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天邪鬼の存在意義

会議などで方針が決まりかけているころ、
その内容を根本から覆すような発言をする天邪鬼(あまのじゃく)的な存在がたまにいます。

「今さらそんなこと言うなよ!」
と思ってしまうのですが、こういう人がいないと集団は間違った方向へ暴走しちゃうんですよね。

天邪鬼の存在

カリフォルニア大の政治学者チャーラン・ネメスは、
少数派という存在が集団の意志決定プロセスに厳密さを与えると示唆しています。

たとえ少数派の意見に不備であっても、
自分と違う意見を突き付けられると、多数派も自分たちの考えを深めていくのです。
つまり、ツッコミがあって初めて冷静になれるわけですね。

ユダヤの教え

ユダヤ人は議会で物事を判断する際、満場一致での採決はしないと言います。
全員の意見が一致した場合、何らかの忖度や根回しが働いている可能性があります。
また同調圧力によって、意見をねじまげてしまった人がいるかもしれません。
それでは、正しい判断ができないですよね。

現にユダヤ人は暴走する権力(ナチス)の犠牲になりました。
ユダヤ人は集団暴走の恐怖を身を持って体験しているのです。

集団極性化

よく集団心理とう言葉を聞きますが、集団になると人はやや理性を失う傾向があります。
集団から省かれたくないために、同調圧力に屈し、個人の意見を封じ込めてしまうのでブレーキが利かなくなるんですね。

こうなると集団は極端な行動を起こしやすい。
これを「集団極性化」と呼びます。

たとえ自分が中立派を自負していても、極性化する集団の中にいると徐々に極論を支持し始めてしまいます。
もし集団の意見がやや右にズレていったら、中立派は左派となってしまうでしょう。
でも、自分は中立派です。
中立を保つためには意見をやや右へズラす必要があります。
ただほとんどの中立派が同じように考えるため、全体的に右へ傾いてしまうんですね。
これが、中立派まで極性化に加担してしまう理由ですね。
(最初から左派であっても、集団から逃れる術がない限り、意見を変えざるを得ないでしょう)

また自分に自信がない場合も、極性化に加担しやすくなってしまいます。
自分がどうすればいいのかわからないとき、とりあえず周りに相談したりマネしたりしますよね?

集団の多数派がすでにある立場を支持してる場合、
多くの人が述べる意見はその立場をサポートするものになるでしょう。
彼らはその立場を擁護し、積極的にそれを持ち上げるので、
自信のない人々は多数派の意見に流されてしまうんですね。

発言権

集団が極性化する過程で、リーダーとなる人が発言権を持つようになります。
なぜ、リーダーはリーダーとなっていくのでしょうか?

議論の展開に大きな影響を及ぼすのは、発言の順番です。
最初の発言が議論の方向性を決めると言われています。
つまり、誰よりも先に発言した人が主導権を握れるというわけですね。

会議でも「今日は○○について話し合います」と言うと、
○○以外の発言は控えるようになりますよね。
多くの人は初期設定に疑問を持ちません。
これはこういうものだと示されると、素直に従ってしまう性質があるんですね。
なので、一番初めに「○○について話し合おう」と言った人が議論の筋道を決めてしまえるのです。

また発言量も議論に大きな影響を及ぼします。
アメリカの心理学者ザイオンスは、
接触回数が多い人ほど好感度が高くなるという効果を発表しています。
これを「ザイオンス効果」と呼びます。
つまり、発言すれば発言するほど、顔や名前を憶えてもらいやすく、どんな人かが分かってくるので好感度が上がるわけですね。

さらに多くしゃべるということは、多くの発言権が与えられることになります。
他の人よりも発言権が与えられるのはなぜか?
それは重要な意見だから。
例え内容に誤りがあったとしても、
人は無意識のうちに発言権を与えられている人を重要人物だと認識してしまうんですね。

すると、多くの参加者は発言者の座をゆずり、聴衆(フォロワー)へ変わっていきます。
そして発言権を与えられた人間はさらに発言をし、その場のリーダーへと変わっていくんですね。

間違ったリーダー

問題なのは発言内容に関わらず、発言者が権力を持ってしまうことですね。
議論に影響を与えるのは、発言の順番や発言量
そしてどれだけの人たちに支持されているか(地位)なんですね。
でも、発言内容はそこまで影響力がないんです。

本来そちらを重視しなくちゃいけないのに、
人間の本能は発言量の多い人を支持してしまうんですね。

もし、リーダーとなる人がきちんとした見識を持つ人なら良いが、
自分をリーダーだと思い込む人は、自信過剰な面を持っていて自分の知識を過大評価しがちです。
こうした人が権力を握ってしまった場合に、集団は極論化しやすいんですね。


集団極性化を防ぐ

集団極性化を防ぐには、多様な意見を取り入れることが必要です。
ユダヤ人の教えのように、少数派がいない決定は集団を暴走させかねません。
もし天邪鬼のような存在がいれば、集団は一度立ち止まって自分たちの考えを見直すでしょう。
これが天邪鬼の存在意義なんですね。

ただ普通の人は、なかなか天邪鬼になって集団を敵に回すマネはしたくないですよね。
しかし、集団の暴走を止められるのは天邪鬼以外僕には思いつきません。

なぜ天邪鬼になれないのか?
それはその集団以外に居場所がないからですね。
もし、いつでもそこから逃げられるとしたら、集団にメスを入れるハードルも下がるでしょう。

流動性

集団極性化を個人で止める術は、現時点では非常に難しいですね。
なぜなら日本社会には流動性があまりないからです。
会社に文句を言えないのは、クビになった場合転職が困難だから。

しかし、アメリカのように転職などがもっと活発に行われていたら、
会社に対して苦言を提示できるかもしれません。
クビになっても転職のハードルが低ければ、そこまでしがみつく必要はないですもんね。

僕は、日本に流動性を求めるのはまだまだ難しいと考えています。
しかし、個人個人がしっかりしていけば流動性を生み出せるかもしれません。
一つの案が、収入の分散化です。
会社にしがみつかなきゃならないのは、収入源がそこしかないからです。
でも収入が分散化されれば、クビになった場合のリスクも減るでしょう。
副業はそういった意味でも健全な動きだと思いますね。

こうしたみんなが保険をかけていれば、天邪鬼も増えていくかもしれません。
それはそれで摩擦が激しそうですが、今よりマシな方向へ進むでしょう。

独自の世界を作り上げて発信する人を増やしていきたいので、サポートよろしくお願いします。