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2014年ありがとうございました

 2014年も今日で終わろうとしています。今年は本当にいろんな催事を劇場で行うことができただけでなく、津市美里町にテアトル=ドゥ=ベルヴィルがオープン。津あけぼの座・津あけぼの座スクエアと共にいよいよ3つを運営していくこととなりました。また、今年は、三重県津市の演劇の取り組みを紹介したり、津が会場となって演劇に携わる方との交流があったりする1年でもありました。本当に今年はいろいろな方のお世話になりました。ご出演頂いた皆様、スタッフの皆様、劇場にお越し頂いた皆様、地域の皆様に深く御礼申し上げます。

 この数年で三重県津市は、その功績は公共劇場・三重県文化会館にあると思うんですが、演劇で話題となる街になってきました。公共劇場らしからぬ、いや、今後の劇場法による運営を考えた場合には先駆的な活動をする三重県文化会館のフレキシブルさに私たち民間劇場である津あけぼの座・津あけぼの座スクエアが協力してゆく形は、この5年、アウトリーチ企画の連携や、お食事とリーディング公演のM-PADなど、三重ならではの企画公演を行えたと思います。

 また多くのアーティストにもお越し頂き、今年4月には第七劇場がテアトル=ドゥ=ベルヴィルのレジデンスカンパニーとなることで、3つの劇場の芸術監督である鳴海康平をはじめメンバーが津市に移住してきました。こけらおとしとなった「シンデレラ」では、地域のお客様と劇場へお芝居を観に来たお客様が美里の地に集まって頂いたことは、私たちにとっても記憶に残る「幸せな時間」となりました。

「良質の演劇・舞台芸術を招聘したり、アウトリーチ活動を行う」だけでなく、次のステップである「良質の演劇や舞台芸術を製作する」ために必要な人材・環境が少しずつ調ってきたような気がします。「三重・津から全国・海外への演劇・舞台芸術発信」というのもそう遠くない時期に実現できるかも知れません。

 ただ、まだまだ課題は多く、それはまた否応なくつきつけられる1年でもありました。特に実感したことは「背伸びしている」状況にあった1年間であったことだと、私は思っています。これがずっと続けばバランスを崩してこけるのは間違いないので、いわゆる「身の丈」にあったことをやる。今一度、そこを勘違いすることなくやっていかねばならないと考えています。三重の演劇催事をやっていく強さは私たちは「言ったことを必ずやること」であると思っていますが、今年は「たどり着かず」「実現への努力や根回しが少ない」ことも多く、また、ぎりぎりの帳尻あわせで大騒ぎになって、見た目はうまく行ってるけど、本当はちゃんとやれてないという催事も多かった。これが大変悔やまれます。もちろんこれはプログラムディレクターである私の見通しの甘さによるミスです。「ちゃんとやるから、ちゃんとできる」という当たり前のことをもう一度考えなきゃいけない。才能だとか、アートだとか、そんなことよりも、ちゃんとしないといけないことはちゃんとしましょうよと言うことに、もう一度立ち返らないといけないと思います。

そして「地域を豊かにするために文化で醸成する」という言葉にすれば十数文字の事でも、それを具体的にやるにはどうするか、それに対して具体策を提案して、実際にやってきたのが三重の強みだったはずなので、今、なんだか背伸びしてしまって結局、この十数文字は、ただの「お題目」になってしまうのではないかという懸念もあります。「お題目」ではなく「生身の人間が出会うこと」という当然のこと、そこから始まる摩擦やしがらみを面倒くさがらず、むしろ面白がって私たちはやっていかねばならない。「みんなが楽しんで面白いことを劇場を使って盛り上がっていきましょうよ、それで津の街に住むことや生活に潤いが出たらいいですよね」ということでしかないはずなんですね。それをどうしてゆくかを具体的に提案する立場にあると思うんですね。それが実は出来ていないし、やってるようでやってない。だから立ち返ってちゃんとやろうと思います。

 演劇・舞台芸術は、春に種を蒔いて秋に収穫できるようなものではなく、林業に近いものだと、これは劇団太陽族の岩崎正裕さんの言葉なんですが、私たちの仕事は、懲りずに種を蒔き続けることとは言え、とにかく蒔けば良いと言うものでもないので、その土地にあった、種を蒔く、そのタイミングを見失うことなく、また育った苗を如何に成熟させていくかなどのケアも必要になってくると思います。

 2016年10月には、津あけぼの座開館10周年という節目も近づいてきました。なんとか演劇・舞台芸術の盛り上がりのバトンを次世代の人達に渡せる区切りになればともう少し精進して参りたいと思います。

 今年は本当にありがとうございました。来年もよろしくお願い申し上げます。(写真は12月上旬に津あけぼの座スクエアで行われた演劇大学in三重・畑澤聖悟さん講師による「三重の高校生とつくる『三重版もしイタ』の上演発表)

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