見出し画像

【白石優雅】FX入門知識レッスン2

スプレッドとは

FX取引を行う際に、よく出てくる「スプレッド」という言葉。英語での元々の意味は「広げる」「広がる」「塗る」「幅」など。FXの世界では売値と買値の幅という意味で使われます。


FX業者が顧客である取引利用者に提示するドル円の売値が「110円30銭」、買値が「110円32銭」だったとします。このとき利用者は110円30銭でドルを売ることが出来、110円32銭でドルを買うことが出来ます。この売値と買値の差である2銭がスプレッドです。


海外旅行に行って両替所でドルを買う時と余ったドルを売るときの差は何円もありますし、銀行で外貨預金をする際の差も通常2円程度と、大きく開いていますが、FX取引の場合この差が相当小さく、1銭もないケースがたびたび見受けられます。


取引手数料が無料もしくは非常に小さいFX取引において、このスプレッドが実質上の手数料となりますので、スプレッドが狭ければ狭いほど、取引利用者にとっては有利となります。


スプレッドがFX会社によって異なる理由

売り買いを繰り返す場合、スプレッド分の負担は結構馬鹿になりません。基本的にはスプレッドが狭い方が、コストが減りますので取引利用者にとって有利です。


では、なぜ業者によってスプレッドに差が出てくるのでしょう。


実は、FX取引でのレート形成の元となる銀行間の外国為替市場(インターバンク市場)でのスプレッドは、FX業者が取引利用者に提示するスプレッドよりも広いケースがほとんどです。


FX業者は取引利用者の売り買いをそのまま銀行に流しても損が出てしまいます。そのため、複数のカバー先(銀行など)からレートの提示を求め、その時点での最良のレートでカバーする(例1)、取引利用者の売り買い注文をマッチングさせる(例2)などで、狭いスプレッドでも収益を上げるように工夫しています。


工夫例1 カバー先を競争させる


例えば...
取引業者Aが顧客に提示するレートが  110.300-110.305の0.5銭

カバー先B銀行がAに維持するレートが 110.295-303の0.8銭


カバー先C銀行がAに提示するレートが 110.301-308の0.7銭
だったとします。

カバー先が業者Aに提示するスプレッドは、Aが顧客に提示するスプレッドよりも広いですが、顧客が110.305で買ってきた場合はA銀行の110.303を使ってカバーし、顧客が110.300で売ってきた場合は、C銀行の110.301を使ってカバーすると、ともに収益が上がります。


このように複数のカバー先に競争させることで、結果的に顧客により狭いレートの提示が可能になります。


工夫例2 顧客同士の取引をマッチングする


110.30-110.305という提示に対して、取引利用者Dさんが1万ドルの売り、Eさんが1万ドルの買いを同時に行ったとします。取引業者Aは、銀行でカバーする必要はなく、0.5銭分そのまま儲かることになります。


ただし、複数のカバー先を確保するためには、それだけの信用とカバー先に預ける保証金が必要ですし、顧客同士の取引のマッチングを行うためには、それだけ多くの顧客からの積極的な取引が必要。FX業者によってその状況は違いますから、提示可能なスプレッドも違ってきます。


スプレッドでFX会社を選ぶ際のポイント

ここで大事なポイントは、見かけ上狭ければそれでいいわけではないということ。スプレッドの狭さはFX業者を選んでもらう際の重要なアピールポイントになりますから、各業者とも狭めに見せるケースがほとんど。


ただ、よく見るとドル円では狭いけれど、他の通貨を見るとそんなこともないといったケースや、提示されたスプレッドは狭いけれど、取引しようとすると、そのレートでは約定せず、レートが悪くなるケース。

相場が少しでも動くと、すぐにスプレッドが広がるケースなど、いろいろなケースがありますから、事前に評判などをチェックする。使ってみておかしいなと思ったら別の業者を試すなど、慎重に対応していきましょう。


なお、自分の取引量と回数次第では、スプレッドの差はそこまで関係してきません。外貨預金代わりに長期保有をしたいなどのケースでは、スプレッドが0.1銭狭いことよりも、スワップポイントを大きくもらえることの方がよっぽど大事。
一日に何度か取引するというケースでも、一回1万ドルの取引の場合、0.1銭のスプレッドの違いによるコストの差はわずか10円に過ぎません。それよりも、約定しやすい、取引システムが使いやすい、取引に必要なマーケット情報が充実しているなどの方がよっぽど大事です。


スプレッドが狭いということは、それだけ取引利用者に対して有利な取引環境を提示しようというFX業者の姿勢の一つですから、狭いということはとても大事ですが、それだけではないということを覚えておいてください。



米ドル円0.3銭って結局いくら

銀行間の取引では1銭~2銭程度が普通のドル円のスプレッドですが、FX業者が顧客に提示するスプレッドは0.3銭~0.5銭などというとても狭いスプレッドが提示されるケースが増えています。
ここで0.3銭のスプレッドという場合の、取引利用者のコストを考えてみましょう。
今、ドル円のレートが110.300-110.303 だったとします。この場合のスプレッドは110円303銭-110円300銭で.0.3銭となります。
1万ドルを110.303で買って、すぐ気が変わって売った場合売値は110.300。この場合の損失は、0.3銭×1万=3000銭=30円となります。
取引額が10万ドルならば、その10倍の300円、千ドルならば3円です。
なお、先にも説明しましたがスプレッドはFX業者によって異なります。ご参考までに下記に主要なFX業者のスプレッドを掲載します。

pipsとは

スプレッドを見るときにpipsという表現を見ることがあります。0.3銭という表現ではなく、0.3pipsと提示しているケースです。このpipsとは通貨ペアごとに定められている統一単位のことです。


ドル円、ユーロ円など円がらみのペアは基本的に銭単位となります。1銭=1pipsです。ユーロドルやポンドドルの場合、下4桁で提示されます。1ユーロ=1.2350ドルといったかたちで、この場合1pips=0.0001ドルです。

ユーロポンドやドルカナダなども同じ。わずかに例外はありますが、円がらみ以外は下4桁が1pipsだと思ってください。ドル円の場合30銭上がった、スプレッドが0.3銭だなどのように比較的わかりやすいのですが、ユーロドルが0.0030ドル上がった、スプレッドが0.00005ドルだ、ではわかりにくいことこの上ないです。

ドルの場合、その下のセント表記だとまだ何とかなるかもしれませんが、それでもスプレッドが0.005セントなどの表記になりますし、スイスフランの下の単位とかになると、知らない人の方が多いですよね(ちなみに独語でラッペン、仏語でサンチーム、伊語でチェンテージモ、ロマンシュ語でラップ)。そのため、pipsで表記するというわけです。


スプレッドに書いてある原則固定とは

各FX業者が提示するスプレッドを見ていると、よく書かれているのが原則固定という表示。銀行間取引でのスプレッドは市場の状況によって狭くなったり広くなったりします。そのため、FX業者が提示するスプレッドも、それに合わせて狭くなったり広くなったりするのが自然です。

しかし、取引利用者の利便性を考えると、いつでも同じスプレッドで取引できる方がコストの把握をしやすくてありがたいという考え方もあります。スプレッド0.3銭と謳っていても、相場が動いているから今は1銭ですといった具合に、すぐに広がるようだと、コスト計算が難しいということです。


こうした要望に応えてFX業者によっては提示するスプレッドを市場の状況にかかわらず固定して提示しているケースがあります。これが原則固定です。
なぜ原則なのかというと、さすがに固定できない状況があるからです。


外国為替市場は世界最大の市場で膨大な取引が毎日行われていますが、それでも状況によっては取引量が極端に減るケースがあります。相場が急変動しているときなどは、様子見に回る参加者が増えて、銀行間取引でのスプレッドが大きく開きます。

FX業者はそれでも狭いスプレッドを維持しようとしますが、あまりにも極端に広がった場合は、維持できないケースがあります。


例えば、2015年1月15日にスイス中銀がそれまで実施していた対ユーロでの介入を取りやめた時。この時はわずか30分でユーロスイスが4000PIPS近くも大暴落。その間、銀行間でも取引はほとんどありませんでしたから、例えば普段1PIPSで提示していたとしても、それを維持することは不可能です。


ドル円にしても、1998年にドル円が二日で20円以上の大暴落をした際に、ドル円の銀行間でのスプレッドが1円以上開いたケースなどがあり、もし、今そうした状況が起こったとした場合、0.3銭などのスプレッドを維持することはできないと思われます。こうした状況に備え、スプレッドの固定をうたっている業者も、原則固定という表記にしているのです。


変動スプレッドとは

逆に固定ではなく、変動スプレッドという場合は、市場の状況に合わせて、ベストエフォートベースでのスプレッドを提示するというもの。
一般的に値動きが落ち着いているときは狭く、値動きが激しいときは広めになります。また、取引参加者が多い場合は狭く、祝日や日本の早朝など取引参加者が少ない場合は広めになります。
取引利用者にとっては不利に見えますが、スプレッドを固定する場合、カバーできない場合の損失分を見込んだスプレッド提示になりますので、相場が落ち着いていたり、取引参加者が多い日本時間で午後8時から12時ぐらいまでの時間帯での取引では、変動スプレッドの方が狭いスプレッド提示になるケースがありますので、好みに合わせて利用するということになります。
原則固定のスプレッドが拡がるのはどんな時

カバー先である銀行でもレートが取れないようなとき。具体的には、重要経済指標の発表直後、テロや戦争などの重要な事変、祝日などで取引参加者が極端に少ない状況で大口の売り買いが入った場合などです。
FX取引の拡大などもあり、外国為替市場はここ20年ほどで大きく拡大しており、スプレッドが大きく広がるようなケースはどんどん減ってきています(90年代などは雇用統計の発表前後に銀行間でのドル円のスプレッドが1円単位になることなどざらでした)。それでもゼロにはできません。
また、最近はアルゴリズム取引による自動売買が増えてきたことで、特に理由なく相場が急変するといういわゆるフラッシュクラッシュという状況がたまに見られます。こうしたケースでもスプレッドが広がることがあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?