【一、神社参拝の作法について】

一般的な神社にお参りする際の基本的な作法につきまして、私が知っている範囲でお伝えさせていただきます。すべてを完璧にマスターする必要はありませんので、お気軽に読み物として楽しんでいただけると幸いです^^。

まず最初に大きな流れをご説明すると、以下のようになります。

1. 鳥居をくぐる前に軽く一礼をする
2. 参道を通って手水舎に向かう
3. 手水舎で手と口を清める
4. 参道を通って拝殿の前まで進む
5. 賽銭箱の前で会釈をし、賽銭を入れる
6. 鈴を鳴らす
7. 「二礼二拍手一礼」の作法で拝礼する
8. 参道を戻り鳥居を出たところで再度本殿に向かって軽く一礼をする

では、一つ一つ詳しくお話ししてゆきます。

なお、それぞれについて、[基礎](必ずやるべきこと)、[上級](やらなくても構わないこと)、[その他](補足や雑知識など) 等、項目立てて書いているので、ご自分の興味レベルに合わせて読んでいただいて構いません。


1. 鳥居をくぐる前で軽く礼
鳥居は神社の玄関口であり、人間の世界と神様の世界とを隔てる結界の役割を果たします。
[基礎]
軽く一礼をしてから「お邪魔します」という気持ちで入ります。この時、鳥居の真下は踏まずにそっと越えるようにしましょう。(敷居を踏まないのと同じです)
[上級]
鳥居をくぐる瞬間にも頭を低くして通るとより丁寧です。
[その他]
鳥居および境内は結界で守られた“神様の領域”(ご『神域』しんいき)であるため、「鳥居をくぐると空気が変わる」と感じる方も多いと思います。

2. 参道を通って手水舎へ
参道の真ん中は“神様の通り道”(『正中』せいちゅう)であるため、原則として人間は通ってはいけません。(お正月など人で混み合っている場合はやむを得ません)
[基礎]
たいてい参道は左側通行が主ですが、別の通行方法の時もあります。その場合は立て札等の指示に従ってください。
[その他]
参道に玉砂利が敷き詰めてある理由ですが、「お清め」が主な目的です。砂利を踏む“音”がお祓いになる、足の裏から現在持っている邪気を放散する、など諸説が有り、神前に進む前にしっかり心身を清められるようになっています。(舗装されているのは現代風の配慮です。)

3. 手水舎で手と口を清める
柄杓の水で以下の通り手と口を清めます。(1杯の水ですべてのことを行います。)
① 柄杓を右手で持ち、水を汲み、まずは左手に水をかけて清めます。
② 柄杓を左手に持ち替え、右手を同じように清めます。
③ 柄杓を再び右手に持ち替えて、左手のひらに少し水を貯めます。
④ その水で口をすすぎます。(衛生上、飲まないでください…)
⑤ 口をつけた左手をまた水をかけて清めます。
⑥ 柄杓を立てながら残った水で柄の部分を洗い流し、元に戻します。
[基礎]
大國魂神社のHPでは途中で再度水を汲んでいますが、基本的には1杯の水ですべてを行います。また、神社によっては手水舎の水が出ていなかったり汚れていたりする場合がありますが、その場合はこの3.は省略して構いません。(むしろやめておいてください…)

4. 参道を通って拝殿の前へ
[基礎]
2.と同じように正中は避けて神前へ向かいます。ただし、拝殿の前では真ん中(正中)に立っても差し支えありません。
[その他]
一般の方はここまでしなくて構いませんが、神社の神職(神主)や巫女は、正中を横切らなければならない時にはその三歩ほどの間、腰をかがめて頭を軽く下げながら通過します。

5. 賽銭箱にお賽銭を入れる
特に作法の断り書きが無ければ、お賽銭→鈴、の順序で行います。
[基礎]
① 軽く会釈をし、賽銭箱に進みます。(お賽銭はすぐ出せるように準備しておきます)
② 「神様に日頃のお陰を感謝する」という気持ちで、賽銭箱に“そっと”賽銭を入れます。(特別な風習が無い限りは投げて入れてはいけません…)
[その他]
お賽銭は『願い事を叶えてもらうための代償』ではなく、『神様への『日頃の感謝』を込めた奉納品(かつてはお米(初穂)を和紙で包んで奉納していた)』です。そのため、金額の多寡は問いません。金額が大きければ願いを叶えてもらえる可能性が上がるということもありませんし、額が少ないからと言って願いを叶えてもらえないということもありません。「5円の倍数が縁起が良い」など語呂合わせや数々の説もありますが、神社側での根拠はないようです。

6. 鈴を鳴らします。
鈴が有れば鳴らします。(3回くらいが目安)
[その他]
鈴を鳴らす意味ですが、諸説あり、私は二つ聞いています。
A.神様に「お参りに来ましたよ」と知らせる役割
B.鈴の“音”で自分をさらに清める役割

A.については分かりやすいと思うので、B.についてもう少し詳しくご説明します。

神道では“清浄であること”を最も重視します。3.の手水についても昔は手水舎ではなく、自然の川・海などで禊をしてから(あるいはそれらをざぶざぶと渡って行って)神前に参る、というのが正式な作法でした。
それほど神様は“穢れ”というものを嫌うので、境内に入ったらまず玉砂利を踏んで清め、次に手水で清め、更に鈴の音で清め、と徹底的に自分を祓い清めてから神様へ向き合うべし、というのがB.の考え方です。


鈴については、ご祈祷をしてもらった際、頭上でシャラシャラと鈴を振ってもらった経験のある方もいらっしゃるかと思います。あれは『鈴祓い』と言います。音で邪気を払っています。
 
7. 二礼二拍手一礼
「二拝二拍手一拝」と言われることもありますが、おおよそ同じ動作です。(正確には“礼”と“拝”ではお辞儀の角度が異なるのですが、一般の方は気にしなくて構いません。なるべく地面と水平になるように心がけてください)
[基礎]
① まず2回、深く礼をします。
② 両手を胸の高さで合わせ、柏手を2回打った後、祈念(※)します。
③ 最後に1回、深く礼をして、退出します。
[上級]
① まず2回、深く礼をします。
・角度は90°を目指したいところ(慣れないと難しいです…)
② 両手を胸の高さで合わせ、柏手を2回打った後、祈念(※)します。
・打つ前に両手を合わせた際、右手を関節一つ分ほど下へずらします。
・右手を少し膨らませた状態にして打つときれいな音が出やすいです。
・打ち終わったら指先は元のように合わせます。
③ 最後に1回、深く礼をして、退出します。
・①と同じく、角度は90°を目指したいところ…。
[超上級]
①の前、③の後に『小揖』(しょうゆう/ 15°程度の軽いお辞儀)をします(…が、行うのは神職(神主)や巫女くらいですので一般の方は行わなくて構いません。)
[その他]
柏手の数について。伊勢神宮や出雲大社のように本来は「二拍手」ではないと言われるお宮もありますが、別格の特殊な作法であるため、神職ではない私たち一般参拝者は行ってはいけないという説があります。そのため、伊勢でも出雲でも、どこのお宮でも基本的には二礼二拍手一礼でOKです。(案内書きなどが有ればそれに従ってください)
[S級雑知識]
※[上級]で“右手を少しずらす”理由について
神道では「左手は霊(魂のようなもの)を表し、右手は肉体を表す」という考え方があります。
右手(肉体)を少し引く、ということは「魂の方が肉体よりも上位ですよ」という法則(『霊主体従』れいしゅたいじゅう)を体現していることになります。
(内容が深いのと私自身もまだ完全には理解できていないため、これ以上の詳細はご容赦ください…)

【(※)祈念のお作法】
ここがまさにお参りの中心で、かつ最も諸説紛々の箇所です。
ひとまず私が採用している方法をご紹介しますが、「絶対にこうでなければならない」ということではありません。また、①~③の順序も自分では明確には決めておらず、その時の感覚で行っています。

二礼二拍手の後に以下のことを念じます。内容は口に出しても構いませんし、出さずに心の中で唱えても構いません。
① 挨拶の言葉
例:「○○神社の神様、初めまして/こんにちは/いつもお世話になっております」
② 自己紹介
自分の住所、生年月日、生まれ年(干支)、氏名を伝える。
(再訪であっても、神様は毎日何千人何万人という人間と会っているので、その都度名乗らないと覚えていないという説があります…)
例:「わたくしは、愛知県○○市○○町〇番地 ○○アパート〇号室に住んでおります、昭和〇年〇月〇日生まれ、〇年(干支)生まれの○○○○(フルネーム)と申します。
③ 神様への感謝の言葉
例:「本日はお参りさせていただきまして/御縁を下さいましてありがとうございます」「いつもお見守りいただきましてありがとうございます」 etc…
④ 願い事があれば願意、願いが叶ったお礼参りであればお礼の言葉
例1「この度は、折り入って○○のお願いがありましてお伺いさせていただきました。と申しますのは…(以下、願意)…何卒お力添えのほど、よろしくお願い申し上げます。」
例2「おかげさまで、○○の願いが叶いました。謹んでお礼を申し上げます/ありがとうございました…(以下、お礼の言葉)」
⑤ お礼の言葉で締めくくる
例:「お聞きくださいましてありがとうございました」
※願いが叶う/叶わないの前に、まず “話を聞いていただいた” ことに対してお礼を述べます。

《祈念のポイント》
・これらすべてをご神前で行っているととても時間がかかるため、ほかにも参拝者がいる場合にはご神前でここまでやってはいけません。二礼二拍手一礼だけ行って速やかに次の方へ場所を譲るのがマナーです。その場合には他の方の迷惑にならない他の場所(拝殿の横など)で行いましょう。
・③神様への感謝の言葉は重要です。一方的に願い事をばかりを投げつける人間が多い中で「おっ、なかなか感心なヤツがいるな」と神様の覚えがめでたくなるとかいう話を聞いたこともあります。(とはいえ、「よっしゃ!じゃあとりあえずで言っとこ!」という下心ではどうなのかは分かりませんが…^^; ともあれ、ひとまず「参拝できた」ということは「ご縁をいただけた」ということなので、それだけでもお礼を伝えると良いかもしれません)
・④願い事について。基本的に神様は棚ぼた式の開運は下さらないと言われています。(例「✖宝くじが当たりますように」) 多くは、本人の努力に対して“助力する”という形で願いを叶える方法を取ります。(日本の神様は頑張る人が大好きです) ですので、たとえば「もっとお金が必要だ」という願いであれば「家族のためにマイホームを建てたいのですが、今の収入では難しいです。私自身も、昇給するよう仕事を頑張りますので(転職先を探しますので)、何卒収入が上がりますよう(良い転職先が見つかりますよう)お力添えをいただけると幸いです」のように、「自分はこういうことを願っている。ついては、自分もこういう努力をするので後押しをお願いしたい」というお願い形式をお勧めします。(「願う」というよりは「頑張る決意を告げる」という方が正確かもしれません。)人の手でできることは人の手で、人ではどうにもできないことは神様に助力をお願いするという、『人事を尽くして天命を待つ』が神様へのお願いの基本姿勢です^^。

8. 鳥居を出たところで再度軽く礼
2.と同様、基本的には左側通行、正中は避けて歩きます。
鳥居を出たら振り返って、神様とご縁を結べた感謝の思いとともに一礼して退出しましょう。


《参拝全体を通しての注意事項》
・境内のものは原則として、授与品やおみくじなどの正式にいただいたもの以外は持ち出し禁止です。『神様の領域のもの』なので、勝手に持ち出すのはよくありません。
(動物、昆虫、植物、石、木の枝や葉っぱ、本来であれば…土も…💧)
・鳥居をくぐったらそこは神様の世界『神域』です。大声で騒いだり、はしゃぎすぎないように注意しましょう。
(本当の本来は、ご神域では一切おしゃべりせずに参るのが神様に対するマナーなのですが、団体で行く場合にそれは厳しいので、せめて羽目を外さないくらいにしましょうね^^; →そのため、心底お願いしたいことがあるときは一人で参拝する方がベターかと思います)


【まとめ】
以上、ここまでお読みくださいましてありがとうございました。
ともあれ、これまでに述べた事はあくまでも「よく使われている」作法である、というだけです。
神様は人間の『まごころ』を何よりも喜びますので、この作法の中で多少順番が前後しても、抜けがあったとしても、神様が怒ったりバチを当てたり、ということは全くありませんので、安心して参拝に臨んでください。
日本の神様は、『親』のような存在なので「人間(我が子)がわざわざ自分を慕って来てくれる」というだけで嬉しいのだそうです。
どうか皆様、故郷のご両親に会いに行くような、長らく会っていなかった親戚に会いに行くような、そんな懐かしい気持ちで神社へお出かけください。
神様はいつでも皆さんの訪問を待っていらっしゃいます(*´ω`*)

長文の乱筆乱文、失礼いたしました。


2017.07.18 気学部神社分科会まほろば ゆーみ


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