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将棋めしとおやつの旅~東京・その1(9)ジュンク堂池袋本店

(2021年12月の記録です)
 都市センターホテルでの早い夕飯を終えて向かったのは、この旅の一番の目的、『木村一基 折れない心の育て方』刊行記念 木村一基九段×藤島淳さん対談の行われるジュンク堂池袋本店だ。大変巨大な書店で地下1階から9階までビル全体が本まみれ。その4階にあるMJカフェが対談の行われる会場だ。将棋の本売り場の充実っぷりも半端なく、サイン本までがこんなに並んでいる店は将棋会館売店以外で見たことが無かった。
 売り場の壁には『師弟』を書かれた野澤亘伸さんが撮影した棋士の写真展示があった。真剣な一瞬の表情が捉えられた写真は大きいサイズで見ると大変迫力があるものだ。

 さて、有料イベントの内容をどこまで書いていいものか悩みどころなのだが、エッセンスを少しだけ記しておこう。カッコ内は私が感じたことである。
「ダメな時は変えてみたくなるが、淡々と同じことをしていく」(それがなかなか難しくてあれこれ手を変え一周回って戻るときがあるわ。耳が痛いなぁ…)
「読んでいる時に歌が頭に浮かんで離れなくなってしまって、読みの精度に影響してしまう」(そんなことがプロでもあるなんてびっくり!)
「同業者も言わないところを、AIは「こう思うよ」というのを言ってくれる」(AIが無かった頃は、答えのないドリルを延々解いているような感じだったんだろうか…それはそれで辛いことだなぁ)

 楽しく興味深い対談を私は最後まで緊張して聞いていた。オンライン参加と会場参加が選べて会場にしたのだが、この場にいることでこんなに緊張するとは。最後に参加者が質問できるコーナーでも、本の内容になぞらえていないといけないだろうかなどと考えているうちに、挙手せずに終わった。

 なお、少人数のイベントだが参加者で和気あいあいということもなかった。始まる前、たまたま隣になった方に勇気を出して「(登壇者との距離が)近いですね」と言ったが話が弾むこともなかった。こういうイベントに参加した経験が無く距離感がわからなかったのだが、人見知りな私にはちょうど良かった。
 また、例の感染症の影響で、透明のパーテーションが登壇者の前に置かれていたりしたものだから、参加者のおしゃべりは厳禁といったムードもあったように思う。

 その後に口を開いたのは、木村九段と藤島さんに本にサインを入れて頂いた時だけだ。目の前で本にサインを入れて頂けることは事前に知らされていなかったように思う。とても驚いたし嬉しかった。
 先生や著者と何を話したかもよく覚えていない。ただ、応援の気持ちをしっかりとお伝えできなかったように思う。これは大きな後悔として残った。

 参加者の中にはプレゼントを渡している人もいた。気が利かないことこの上なしの私はこういうタイミングがあることも想像していなかった。

 備えないから憂いっぱなし。この千載一遇のチャンスにおいてこのざまである。
 おけいすしや梅林で舌鼓を打ち、満腹満腹と腹を叩いている場合ではなかったのではなかろうか。いや、それはそれでとても満たされる体験であったのだが。

 帰る際、エスカレーターの近くの棚に浦野八段のハンドブックシリーズが並べられていることに気づいた。しかもサイン本と書いてある。もともとほしいと思っていたものなので2冊求めたが、ホテルに戻ってもそのビニールの包装をむしることもなく、同伴者に自分の至らなさを一頻り嘆き愚痴って、反省しながら眠りについた。
 わたしはただ時間差追っかけだけしているのが向いてるんじゃないかな。

(つづく)

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