嘘みたいな話
これは僕が体験した嘘みたいな本当の話です。
僕は混ぜられない、分かり合えないと諦めていた自分の中にいる対極のふたりの自分が混ざっていくような感覚を掴みました。まるでそれは新しい世界への扉が開く時のような。
ある8月の夜に、前もって1ヶ月前から約束をして会食する話をしていたんです。 仕事を通じて出来たお友達。共通の友人も含めて。
お2人とも大切な友人で、それまでは個別にお付き合いがあり、今回の会食で一緒に時間を過ごせることを楽しみにしていました。
すると、幹事の方から連絡があり、同日にクルージングに誘われたので皆さんも良かったらどうですかとお誘いが。
内心はちょっとがっかりしました。
だって、見知った方と落ち着いてお話が出来ると思っていたので。
しかし、話を聞くと、約束していた方は以前からシンガポール沖のクルージングに興味があり、時間に余裕があるこの時期に折角の機会だから参加してみたいと。
そのサービスは経費的に貸し切るには10人の参加者が必要。
確かに、クルージングに興味がある知り合いを10人集めて調整するなんて、なかなかに出来ることではないと思います。
ふたつ返事で行きますと返信をした。
当日、コロナ前ならいざ知らず、
他の人の企画で慣れない場所で過半数以上が初対面の人という環境は本当に久しぶりで、正直終わった後にとても疲れました。
でも、良い交流が出来て、
楽しい時間を過ごせて、滅多に見ることのない景色が見れて、
やっぱり誘いに乗って良かったなと思いました。
嬉しい偶然もあり、勉強になることも、ちょっと上手くいかなかったことも。
お盆シーズンも平日のように過ごしますが、
特別な体験を味わえて満足でした。
軽く振り返り
僕ら3人が待ち合わせのロビーで落ち合った時にはあいにくの雨で、天気が心配なままヨットクラブへ。
日本人のガイドさんが案内してくれ、
乗船時間には雨がすっかり上がってナイトクルージングが始まりました。
メンバーの半分の方は初対面でドキドキしながら名刺を交換したり、近況を話したり、半年以内に来たばかりの方が3名いて盛り上がりました。
こういうの、だいぶ大丈夫になってきたし、楽しめるようになってきたなと実感出来ました。社交の場って言うんですかね。まだまだ自然にふさわしく振る舞えているか自信はないですが。
全体の幹事の方が軽食や飲み物を自分で用意してくださり、
参加費用がとてもお得になりました。感謝しかないです。
まずは沖にある無人島を目指して30分くらい移動します。
船上は揺れるので気を付けながら交流タイム。
懐かしい人と再会したり、新しく来た人の話を聞いたり。
沖に出るとエンジンを切り、プカプカ浮かびます。
これがお酒の力もあり三半規管にきます。
乗り物酔いの経験がある人は確実に酔い止めが必須。
次はあらかじめ飲んでおこうと思いました。
僕は二階の見晴らしの良い場所に通してもらったので、
ラッキーと思いましたが、二階は思った以上に揺れて。
思った以上に酔いました。
乗り物に酔ったのか、お酒に酔ったのか、雰囲気に酔ったのか。
一緒に行った知り合いとは同じテーブルで1時間くらいまとまった時間を3人で過ごし、近況交換が出来て満足。
ご飯を食べてひと通りお話したら一階へ退散。
酔いを覚まして、景色を見ていると、
スピーカーのBGMから聴き慣れたイントロが。
FishmansのWeather Reportが…
今夜この場所、Night Cruising じゃないんかいとズッコケそうになりました
次の曲はちゃんと Night Cruising でした…
まさか、実際にナイトクルージングをしながらナイトクルージングを聴く人生があるなんて、全く想像が出来ませんでした。
やっぱり音楽は自分にとって大切なものだと、
改めて気が付きました。
周りの人にとってはただの知らないBGM。
でも僕にとっては、なんとも言えない瞬間でした。
分かり合えないと諦めていた自分の中にいる対極のふたりの自分が混ざっていくような感覚を掴みました。まるでそれは新しい世界への扉が開く時のような。
外向的な人が集まる社交の場に参加するのが好きな自分と、
内向的な音楽をひとりで聴くのが好きな自分。
そのどちらも私。
どちらかが欠けてもバランスが崩れる。
酔いが落ち着いて来たらいつの間にかカラオケ大会が始まっていて、不思議な環境で揺れながら歌いましたw
沖を出発したら揺れにもなれてきて、
帰りはあっという間に時間が過ぎて、
クルージングは無事に終了してつつがなく解散。
その夜は外向が過ぎたので、バランスを取ってその後内向的になります。行ったり来たりして安定が取れたら理想的。
そんな嘘みたいな本当にあった夜の話でした。