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誤った権威への服従

皆さまこんばんは、弓削彼方です。
本日は一つ例え話をして、皆さまが「権威」と言うものに無条件で服従してしまう「人生の罠」についてお話したいと思います。
最後まで読まないと理解できない話ですので、ぜひお付き合い下さい。


ここから例え話です。
皆さまの世界である事件が起きました。
小国ながら豊富な油田を多く持つA国に、隣国の大国であるB国が軍事侵攻を開始しました。
A国は自国の利益を増やすために原油の減産を決め、原油価格が引き上げられるような政策を行ったのです。
そしてA国から大量の原油を購入していたB国は急激な原油価格の為に経済危機が起こり、この経済危機を回避して国民の生活に必要なエネルギーを確保すると言う名目でA国に侵攻したのです。

テレビではこの大きな事件について論ずるために、三人の専門家がゲストに招かれました。
一人目は「他の医者なら必ず匙を投げる」と言われるほど難しい脳の手術を行い、毎年何百人もの命を救う医学界の権威である山田医師
二人目は過去に何度もオリンピックに出場し、昨年のオリンピックでも金メダルを獲得した柔道界の権威である佐藤選手
三人目は過去に多数の賞を獲得し、また新人向けの賞の審査員も務め、次に出す小説も必ず百万部売れると言われている小説界の権威である作家の吉田氏です。

番組では戦争終結のためにA国は原油の減産を撤回すべきなのか?B国は経済危機にどのように対処すべきなのか?国際社会はどのように協力して行動すべきかのか?などの議論が一通り終わり、最後にB国の今後の軍事作戦についての純軍事的な話に移りました。

山田医師は「B国の軍事力は強大であるから、一気にA国の首都陥落を目指すだろう」と言いました。
佐藤選手は「B国の狙いはエネルギー資源であり、油田をいくつか占領したこの状態で積極的な軍事行動を終える。今後は大きく戦線は動かないだろう」と述べました。
作家の吉田氏は「戦線の大きな動きはなくなるが、それはB国が軍事行動を停止するのではなく、A国の国軍と義勇兵の激しい抵抗に遇い前線を押し上げられなくなるだけだ。今後はA国が少しずつ戦線を押し返す」と言う意見を出しました。



さて、貴方が支持するのはどの意見でしょうか?
ここで1分ほど考えてから、先に進んで頂けると幸いです。






三人の各界の権威が違った意見を出しました。
皆さまの世界でも似たような事件があったでしょうか?
もしかしたら、その似た事件に重ねた貴方の考えと一致する意見もあったかもしれません。
その上で私が言えるのは「どれも聞くに値しない意見である」です。

私が上に出した架空の各界の権威は、全く同じでは無いにしろ皆さまの現実世界で目にするような人達です。
しかしその人達の知識や権威とは、その人の専門分野でのみ有効な知識や技術なのです。
手術によって何万人と言う人の命を救った名医であっても、軍の司令官として指揮を執ることで同じように何万人もの命を救うことはできないのです。

三人のゲストは医師とスポーツ選手と小説家です。
三人とも軍事の素人ですので、軍事に関するその意見は聞くに値しません。
もし四人目として現役の軍人か、長く軍人として勤めた経験豊富な退役軍人が居たのであれば、その意見は聞くに値するでしょう。


このように文字で書けば、皆さまにはある程度納得して頂けると思います。
しかし再び現実に戻れば、テレビで見たスポーツ選手の政権批判に拍手を送り、SNSでは有名な漫画家の難病治療に必要な薬の副作用に関する批判にいいねを送る。
とても滑稽だと思いませんか?

なるほど、彼らもどのような問題にでも自分の意見は持つでしょうし、社会の問題であれば我が事のように真剣に考えて発言することもあるでしょう。
しかし「あのスポーツ選手は凄い人だから間違ったことは言わないだろう」「あの漫画家は有名だから嘘を言うはずがない」、この様に考えてその意見を支持するならば、これはタイトルに書いた「誤った権威への服従」です。
ある分野の権威が、他の分野でも同じように権威を持つ言う誤解に基づいた、皆さまの間違った行動なのです。
この間違いは「人間はこのような権威と言うものに対して間違いを起こす」と言うことを知り、心の中に留めておくことで、その大半を回避することができます。
私は本日お伝えする智恵はこれになります。



疑問?
テレビやSNSを見ていると、ある分野の専門家が全く畑違いの分野で意見や予想を出し、実際にその通りになっていることがある。
だとすれば、やはり彼の素晴らしい知識は他の分野にでも応用が利くと言うことになるはずだ。
これはどういうことか?

答え!
世界が複雑とは言え、どのような問題も大まかな流れは4つか5つ程度に絞られる
例えばある流行り病に対する今後の展開は、1つ今後も患者は増大、2つ横ばい、3つ患者の減少、4つ治療法が確立されて大幅に脅威度が下がる、この程度である。
これに「もっともらしい理由」をトッピングすれば、素晴らしい未来予測の完成だ。
100人の素人が思い思いに意見を出しても、誰か1人ぐらいは予想が当たる。
予想が外れた人は忘れ去られ、予想の当たった1人が英雄や預言者として必要以上に褒め称えられているだけである。
そして5つ目の人類が流行り病に敗北し滅亡すると言う予想が当たった時には、誰も予想に対する文句を言えないだけである。



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