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生ハムを食べに行こう

 その春も、フレッシュネスバーガーではハモンセラーノ祭をやっていた。
 友人Nと神保町を探検した後、その足で秋葉原を流そうと思ったのだが、お腹が空いて須田町のフレッシュネスバーガーに寄った。
 ハモンセラーノ祭とは一体。
 よくわからないが二人とも新しもの好きだった。
 頼んでみると、どうやらハモンセラーノとはスペインの生ハムのことで、ハンバーグパティの代わりにその生ハムとチーズを挟んだサンドイッチのことだった。
 一口食べて気に入った。
 めちゃくちゃおいしい。香り、味、食感のバランスがいい。大体フレッシュネスバーガーはパンもふかふか野菜も新鮮で何食べてもおいしいが、ハモンセラーノサンドはちょっとレベルが違った。チーズもクリーミーでおいしい。トマトもみずみずしく甘酸っぱくておいしい。
 だけど高い。ハンバーグパティのあの厚みに比してぺらんぺらんの生ハムなのにこの値段。どのお値段かと言うとマクドナルドのハンバーガーの倍のお値段である。お高い。
「ねえ……」
 私が漏らす。
「私も思うよ」
 皆まで言わないでもNはわかってくれた。
「食べに行こうか、生ハム」
「次はスペインだね!」
 そうだ、生ハムを食べに行こう、スペインまで!
 きっと産地ならばこんなに高いことはなく、飽きるまで食べられるに違いない。アレだ、テッサ。ふぐの刺身。皆は考えたことがないだろうか。何故ふぐの刺身はこんなに薄く、こんなに少ないのだろうと。箸でかき集めて山ほど口に放り込みたいとか、分厚い刺身を食べてみたいとか誰もが一度は思ったことがあるだろう。あれと同じである。
 そうなるともう心はスペイン一色になる。
 本屋に行くと片っ端からスペインの本を漁った。
 それから旅行会社にも行ってパンフレットをかき集めてくる。もう旅行会社に頼むのは懲り懲りになっていて、次は全部自分で手配しようと決めているが、パンフレットは見所の情報がコンパクトに集まっているので非常に役に立つ。
 スペインの見所と行ったら、バルセロナ、マドリッド、ミハス、ロンダ。
 我が家には大好きな笹倉鉄平さんの描いたアルコス・デ・ラ・フロンテーラのポスターがある。あの場所は絶対に行きたい。
 サンティアゴ・デ・コンポステーラにも行きたいな。中世ヨーロッパでたくさんの巡礼者がここにやってきた。サンティアゴはイエスの弟子聖ヤコブのことでここに墓があるという。ただ交通の便が悪い。
 コースを二人で考えながら行けない場所と行けそうな場所をリストアップした。行きたい場所はアンダルシアに集中しているからアンダルシアには行こう。
 ダリの絵はフィゲラスで見られる。そこはバルセロナから近い。バルセロナは勿論行く。ガウディの街だ。あの有機的な建築は絶対この目で見たい。
 気分が高まりすぎて秋葉原の次は銀座に行くことに決めた。銀座にはおいしいパエリヤの店がある。みゆき通りにあるエスペロという店でおいしさにいつも感動する。
 今夜はスペイン祭だ!

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