13回目の結婚記念日

これは、13回目の結婚記念日を迎えた一人の女性の物語です。


・・・・


2020年11月26日。
13回目の結婚記念日の朝。

普段通りに会社に行く準備をしている旦那の姿を見ながら、
わたしは、やきもきしていた。

「休み取ったで」

旦那からまだその一言を聞けていなかったから。

毎年、結婚記念日は、旦那が休みを取り、二人でご飯を食べに出かけている。
それが、今年は結婚記念日当日になったというのに、まだなんの話も出ていなかった。

(今日は、休みじゃないのね・・・)

仕方なく、旦那のお弁当の準備を始める。

けれど、残念な気持ちと、結婚記念日のことを何も触れない旦那へのちょっとしといら立ちが胸の中をぐるぐるする。

窓の外に広がる青空とは対照的に、わたしの気持ちはどんどん曇っていった。

「今日は休みと違うんかったんや」

モヤモヤとした気持ちに耐えかねて、口火をきった。

「休まれへんねん・・・。数字悪いから、またグチグチ言うやつおるし」

ちょっとバツが悪そうな様子の夫。

「え?そうなん?その人のために?」
「1日、2日で数字とれるならいいけど、結局変わらんかったら?」
「休めるなら、ランチ行って、いい気分でいる方が絶対いい!」
「せっかくの記念日!半休、半休!午前だけ仕事して、梅田で待ち合わせしよ」

毎年大切にしてきた、一年に一度の結婚記念日。
会社を休めない理由になんだか納得がいかず、ダメ元で旦那に提案する。

「悪魔のささやきすぎるやろー・・・」

旦那は少し考える様子を見せて言った。

「まあ、確かに今日やって数字あがるとか、ないな」

そうして半休を取ってくれることになり、梅田でランチをすることになった。


わたしの曇った心が、一気に晴れた。


夫と子どもを見送り、ひと通りの家事を急いで済ませる。

胸を躍らせながら出かける準備をし、ランチの店を調べて旦那にメールをした。

すると、

「早く出たらあかんで」

と不可解な返信が。

一瞬、嫌な予感が走る。

「もしやドタキャン?」


ピンポーン。

インターホンの音にハッとする。

モニターで外の様子をうかがうも、太陽の光でよく見えない。

セールスかも。出んとこ。

ピンポーン、ピンポーン。

それでも、しつこくインターフォンが鳴らされる。

仕方なく玄関の扉を開けて驚いた。

「旦那様からのお花のお届け物です。おめでとうございます!」

旦那がサプライズで贈ってくれた、花のプレゼント。

えーーーー!!びっくり!!

お花を受け取りリビングに戻ると、ラッピングを丁寧に外した。

真っ赤なハート型のボックスにかわいらしいピンクのお花がぎゅっと詰められている。

かわいい・・・!!

嬉しい気持ちで、心がふわーっと満たされていく。

<いつもありがとう!感謝してるよ!これからもヨロシク>

添えられたメッセージカードの言葉に、胸がジーンと熱くなった。

旦那に会ったら、いっぱいいいっぱい「ありがとう」と、「いつも好き勝手して言いたいこと言ってごめん」って伝えよう。


旦那に早く会いたくなって、足早に梅田に向かった。


ランチの前に寄ったのは宝くじ売り場。

「10億、5億当てて、旦那に倍々返ししたい」

ドリームジャンボで夢を買い、「俺のフレンチイタリアン」へ向かった。

美味しい食事と、素敵なお店。
そして、旦那とゆっくりといろんな話をする時間。

これからも、こんな二人の時間を大切にしていこう。

残念な結婚記念日が一転、結婚記念日にふさわしい最高の一日となった。

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