旅行記①-こども本の森中之島

卒論が無事終わり、卒計に向けて先日安藤忠雄設計のこども本の森中之島に行ってきました。二層吹き抜けのエントランスに青リンゴがお出迎え。

内部はまさに、全てが子供を思って設計されたことがひしひしと伝わってくる空間でした。天井高や吹き抜けが思ったよりも低いのも自分が大人になったせいだと感じ、子供の時にここを訪れていたら、また違った印象を受けるのだと思います。

構造的には家具に過ぎない本棚の巨大さが圧倒的すぎて、視覚的には本棚に回廊やブリッジがくっついているように見える、本棚勝ちの空間。子供にとってみればまさに本(棚)の森。大きなエントランスから細い廊下を通り大階段と吹き抜けを見せる。空間の抑揚によってこの先に進むと何があるんだろう?感を感じます。子供にとってはよりその感覚が強まるのでしょう。通常の安藤建築が長方形なのは、定点から一気に一番奥までのパースペクティブを見せるためだと思いますが、この空間はまさしく森なので、この先に進めば何があるんだろう?と思わせるために外形が湾曲してるのだと思いました。

「森」と言う概念に対して考えてきた建築家は何人かいます。伊東豊雄はせんだいメディアテークでチューブがフロアを貫き内部に流動的な人の流れを作る森を作りました。

一方、藤本壮介はhouseNでプライベートとパブリックの間の空間を巨大な開口部が穿たれた三つの箱によって作り出しました。伊藤ほど分かりやすく森のイメージはないですが、透明性と不透明性が入り混じる空間はまさしく森のよう。

今まで、森を提唱した作品は透明性をテーマにしたものが多かった。一方安藤が立てたこの建築の答えが湾曲であることに、私は感動しました。一見外部と隔絶しているコンクリートの箱の中に、まさに森としか形容し難い空間が広がっていたからです。

本棚の隙間に細長い窓。本棚が続く単調な空間にならないよう、人工物と自然のサンドイッチによって豊かな空間が作られていました。秩序と無秩序という二面性を持つこの世界に建築をデザインすることは、このサンドイッチをいかに作ることなのではないかと、そんなことを思いました。

そして円柱空間。壁に絵本の文字やイラストが動き回るアイデアは天才的だと思いました。まるで絵本の世界に迷い込んだかのよう。子供の時に来たかった。まさに井戸の底。ここに続く通路を発見したときには子供のようにワクワクした自分に気づかされた。

「この先を進めば何があるのか」というワクワク感。子供にしか入れない狭いスペース。突如現れる井戸。そして圧倒的なサイズの本棚をつなぐブリッジ。
まさにここは、「こども」のための「本の森」。一貫した安藤忠雄の哲学を感じた建築でした。

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