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☆彡台無しにされるには充分だった

 忘れようとするほど重くなる、胸の裡の澱は、いっそ書き綴ってしまう方が薄く儚く消えゆくと期待したい。

☆彡貴方は大切なお人形

  昨年手掛けたリレー小説は✕(Twitter)上の個人企画もの。ドールオーナー主催のMDDフォトストーリー『ガルリト』からのスピンオフをリレー小説として描く、そのタグは『ヤヤビュート』。リレーパートナーがオーナーの少女、飛び級で王立学園入学を果たしたヤヤ姫様が、ガルリト世界で秘密の街の秘密の少女『リューズ』(オーナーは主催)調査に乗り出すにあたり、国家特区市長令息ライト・ビュート(うちの少年ドール作中用の名前)の協力を取り付けて、暗躍と冒険を展開する物語でした。はしがきにこちらからやりたいと云い出して始めたことになってますが、やらないかと打診あったから乗っかったのであって純粋な立候補じゃないのが真相だってことはまだいいんだ……としておきましょう。
 私としては、お腐りしてる薄い本屋だから、名前の左右に不満はありますよ勿論。それはもう盛大に。腐界隈は左右に煩いんです。関係性の意味変わるんですもん。これだと男女逆転ですよ、あくまで腐ではね。
 が。
 この企画は一般ドールオーナーさんとのリレー小説。ヲタク事情とは無関係で、主役は相手方のドールヤヤ姫様。うちの少年ドールビュートくんはサポートなんだから、薄い本ルールに沿った名前先にしたらお行儀悪いので、左右は諦めるしかない。腑に落ちないけどここで主導権欲しいんじゃないしね。そやって書き始めたわけだ。
 そしたらば。
 ふたつ年少の姫君は事ある毎にビュート少年を謗るもの云いが目立つ……気がしました。
 はい、ソフトに云いました。
 私の感覚としての本音云うなら、ことごとく姫君はビュートを愚かだ浅はかだと見下した発言が目立ってた……なんですよ。それはもう逐一苛立つくらいに。場面の折々毎回ね。
 うちの子が見下されないための大人びた描写すればいい? それは違う。作中で彼は十二歳の子供。お人形の彼は十七歳でも、物語は子供の頃に起きた出来事。極力子供らしさのある表記を目指しつつ、それでも既に結構な背伸びで書いちゃってる。だから、ああここでこんなこと十二歳のうちの子じゃ考えないかも? などと思ったりしたならば、そんな爪先立ちした賢い振る舞いは書けない。だって過去、小学生の彼を書いてんだから。そりゃ知恵のまわる賢い振る舞いの出来る子供も居たとしても、うちの子こういう場面ではこう考えるだろうし動くだろうしと、考えてみる限り曲げられない。でもそう描けば書いて行く程に見下される。そうとしか受け止められない言動があまりにも目立ってたんですよ、私の感覚では。

☆彡物語とは切り離して

 結局ね、うちのお人形は見た目のサンプルであって、ライト・ビュートのモデル少年であって、『ビュートではないうちの子』であるはずだったんですよ。
 だけども、だ。
「顔は打たないで、あたし女優なのよ」
 ……てタイプじゃなくてだね……女優にはなれなくてだね……『うちの子演じるキャラクター』でなくて『うちの子』が馬鹿にされてる、見下されてる。そういう風にしか見えなかったのさ。ひいては『ビュートの筆者蒼月は考えの浅い愚かな人』と云われてる気分にしかなれませんでした。だってビュートの行動は基本的に一貫してる。ただ姫君の望みが叶うよう、その為ならば何をするも厭わない。何故なら姫は僕の住む街の不思議な少女を救いたい純粋な心で行動しているのだから。そういうほんの幼い正義感。ただそれだけで行動を起こしてる。ルール違反になる行いであろうとも、それをすることが姫君とあの少女を手助けする事に繋がると云うのなら。子供理論の正義感。だってビュート本人は『これを成せばヒーロー』ぐらいの気持ちですもん。姫君は父宰相の謀殺から逃れたくて飛び級入学した、英才教育のもと育ってる才媛。当然超美少女。そんな子のお手伝い出来るなんて、そりゃヒーローになれるって思って不思議はないよねーと、調子ぶっこくビュートくんは一所懸命行動起こします。リューズのため、ヤヤ姫様のため、僕の持てる技と力はフル活用! なんです。
 それなのに。
 周りに気を配って行動しなさいよ、危険なんだから!
 貴方が思う程容易な事でないのよ。
 もっと周りの目を憚るべき。
 悪戯で済まされるつもりなのかしら?
 後の事にも配慮なさい。
 事の重さを考えてないのね。
 それは最悪極刑だって事ぐらい判んないの?
 いくら何でも浅墓だとしか云えないわね。
 ……一事が万事これに終始。まるで子供に云い聞かせるかの如く、強めの物言いで圧力、に見えてしまう。そんなこと云ってるつもりはない? 聞こえてましたが? 『大丈夫なのかしら』『威圧に見えるでしょう!?』『規律違反に目を瞑れとでも!?』とは具体的に発言してるよねー。二個下プリンセスが。やろうとしてるのは協力の一環であって、危ない橋でも使える手は使いたいだけなのに、何かにつけ上から目線は姫君だから許されるのは当然の帰結ですかそうですか。

☆彡正論説くなら何をどう云おうと

 正しい行いだと云うのでしょう。規則は守るもの。行いが愚かなのは少年の側に責任がある。それが真剣な気持ちに基づくからこそ罪深い。
 でもね。
 くす、と面白そうにしてくれるだけで随分違った様に思えてしまったのさ。ただ不良行為だと責めるでなく、もうちょい戯れは戯れらしくね。
 そう云うのは何処にもなかったね。ただ愚かな行いだと高圧的スタンスがブレないのも姫君だからなのでしょう。優秀な少女なので。……それ、ビュートは何処までも愚かな子供だと強調するばかりになってる自覚してての発言行動だと云うなら、姫の望みのためになんか、何もしたくなかったですよ。馬鹿にされながら手伝うの? 何それ天使?
 ……物語が動くほどにビュートは愚かな少年になる。それ、ずっと耐えるんですか私は。いつも正しい姫君と、いつも浅墓な少年。ずっとその立場にいろと云うのですか。耐えればいいんですね?
 このストレスは書き手に向けられました。それからモデルのお人形に向けられました。ドール見てると、『ああこの子は愚かな少年』と、そういう気持ちがつき纏う。馬鹿な子なんか可愛くないです。『馬鹿な子ほど可愛い』なんて云える広い心持ってません。馬鹿な子。見てられない。厭。嫌い。

『馬鹿なうちの子は嫌い』

 人形は。
 軽いメンテナンスの後、お迎え箱にその身を収めて『箱入り息子』(物理)になりました。
 だってもう顔も見ていたくない。馬鹿だ馬鹿だと云われ続けるうちの子の顔見てると、私自身が馬鹿だ馬鹿だと云われてる心持ちにしかならないから。馬鹿を確認するのはうんざり。厭だ。もう厭だ。顔も見たくない。愚かな子を見てるのは辛いのだから。

☆彡そうして駄目になったんです。

 ちょっぴり悪戯で、けど優しく真っ直ぐに動く陽気な少年。彼は私の中で愚かな子供になりました。
『モデル』で『役柄』で『本人』じゃない。そう割り切ってしまえたら。でも出来なかった。うちの子馬鹿な子。馬鹿なうちの子は愚かな私の鏡。あの子を見てるのはただ辛いだけ。
 可愛がれない。
 見ていたくない。
 だって馬鹿な私の象徴だから。
 居なくなればいいよ、君なんか。馬鹿な私なんか。
 ……箱の中、少年は封じられて眠る。
 こんなに嫌いになるなら書かなければ良かったかも知れない。物語に相応しくしてないで無理にでも大人にしていたら。たら、れば、かも。無駄な空想。
 箱を出られる日はやって来るのか。

 判らない。

☆彡たったそれだけで醒めることもあるのだと

 辛いと思い続けてたこと書き殴って、すっきり出来るかと期待したけど。
 疎ましさ深まるだけらしい。
 私を反映するあの子が嫌い。
 だって愚かな私を私が嫌いなの。
 馬鹿な私なんか私が誰よりも大嫌いだから。

<了>




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