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日常の中のドラマを綴る

そう。わたしは、怒っていた。


仕事の疲れをいつまでも引きずり
不機嫌な夫に腹が立っていた。

・・・


週末の朝は、いつもそうしているように
リビングのカリモクのソファに
腰掛けながら、

先週買ったばかりの
本をぱらぱらと読んでいると、
寝起きの夫が降りてきた。

「あ、まだ、疲れてるな」

こういう時の夫は、すごくわかりやすい。


さわらぬ神にたたりなし


普段は滅多なことで怒らない人だけど
寝不足や疲れている時は、
あちこちに地雷が埋まっているから。


極力地雷をふまないよう
家族は慎重に振る舞わなければならない。


今日もか… と少し嫌な気持ちになりながら
下手なこと口にしないように、と
読んでいた本を持って、2階に避難した。


しばらくすると、
姉さんと楽しそうに卓球をしていた
次女の泣き叫ぶ声が、1階から聞こえてきた。


本をパタンと閉じ、耳を澄まして
様子を伺っていると
泣き声が、だんだん近づいてくる。


わーわー大きな声で泣きながら
今し方、自分に降りかかった悲劇を
言葉、途切れ途切れに訴える。


「あー、地雷を踏んだんだな」

と思った。


姉さんとのちょっとした口論だったはずが、
どこかで夫の地雷を踏んでしまい
怒られたらしい。


その時点で、
わたしは夫に腹が立っていた。


なぜ、しっかりと休養し、
昨日で疲れを取ってくれなかったのか。


今日も一日、この機嫌が悪い人に
気を遣いながら、過ごさなければならないのか。


その後も、我が家には重たい空気が流れ
わたしの口からはため息しか出てこなくなった。


「ママ、お昼食べたら一緒に、遊びに行ってくれる?」

わたしの様子を伺いながら、次女が聞いてきた。


少し寝不足だったわたしは、
苦手な運転で遠出することに、
少しためらいがあったが、
このまま、家にいたら、

つまらない日曜日

を送ることになりそうなのは予想がついた。


だったら、わたしがテンションがあがる場所へ。


「よし!みちのく湖畔公園で、パークゴルフしよう!!」

「いぇーい!」

さっさと昼を済ませると、二人で車に乗り込んだ。


湖畔公園は、何度も行ったことがあるが
自分の運転で行くのは初めて。


苦手な山道のカーブも慎重にクリアして
公園に着くと、さっきまで曇っていた空が
青空に変わっていた。


広々とした草原
広場をぐるりと囲む林。
木立の向こうには蔵王連峰が見渡せ、
思わず深呼吸をしたくなる
わたしの大好きな景色。


二人でパークゴルフで体を動かすと
気持ちも空のように雲が晴れて、
晴れ晴れとしていた。

「来て良かったー!誘ってくれてありがとね」

何度も、次女にお礼を言った。


途中、暑さと疲れで、睡魔がやってきて
次女に「少しだけ休ませて」と頼み、
芝生の広場にサンシェードを広げ、
横になる。

次女は一人でも遊べるから、と
公園で借りた輪投げを始めた。


輪投げを楽しむ次女の声を聞きながら
目をつむると、心地よい風が吹いていた。

気持ちがいいなーーー

深く息を吸うと、さわやかな緑の香りがした。


あぁ、こんな風にのんびり
自然の中に身を置くことが、ずっとなかったな


そんなことを思いながら、
いつのまにか眠ってしまった。


帰りしなに、
ずっと行ってみたかったカフェに寄り、
素敵な器と美味しいコーヒーと
ホットバナナサンドを楽しんで帰路へ。


帰宅すると、夫はいつもの夫に戻っていて
夕飯の餃子を作り終えたところだった。

お皿に並んだ焼き立ての餃子を
指でつまみ、頬張ると
パンチのある肉の味が口の中に広がっていった。

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