反省

本稿は主に「シラス」という有料動画プラットフォームの観客・シラシーのみなさんに向けて書いています。

今月の、かなしかった出来事・・・。

当事者含め、みんな傷ついた。かなしかった。

私はシラスの決定を尊重します。そのことは当事者の方々を貶めることにはならないと思います。

ただ、私も(東さんの #突発56 は見ましたが)一部の事しか知らないのだろうし、問題の発端となったチャンネルは見たことがない。

誤解をたくさんしているのかもしれない。

「信じる」って何なんだろう・・・。


それは「何も他の情報を入れず、盲目的に従う」ということなんだろうか。

思えば私は安易に「信じた」から、こんな悲しい気持ちになっているんじゃないだろうか。

これは私の懺悔であり、言い訳であり、誤りと心象の記録です。
あまりに短い間の出来事だったので、まだ自分がついていけてない。これからどういう心持ちでいればいいかもわからない。
こんなにたくさん生きているのに、どうしてこんなことが分からないんだろう。でも仕方がない。わからないんだから考えるしかない。

私が救ってあげる。

私が、最初にgzさん(本来、伏字にする必要ないのですが、変に検索されて誰かを攻撃する材料になると嫌なので、すみません)の顔を知ったのは、シラスだった。
2022年1月14日の、辻田さん・與那覇さんとのイベントだった。(#ゲンロン220114)

それまで私は、そもそものSNSでの炎上のことも、OLのことも何も知らなかった。
・・・いやうっすらとOLの声明を読んだことがあるような気がする。
そしてその時はあの文面に納得してしまった気がする。(署名はしていません)

この炎上とそれにまつわるごちゃごちゃは、今でも世間では全く知られていないと思う。例えば私のバイト先の人達は1ミリもこの問題の存在を知らないです。人が何人も傷ついて、gzさんはキャリアを失いかねない立ち位置に追い込まれているにもかかわらず。
もし知っていてもアカデミアの中のコップの嵐だと思われているのではないか。私が最初に調べた時もそういう感想だった。

しかし、彼の炎上とそれにまつわる諸々が、あまりにシラスで話題になるので調べてはみた。
でもなんだかよくわからなかった・・・・・・。ほんとうに、(無駄に)複雑なことになっていて、部外者がちょっと調べただけじゃ、全然分からないのだ・・・。
ぼんやり「鍵アカで悪口を言ったら、つるし上げになってしまい、それが度を越した」くらいのことがわかった。
でも彼の業績に、ほとんど興味もなかった。

私はもともと小児期から男性嫌悪が強く、シラスを知らなかったら、きっとOL勢のように、彼を「悪魔」「敵」だと思っていたと思います。
ただ、シラス(東さんと辻田さん)が応援している人らしいから、たぶん「悪魔」と決めつけない方がいいんだな、くらいには思った。

そして緊張のイベントが始まった。

私は番組を見て、シラス視聴者(シラシー)として、gzさんのシラスのスライドや言動を面白いと思った。コメントをちゃんと読んでいるのもなかなかいいなと思った。
この人はつじたんと同じように歴史が好きなんだなと思った。
そして、辻田さんと與那覇さんと仲良くなってくれたらいいなと思った。

(本来、彼らは同じ世界にいる研究者同士なのだから、私が”仲良く”とか”友達になって”とか考えることはおこがましい。)

・・・その後、大河ドラマを見ながら読もうと思ってgzさんの本も買った。
私は歴史は全く詳しくなく、本は私にはちょっと難しかったが、それでもものすごい労力を注いで書かれたんだなと思った。
私がわからなくても、歴史クラスタにはとても面白い本だろうと思った。
(この本のおかげで大河を深く楽しむことができており、わからないなりにも読んだ意義はありました!)

だから「誰かが、好きで研究して得た成果を披露する場を奪う」=「潰す」権利は誰にもないと思った。

それからいくつか、gzさんがシラスの番組に出るたびに、どんどん「面白い」一面が出てきた。
辻田さんchの「信長の野望」回では、歴代大河ドラマに詳しいのもわかった。時代小説も好きだったそうだ。
別の回(辻田さんchの配信体験回)では、自らの幼少期の写真を出したり、男子校時代の「痛い青春時代」も赤裸々に語ってくれた。

私はgzさんと年齢も近いから、gzさんの若い頃の空気感も分かるし、「ネットが好きな人のノリ」というのも伝わってきた。悪気なくウケを狙って時々「やらかす」タイプの人なんだろうなというのも思った。男子校出身というのもなるほどと思った。

彼がシラスでどんどん有名になるにつれ、私はこう考えるようになった。

某女性研究者のことを、鍵アカではあっても実際に侮辱(刑法の侮辱罪の定義ではなく、一般的な意味で)したことがあったのだろう。
でも真摯に反省しているではないか。
東大を出てスピード出世、ベストセラーも出した頭のイイ先生が、ちょっと失敗してしまったけれど、それでも自虐ネタを繰り出しながら、一生懸命やり直そうと頑張っている。

今は過去を反省して、”女性を十把一絡げにしてステレオタイプな想像で馬鹿にする”ようなことはもうしなくなったんだ、と思った。

私は、秀才かつオタク気質の人を面白いと思う傾向がある。
私の通った女子校はまさにそういう人間で溢れていたからだ。(ただし、誰かを馬鹿にするとかそういう風潮は少なかった。いい意味であんまり他人に興味ない人が多かったから)

私はgzさんについて「頭がよくて」「とても正直」で「おっちょこちょいなところ=その場のノリで楽しくなって、やっちゃいけないことをやったりする」人だと思った。やっちゃう系なところは私と同じなのかもなあ、と思った。

もっと正直に言うと

「歴史が好きで、ベストセラーも出して、話もうまいし、反省もしている頭のいい人が、その業界に復帰できないなんて【かわいそう】」だと思った。

だって他にどうやって生きていくのだろう。アカデミーの場で歴史の研究をずっとしてきた人が、そこで生きられないなんて【ひどい】ではないか・・・。

そして、東さんや辻田さんという、私がとても尊敬し、また大好きな人たちが、揃って彼を「面白い」と思っており、「盛り立てて」「復活の場を用意して」いこうとしている気運を応援したいと思った。

私はそういう気持ちでコメントをして、イラストを描いた。きっと「よろこんでくれる」と思って。

応援しようとしたこと自体は後悔はしていない。
本も買って良かった。シラスも見て良かった。
gzさんという人を知ることができて、gzさんの教養も知れて、とても良かった。
シラスに感謝している。
でも私の内心、動機は本当に幼稚だった。

救ってあげられるんだと思っていた。

「世間で理解されずに傷ついた、アカデミアで重要な人」を、このコミュニティで再生してもう一度世に出すんだと・・・。
そして、何もかもがうまくいって復帰したら、あるいは在野の研究者となっても、きっと彼は「あの時のシラスのおかげ」「シラス民のおかげ」って言ってくれるかも・・・と思っていた。
それは「私の楽しい思い出」として残ると思っていた。

だから今、私は傷ついているのだ。

これは全て、私個人が勝手に妄想していたことです。シラスや東さんにこのような意図があったということではありません。

勘違いも、思い上がりも、はなはだしかった。

今回のことでは、私には傷つく資格すらないのかもしれない。

だって、このことによって、私は別に何も失わない

ちょっと寂しいなと思うだけだ。

でもシラスはこの問題で、中傷を受けているそうだ。
東さんが謝罪する突発回(#56)を見て、私のほうが苦しくなった。

私だって、何も言わなかったのに。黙認してきたのに。

どうして言わなかったんだろう。


以下は、今更言っても本当に意味がないし、言うことで誰かを傷つけるから、本当は言わない方がいいことだ。

シラスに耽溺していくgzさんを、最初は驚きと、面白さをもって見ていたが、次第に「うーん」と思うようになった。
もちろん深い教養に裏打ちされた、はっとさせられるコメントもたくさんあったが、私がなじめなかったのは、彼が他人のシラスで自分のことを「宣伝」することだった。

そこは他の配信者の大切な”知を耕す畑”である。コメ欄は広告スペースではない。

シラシーは本当に教養が深く、どんなネット上のコミュニティより「優しい」。
コメ欄は質問しても某知恵袋みたいに邪険にあしらわれる心配もなく、教えていただける。
みんなで「なるほど!」と配信者の言葉にうなづきながら啓蒙され、知的興奮が味わえる場所だ。
私にとってシラスの醍醐味の1つである。

そういう場所(コメ欄)で自分の宣伝をするというのは、「単に知らせる」ということだとしても、ちょっとどうなんだろうと思った。
もちろん、シラシーが「みんなに知ってほしい」情報をシェアすることはある。
でもgzさんの場合はそれが1~2回じゃなかったことと、彼がコメント欄に貼ったURLは、私が見た限りは、ほぼすべて自分が関係するURLだったと思う(自分が書いた本、出演するチャンネル、自分が寄稿しているサイト)。

もちろんそれで、「へえ、こういうことを書いてるんだ」「あ、今度その番組に出るんだ!」とは思いました。

でも、さすがに他人のチャンネルで何度も自分から「宣伝」するのは、少なくともシラスでは無粋だし、厚かましいのではと思った。

でもそれを一言も伝えることはしなかった。彼にもシラスにも。

なぜか。

【かわいそう】だと思っていたから。


私は自分の目で見たわけではないが、おそらく彼は(ネット上でも実際の職場でも)「制裁」を受けてきて「疲れてる」んだろうなと思った。

ずっと他人に冷たくされてきたから、シラシーのあたたかみで、癒されてくれたらいいなと思った。

だから「それはちょっとやりすぎじゃないかと思います」と言えなかった。

ちょっとくらい、羽目を外させてあげようと思った。
他に発表の媒体がない、ハブられてる人、かわいそうな人なんだから。ここで宣伝くらいいいじゃないか。
ずっとつらい目に遭ってきたんだろうから。「ネットでも幸せに繋がれる、そんなコミュニティがあるんだ! シラスすごい! いいなあ!」と思ってほしかった。

でもそんなの「ほんとうのともだち」じゃない。
「対等な関係」じゃない。

シラスにおいて、配信者とシラシーは対等である。
シラシーは消費者、受身の存在ではない。ともに番組を構成する要素である。そして配信者も「お金をもらっているからお客様は神様」とは思っていない。度が過ぎた失礼なコメントをすれば容赦なく成敗される。

・・・何回も東さんから「対等」というメッセージを受け取っていたはずなのに。

どうして間違えてしまったんだろう。

きらわれたくなかった。

彼をずっと「ヒステリック」(・・・この言葉もいずれポリティカリーインコレクトな言葉になるだろう)に叩いてきた女たちと同じレベルの女だと思われたくなかった。彼にも、他のシラシーにも、東さんたちにも。

「私は女だけど、彼のことはわかるし、ちゃんと是々非々で評価できる。私はミサンドリーじゃない」と自分に言いたかっただけ。

どうして言わなかったんだろう。どうしてちゃんと「それはダメじゃないですか?」と言わなかったんだろう。

どうして「OL芸はもうつまらないので、自分を下げるし、内容に関係なくOLネタをぶっこむと配信者も混乱するし(でもやめてくださいとは言えないし)、もうやめたほうがいいですよ(ていうかネット好きなら、空気読めるでしょ?)」って言わなかったんだろう。

だって私たちシラシーが言わなかったら、誰が言うのだろう。
シラサー側は言えない。

いや・・・コメントでgzさんをそっと制しているシラシーはいた。でも私は言わなかった。コメントではっきり言うのは空気を悪くするし・・・gzさんが来るとみんな喜んでいたしそれに水をさして「なんだあいつ」と思われたくなかった。

どうすればよかったのか。

でももう、彼を前と同じように素直な気持ちでは応援できない。

あれほど「お世話になった人」をけなす意見に(悪気が無くても)同調したことが事実であるなら、私はそれを許せないし、忘れられないと思う。

東さんは辛い経験をたくさんしてきた。gzさんも辛い経験をしたはずだ。
にもかかわらず、東さんが一番気を付けてきたこと(差別やハラスメントは許さない)を否定するような言動をgzさんがしたのであれば、私はシラシーとして、彼を手放しで「おかえりなさい」と迎える気にはならない。

彼の教養や知識はすばらしい。人を面白がらせるテクニックもある。研究を続けてほしいとは思う。でも「またやるんじゃないか」という疑念は消えない。

私は結局、gzさんを消費してしまった。

急速な熱狂は急速な忘却を生む。もう何度もこんな経験をしてきたのに。

いい加減、学ぼう。

ごめんなさい。

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