僕がどこへ行くのと尋ねると、
画像をみせてくれてToa Payoh という中央部の街付近へ行くらしい。

しかし、空港からは2回ほど乗り換えて大回りしないとならない、アクセスの良いとは言えない地区だった。

何だったら、車で送ってあげようか?
ひとり旅なんでしょう? 

旅は道連れ。
僕の事務所は南部にあるけれど、中央部から回って行けなくはない。 大した迂回ではない。
何より見ていて心配になる。この人絶対道に迷う。

ジュリー) いやいや、それは悪いです。
お金を払いましょうか? 

ゆう) いやそういうつもりじゃないです。

ジュリー) わかりました。
ちょっと考えさせてください。

ゆう) OK. もちろんMRTに乗りたかったら言ってください。
それもいい旅の経験になると思います。

飛行機が着陸する前に、
ジュリーはお願いしてもいいですか、
と僕へ信頼の意思を見せてくれた。

飛行機が着陸すると早速彼女はやっちまった!みたいな仕草

インターネットが使えない…と

国際SIMカードを用意していなかったらしい。

まぁ大丈夫かなとジュリー。

大丈夫じゃないよ、あなた

友人の家へ行くと言っていたけど、
サプライズで空港まで迎えにきていたらどうするの
しかもGoogle Map 無しでMRTは難しいだろう

僕は自分のホットスポットを開放してwifiを分けてあげました。
やれやれ。



そうこうしていると、入国ゲートが。

通過前に彼女は僕に聞く。
パスポートがあればいけるよね?

…知らんよー笑
たぶん無理よ。
あなた中国国籍でしょう?
まぁ、あなた中国語喋れるからなんとかなるよ


やっぱり、案の定彼女は別レーンの有人対応レーンへ連れて行かれる。シンガポールはだいたいの国からの訪問者は自動ゲートで通過出来るが、事前準備などやるべきことが漏れていると有人対応レーンで済ますことになる。

20〜30分苦戦してようやく入国。

彼女はさすがに少し疲れた顔

僕は労いの言葉をかけた。
飛行機が予定より早く着陸したからブラマイゼロじゃない?

お腹空いてない? 大丈夫
お手洗いは? 行っておきます

僕は水を差し入れた。
320円。。全然いいんだけど、
マレーシアは60-100円くらいで買える
物価高はもう誰にも止められない。
でもキヨスクの店員さんがすごく感じ良くて、
高級ラウンジにいるみたいだった。


配車アプリのGrabで車を呼んでいる時に、
彼女に僕はこう語りかけた。

僕の義理のお父さん、つまり奥さんのお父さんね。
彼は上海で重要な仕事をたったひとりでやっている。
もちろんたくさんのスタッフの人が彼を支えているよ。
でも家族がいなくて単身赴任でひとりぼっちという意味ね。
彼は英語も中国語も喋らない。
仕事は通訳者と一緒に出来ると思うけど、
週末とかはきっととても不便だと思うんだ。

もちろん上海は大都会で退屈なんてしない街だということを僕は知っているよ。お義父さんもその点は楽しんでいると思う。でも言語的に大変なことには変わりない。きっと彼は周りの人にたくさん助けてもらっていると思う。

だからさ、あなたは遠慮なんていらないんですよ。
僕はあなたの母国でお世話になっている義父の恩をこうやって返しているだけです。あと今まで僕がたくさんの人から受けた恩を少しだけ、ほんのすこしだけ、あなたに返しています。

そうして僕らはGrabへ乗り込んでジュリーの話を聞いた。

ジュリーは私の英語は拙いけど、、
そう言いながら身の上話を聞かせてくれた。

ジュリーは数年前に癌を患い、このままだとあと3年しか生きられないと医者に言われ、手術をした。いまはこうして元気に旅をしている。20年以上続けた仕事をやめて1年前に中国から出てきた。(たぶんマレーシアで何かしているんだろう)
もう仕事はつかれてしまいました。
もっと英語を上手く喋りたい。

そう打ち明けてくれた。
僕の母親は僕が大学生の頃、乳がんから抗がん剤治療で回復した。
僕が尊敬する先輩もガンからのサバイバー。
親近感が湧く。

ジュリーの行動力、そのパワーの裏にある人生の物語。
一期一会。

僕らは連絡先を交換して、車は無事目的地へ到着。
彼女はホッとしたのかとびきりの笑顔を見せてくれた。


僕はちょっと遠回りしたけれど、事務所に着いて日常へ戻る。
急ぐ旅じゃないから大丈夫。


僕らはかけがえのない1日1日を生きている。
誰かが生きたくても生きられなかった今日を生きている。 

もしあなたが、そのことを忘れているくらい急いでいるなら、
こう自分に語りかけてあげてください。

僕らの旅は、急ぐ旅じゃあないから、何があっても大丈夫だよ。





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