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 『おじいちゃんのくしゃみ』4刷りの知らせがあった。
 物価の高騰かさむ生活費保険料の値上がりその他もろもろ、要領の悪い頭でやりくりを悩む、そんな中での重版の知らせに生活についてのわずかな安堵、そのあとに静かなよろこびが込み上げる。未来の収入が確定し、衝動的に何かを買いたくなってパソコンで靴や洋服などを雑に眺める、それに疲れてぼんやりし始めたところで手を止める。
 父に電話をかける。父の母、祖母が電話でいつもそうだったように、父もまた必ずにわたしの体調を気遣う言葉をかける、この前電話したばかりなのに。
 「次の絵本もめっちゃいいものができるから楽しみにしてて、見せたいからさ、だからお父さんもお母さんもからだに気をつけててよ」
こちらはいつも自分勝手な言葉を投げる。
 「ありがとうね。楽しみにしてるからね」
ほんとうにそう思っている、のがわかる言葉が返ってきてそれを無防備に受け取りびっくりして電話を切った後で泣く。
 そういう言葉を受け取った経験は何度かあって、本当に目立たずにささやかな言葉のやりとりだけれどそれは自分の中にとどまっていてこれからもそうであり、今日のこともまた、その経験の一つとなる。