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 誰に頼まれているわけでもないけど自分が話し相手になるのだというほんの少しの義務感と、向こうの状況を知って眠る前に漠然と無限に膨れ上がる不安が少しでも大人しくしていてくれるよう、安心したい、ために両親に電話をする。自分がそうであるように、父も母もまた、娘に対してかける電話はそうだったのかもしれないなとシャワーを浴びながら思う。
 「本屋さんで『おじいちゃんのくしゃみ』をみると結のおかげでじいちゃんが生きているっている感じがするよ」と父が言う。その声色から表情や感情を想像しほんの数秒間の自己満足に浸る。
 今日こうして話したことも忘れてまた明日にでも父は本屋へ出向きわたしの本のある場所へ行く。そして死んだ自分の父親の姿を想い娘のことを思う、だろうきっと。
 その全部がこれからの日々も父の心を明るくてらしあたためてくれたらいいなと願う。