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【本要約】「分かりやすい説明」の技術最強のプレゼンテーション15のルール

レビュー

あなたが今日、誰かに対して行った説明は、「分かりやすい説明」だっただろうか。あなたの言葉は正確に相手に伝わっただろうか。もしかしたら、意図したことが伝わってなかったり、誤解を招いたり、自分は何て話下手なんだろう…と思い悩んだりしていないだろうか。要約者には、このような悩みが尽きず、うまく説明できず困ることが多々あった。本書は、要約者のような説明下手な人のための本である。



著者の部下は、声は小さく口調は棒読み。非常に説明下手であった。しかし、本書で紹介する基本の説明術をアドバイスされただけで、見違えるようにプレゼンテーションが巧くなったという。説明術とは、能力に関わらず誰でも習得できるもので、けっしてむずかしくはない。そんな『「分かりやすい説明」の技術』にまつわる15のルールが、著者の藤沢晃治氏によって「分かりやすく」まとめられている。





本書の要点



要点1

「分かる」という言葉を、本書では「話し手の意図を正しく理解すること」と定義する。私たちの脳内には「脳内整理棚」という、郵便物仕分け棚のようなものが存在する。ちょうど郵便物がどの都道府県、市町村宛てかが明確になるように、話し手の意図が、「この情報はこの意味だな」と脳内整理棚に収納されたとき、「分かった」ことになる。



要点2

「説明」とは、一種のサービスである。レストランで食材を調理せずにお客様に出すことはサービスではない。レストランは「調理の代行」というサービスをお客様に提供する。同様に、説明者が情報をただ聞き手に与えることは「説明」ではなく「通知」だ。説明者が聞き手に負担がかからないよう、「情報処理の代行」というサービスを聞き手に提供することが「分かりやすい説明」である。





「分かる」とはどういうことか?



本書は、『「分かる」とはどういうことか?』について、わざわざ一章を設けて丁寧に解説している。私たちは、何をもって「分かった」と判断しているのだろう。結論から言えば、「分かりやすい説明」とは、「短期記憶(脳内関所)を通過し、長期記憶(脳内整理棚)に残りやすい説明」のことだ。短期記憶とは、聞いたばかりの電話番号を、メモしないでも一時的に思えていられるような記憶のことを言う。一方、長期記憶とは、卒業した学校の名前をほぼ永遠に覚えていられるような記憶のことである。尚、「脳内関所」および「脳内整理棚」は筆者の造語である。



「分かりやすい説明」とは、脳内関所での作業負担が軽い説明である。脳内関所では、この情報は一度に処理できるだろうか?どこに情報を送ろうか?ムダを省いて整理できないか?といった処理作業が行われる。「説明」とは、それら煩雑な作業を事前に代行処理する一種のサービスといえる。サービスである以上、聞き手は「お客様」だと考える。説明者は聞き手が「快適」であるかどうか、常に注意を払う必要がある。





聞き手の準備が完了してから情報を送る



ここからは、説明のための技術を紹介していく。

聞き手の脳が説明内容を処理しようと準備する前に説明してしまうと、それは下手な説明となる。私たちの脳内関所では、情報をどの脳内整理棚に収納するために一定の時間がかかる。ある郵便物を、「これは東日本だな」「東日本の中の東京都だな」「東京都の中の千代田区だな」と絞っていくように、聞き手は脳内整理棚の選定作業に時間をかけている。その間は、「待つ」あるいは「選定作業を助けてあげる」ことができなければならない。聞き手の準備が整うまでは、ゆっくり話すなどして、聞き手が準備完了するまで待とう。





要点を先に言う



「概要をまず話せ」というのは説明術の基本中の基本だ。聞き手がまず最初に必要とするのは、情報の概要であって詳細ではない。郵便物を仕分ける際に、いきなり「丸の内」と言っても正しく仕分けされないだろう。あなたは「丸の内と言えば東京都の千代田区に決まっている」と思っていたとしても、日本全国に「丸の内」という地名は37もあるのだ。たとえあなたにとっては当然過ぎて、ついつい省略しがちなことであっても、概要を丁寧にゆっくりと説明することは、脳内整理棚選定作業を助ける最強の手段だ。





情報の構造を明らかにする



説明には、情報をただ与えるだけではなく、情報を事前に整理、加工して聞き手に渡すという意識が不可欠だ。情報が脳内関所から脳内整理棚へ移行されたとき、その情報には「構造の単純化」がなされている。よって、話し手は初めから「構造の単純化」の作業を事前代行しておけば、聞き手にとって「分かりやすい説明」となるのだ。具体的な構造の単純化には、「重複やムダを整理する」ことが挙げられる。



重複、ムダのある説明とは、次のようなものである。

 「わが社には、これまでに、まず、英語から日本語への自動翻訳、そして次に、ドイツ語から日本語への自動翻訳、そして最後に、中国語から日本語への自動翻訳ソフトの開発、販売の実績があります。」

この文章の重複、ムダを削れば、次のようになる。

 「わが社には、外国語から日本語への自動翻訳ソフトの開発、販売の実績があります。これまでに、英語、ドイツ語、中国語に対応してきました。」



構造の単純化には、「一文の長さを短くする」ことも必要だ。なぜなら、各文を短くすることによって、「主語と動詞」、「修飾語と被修飾語」等の関係が単純明快となり、誤解の入り込む余地が無くなるからだ。



次の説明は、一文が長くなりすぎ、どの主語とどの動詞が対になるのかがわかりづらい。

 「オリゴ糖は小腸で消化されず大腸にて若さを保つ善玉菌(ビフィズス菌)を増殖し老化を促進する悪玉菌を抑制する役目をします。」

この文を、一文を短く整理したのが次のものである。

 「オリゴ糖は小腸で消化されず大腸にまで届きます。大腸には、人体の若さを保つ善玉菌(ビフィズス菌)と人体の老化を促進する悪玉菌がいます・オリゴ糖は善玉菌を増殖し、悪玉菌を抑制します。」





比喩を使う



分かりやすい説明に、比喩は欠かせない。比喩とは、一見まったく異なる事柄を「この情報は、本質においては、過去の“あの例”と同じですよ」と示すことだ。比喩により、情報を脳内整理棚のどの意味別区画に収納するかを初めから指示してもらい、脳内の仕分け作業が早くなるので「すぐに分かる」「よく分かる」につながるのだ。



比喩が上手い人は、自分が説明したい核心と同じ核心を持つ有名な話、歴史上の話、ことわざを思いつくことができる人だ。有名なやさしい格言を、比喩のデータベースとして持っておくと良い。「いわゆる、二兎を追う者は一兎をも得ず、となります」「井の中のカワズ大海を知らず、のように……」というだけで、説明の意図がすぐに聞き手に正確に伝わる。比喩上手は、説明上手である。





聞き手に合わせた説明をする



「説明」は、「靴」に置き換えて考えることができる。どんなに素材がよい靴でも、誰にでも合うわけではない。靴は、そのサイズに合う人のためのものだ。同様に、どんな立派な説明も、すべての聞き手を満足させることはできない。



またサイズを考えずに靴を作るのがバカげているように、誰が聞き手かを考えずに説明することもバカげている。逆に言えば「誰に」説明するのかを考え、相手によって説明の仕方は変えよ、ということである。聞き手の人物像を、たとえば「主婦層」「新人OL」「中年サラリーマン」「インターネット歴三年以上」などと想定し、それに応じた説明のシナリオを作るのは当然のことだ。



事前に説明相手の人物像を想定することには、さらにメリットがある。それは、その想定した聞き手層に分かりやすいかどうかという明確な基準で点検作業ができるからだ。たとえば聞き手を「主婦」かつ「インターネット未経験者」と定義したとする。その場合、説明に「ダウンロード」という用語を使う必要があった場合、「ちょっと待てよ、『主婦』かつ『インターネット未経験者』には、『ダウンロード』という言葉の意味を最初に説明すべきではないか?」というチェックを行うことができる。このように、対象とする聞き手に応じて、より分かりやすい説明に改善していくことが可能となる。





一読のすすめ



「分かりやすい説明」とは、情報を聞き手の長期記憶に残しやすくするためのサービスである。そのサービスのルールは、本要約で紹介したものを含めて「『分かりやすい説明』の15のルール」として、巻末にまとめて掲載している。そして、筆者はこれらを音読することを勧めている。一日一回、この15のルールを音読し、それを10日間続けることで、説明術のルールが記憶に定着する。説明の技術は、各ルールを意識するだけで、格段に説明上手になれる。是非、この技術を身につけて実際の説明のシーンで、上達ぶりを実感してほしい。

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