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将棋めしとおやつの旅~また愛知(2)フォレスタヒルズ「和処花乃里」その2

 ホテルフォレスタの『和処花乃里』で食事を終えると、スタッフの方が対局に使われた「芙蓉の間」へ案内してくれた。

対局室となった芙蓉の間

 かなり広い和室で80畳ほどの大広間を仕切りで区切って対局に使用したそうだ。デザイン性のある縦に配置された桟が特徴的な障子も、深緑の木々が描かれた床の間の額絵も以前のままだ。

 「このあたりに羽生さんが座られて…」と説明を聞くやいなや、対局相手の座る側に回ってみる。テーブルが設置されており、正座して対局者の目線になることは控えたが、こうして壁にかかった絵が見えていたのだな、障子からこんな光がさしていたのだな、などと当時の挑戦者に思いを巡らせて息を深く吸い込み、シャッターを押す。

間仕切りをはずすと80畳はある

 スタッフの方に、素晴らしい部屋を見せていただけて感激していること、旅の記念になって嬉しいことを伝えると、「野球の平田選手も先月このお部屋をこうして見ていかれたんですよ。ここに羽生さんが…!っておっしゃって。」と返されて一瞬動きが止まってしまった。
 中日の平田選手と言えば球王戦2連覇を誇る球界の将棋王である。オフシーズンの自主トレで、何年もこのフォレスタヒルズを利用されていたのだそうだ。
 棋力が昆虫レベルの私を、球王同様に案内していただけた動揺を隠しつつ最後のお願いを口にした。
 「もう少し小さいお部屋もありましたよね?立会人や他の棋士の方が検討に使っていたお部屋…。」
 スタッフの方はすぐ察してくださり、控室として使われた部屋「水芭蕉」に案内してくれた。

 今では考えられないほどの近い距離でたくさんの棋士、女流棋士の方々が盤を囲んで検討したりモニターを見たりしている写真を棋王戦ブログで見たことがある。誰もいないその部屋で何度かシャッターを切った。

二間続きの長い部屋

 「もうすぐ閉館してしまうので、こうして画像に残そうと思ってくださる方がいらっしゃることが嬉しいです。」というスタッフの方の言葉に胸が詰まる。
 老朽化も閉館の理由の一つとは言え、すぐにでもタイトル戦を行えそうに綺麗で良い部屋なのに、観光業に大打撃を与えた例の感染症が恨めしい。
 しかしそれだけでなく、立地条件もなかなかに厳しいところであったようだ。例えば、私とて当初の予定の公共交通機関を利用してのぼっち旅であったら、ここへちょっと立ち寄るということは難しかった。そう言えば表の駐車場はいっぱいだった。
 親切に案内してくれたスタッフの方に丁寧にお礼を言って外へ出た。

ホテルフォレスタ入口

 私がもたもたしていてなかなか記録しなかったために、フォレスタヒルズ閉館まであと2週間を切ってしまった(2022年3月1日現在)が、どうかホテルフォレスタを訪れてみてほしい。宿泊や食事で利用して、時間帯などタイミングが良ければ、対局室になった和室を見せてもらえるかもしれない。
 また、ホテル入口から入ってすぐ左手のティーラウンジ『エスタシオン』では、ストロベリーフェアを開催中である。夕飯の時間が迫るため私が泣く泣く諦めた、見目麗しい魅惑の【ストロベリーパフェ2022】が待っている。

angeは2日前までの予約制
広い庭園側から眺めたホテル
前夜祭会場となったガーデンテラス

 ホテルに面した広大な庭には池があり小川が流れ、かつて前夜祭が行われたガーデンテラス『ルシェーロ』も眺めることができるし、鈴木環那女流に「フォレスタのチャペルで結婚式を挙げるのが目標です」と言わしめたチャペルもあり、その気になれば鐘も鳴らせる。軽く鳴らしたら、辺りに響いて同伴者に目を三角にされたが、この旅の恥のかき捨てっぷりは今に始まったことではないので目をつぶってもらう。

鈴木環那女流はタイトル戦一歩手前まで進んだし、そちらの目標へは着実に向かっていると思うの

 庭を一回りするとかなりの広さでアップダウンもあり、このような地でタイトル戦が行われた歴史があるということを、心と膝に刻むことができた。
 風がありとても寒い日であったが思いがけないウォーキングで汗をかきつつ、車に乗り込み次の地へ向かった。

 最後に、ホテルのロビーや廊下に展示されていたパネル等を載せるが、あと13日の間に、可能であればぜひ実際に足を運んで見ていただきたいと思う。

(つづく)

棋聖戦開催10年の歴史パネル
左下の棋士にばかり目がいってしまう
第84期棋聖戦
第85期棋聖戦
国民栄誉賞を祝う記事と共に
中日ドラゴンズ平田選手
羽生九段、道場六三郎さんも
ありがとうのメッセージを書いてきました

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