首絞め

「ねえ、殺さなくていいの?」
俺の下にいる彼女が言った。
 その声にはっとして、慌ててその細い首に手をかける。
 ぐっと力をいれてしばらくしたらきっと彼女は死ぬ。そして俺は殺人犯。
「こわいの?」
にやにやしながら彼女が言う。あからさまな挑発。
 こわい。多分。
 だって俺の手で人が死ぬのだ。重罪を犯すのだ。
「ふふ」
彼女は笑う。意気地無し。弱虫。あなたにはどうせ殺せないでしょう。そんな目をして。
 やってやるよ。
「う、ぐ……っ」
はは、彼女の顔が歪んだ。苦しそうだ。
 もっともっと、もっと。
「はは、あははは」
どのくらいしたらいいんだろう?そういえば調べてなかった。どうしよう。わかんない。やばい。
 ぎりっと俺の手に彼女の手が巻き付いた。長い爪が食い込む。刺さる。血でそう。痛い。
 俺だってできるんだ。こんなに焦ってるの見たことない。
「うは、すげぇ!俺、すげぇ!」
うわーやば。血出てきた。女の爪怖ぇな。
 力入ってるってことはまだ生きてるのか。結構かかるな。疲れる。もういいかな。なんでこんなことしてんだっけ。
 飽きた。