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ゆういちの一生 第25話「魔法みたいだったのに。」

ゆういち25歳。

ゆういち25歳。
ワゴンDJのお仕事を続けていました。

札幌でワゴンDJ。

札幌によく呼んでもらえていました。
時には、一か月ほど滞在することもあります。
仕事は週末だけのことが多いのですが、
飛行機で行って帰ってするよりは、
ずっとホテルに滞在する方が安いのでしょう。

ナメタケさん。

その頃、札幌の支店長になったナメタケさんという人がいました。
同じホテルになると、部屋に呼び出されます。
元ホストらしく、初めの頃は、自分のホストの頃の自慢話や、
ワゴンDJでの自慢話を聞かされました。
そのうち、だんだん説教をされるようになってきました。

たぶんナメタケさんは尊敬されたかったんだと思います。
しかし、僕は、尊敬できると思った人しか尊敬できないし、
そういう目で見れません。

それに腹を立てたのか、
ナメタケさんがいろんなところで僕の陰口を言っていると、
他のスタッフさんから聞きました。
「俺が殴ったら、仲野が5メートル吹っ飛んだ。」
だそうです。
子どもみたいな人です。

ある日、ナメタケさんと電話で話してて腹が立ったので、
札幌の事務所に行って話すことにしました。
事務所のあるマンションの前まで来ましたが、
ナメタケさんは部屋番号を明かさず、
部屋には行けませんでした。

剃り残しあるよ。仲野くんも完璧じゃないんだね。

その頃、化粧品会社の方では、
化粧品部門と日用品部門が分かれて別会社になるという動きがありました。

僕たちのプロダクションに依頼しているのは日用品の会社側になりました。
日用品側の会社に呼ばれ、その話をされ、しっかり売ってくださいと言われました。

しかし、現場は以前と同じ。
化粧品と日用品が混在しています。
そして販売するのは化粧品側の美容部員です。

ある日のこと、美容部員に働いてもらうために、
日用品も化粧品も同じように売ることにしました。

いつも仕事をしない美容部員さんはその日は機嫌が良いみたいです。

僕があごの下にひげの剃り残しがあるのを見つけて、僕に言いました。

「剃り残しあるよ。仲野くんも完璧じゃないんだね。」

ひげの剃り残しくらいします!
でも、その時は、それすら許さないような完璧な人物だと思われていたのでしょう。
自分としては力が全く足りないため、自分に厳しくがんばっていたつもりです。

それと同じような厳しさを他人にも求めていたのですね。
だから

「プロのくせに人に機嫌取ってもらわなきゃ仕事もできないんですか?」

と言ってしまう。

その日は、現場の雰囲気を優先してやったのですが、
結局、日用品の売り上げの方が悪かったです。
同じくらいに売れたように見えて、日用品の方が単価が安い。
そして、美容部員は化粧品しか売らない。

日用品の会社の人が来てそれでは困ると言われ、
次の日それを美容部員に話すと、
また美容部員は仕事をしなくなる。

そうやって美容部員や日用品の会社と揉めるようになりました。

魔法みたいだったのに。

ワゴンDJとアシスタントの組み合わせで現場に入ることが多いのですが、
ある日、事務所から女の子のスタッフがアシスタントで入りました。
きれいな子で前向きに良く働きます。

その日も、美容部員ともめ、売り上げも上がりませんでした。

帰りにそのアシスタントの子とご飯を食べました。
仕事が上手くいかなかった暗い空気の中。
その子は言いました。

「魔法みたいだったのに。」

ん?
なんの話?

その子は、以前、携帯用のウォシュレットを販売していて、
僕がチラシ配りを手伝った子だったのです。(23話参照)

「チラシはどうせどこかに投げる(北海道の方言で捨てる)かと思ったら、ほんとに配ってて、人がたくさん集まってきてびっくりした。どんな方法で集めているのか気になって、売り場を見に行ったら、人がどこからともなく集まって買っていって、すごかったし、魔法みたいだった。」

とのこと。
そして、その子はそれまで全く契約取れなかったのに、
その日、人がたくさん集まってきたことで一台契約が取れたとのこと。
それを社長に話したらお礼をした方がいいということで、
僕の名刺に書かれた住所にカニを送ったんだけど
届かず戻ってきたらしい。

で、その僕の魔法みたいな仕事に魅かれて、
うちのプロダクションの札幌支店に入ってスタッフをやっているとのこと。

以前は魔法みたいだったのに、
今の僕は、
ナメタケさんには陰口広められるわ、
美容部員や会社ともめるわ、
人集まらないわ、
売れないわ。
がっかりでしょうね。

ただ、あの時仲良くなりたかったのに、なれなかったので、
これをきっかけに仲良くなったのかというと…。

札幌支店にいるということはナメタケさんとのつながりがあって、
どんな陰口につながるか分からない。
そう思い、僕は彼女と距離を取りました。

そんなことが続いたのもあるし、
このお仕事自体の寿命も感じ、
ワゴンDJのお仕事はやめることにしました。

イベント会社はというと…?

また、イベント会社の方はというと、
当初は女性ばかりで気楽に働けていたのですが、
だんだん陰口に悩まされるようになってきました。

トイレ長くない?

ある日、「トイレ長くない?トイレで何してるの?」と聞かれ、
普通に用を足したり、鼻をかんだりしていると答えると、
トイレで寝てるんじゃないかって陰で話しているとのこと。
なぜかと言うと、前にいた男性スタッフがトイレで寝ていたからとのこと。
共通点は男性だけ!
何を基準にトイレの長さを決めたかも疑問。
何分以上が長いのでしょう?

だから汚いって言われるんだよ。

登録しているキャンペーンガールに電話をかけようとして、
間違えてスタッフさんのポケベルを鳴らしてしまったことがありました。
その時すぐ謝ればよかったのですが、何か言われるのが怖くて黙っていると

「今ポケベル鳴らした?」
「…はい」
「だから汚いって言われるんだよ。」

汚い?
陰でそう言われているみたいです。

ただ、僕も悪いところがあって、
陰口言われるのがイヤなので関わりを最小限にしていたことも、
陰口言われる原因だったのでしょう。
適度に世間話に付き合う必要があったと思います。

イベント会社もやめることにしました。

米米クラブはというと?

米米の方はというと、米米CLUBは解散することになり、
最後のライブは東京ドームです。

トイレでコスプレに着替えていると、
なにやらコスプレ衣裳を着てモジモジしている男子がいます。
阿里香くんです。
コスプレをしていこうか迷っているとのこと。

「今回しか機会がないんだからやろう!」

と言ってみんながいるところへ連れてってあげました。
その時のことをありがたかったと、後から伝えてくれました。
誰かのきっかけになれたのであれば嬉しいことです。

そうして、米米CLUBのコスプレも終了。

そうして、魔法のような時間は終わっていったのでした。


今日はここまで。
お読みいただきありがとうございました!

続くよー。


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