2023年4月の記事一覧
中学校内失踪事件【後編】
「よいしょ」
辺りはすっかり真っ暗になっている。新が器用に門を登って、学校内に侵入した。満に合図を出すと、豪快に跳んだ。
「……隠してますけど、できるだけ音はさせないでください」
「ごめんごめん」
ぺろっと舌を出す満に、新はあからさまにため息をついた。気を取り直して、校舎を見上げ始める。真っ黒な瞳を見開く新に、満も静かに同じ方を向いた。
「3階。3階に何かいます」
瞳孔を開いたまま
中学校内失踪事件【前編】
コンコンコン。
ドアを叩く音が部屋に響く。茶髪の青年がドアの方をチラリと見る。
「どうぞ、お入りください」
疲れた表情の男性がドアを開けて、店に入ってきた。男性を見て、茶髪の青年は黒い目を細める。男性は40を超えているだろう見た目だ。一方、青年は20歳前後だろうか。
「ひとまず、お座りください」
「すみません……」
今にも倒れそうな男性を見つつ、茶髪の男性は店の奥に声をかける。