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【最新】CAR-T療法|多発性骨髄腫 (MM)

2022/11/3時点でFDA承認済み、かつ多発性骨髄腫 (Multiple Myeloma; MM) を対象としたCAR-T療法には、Abecma(一般名 idecabtagene vicleucel)、Carvykti(一般名 ciltacabtagene autoleucel)の2製品があります。それぞれ違いを見ていきましょう。

開発会社

ブリストルはAbecma以外にもBreyanziというCAR-T製品を上市していますね(NHL対象)。ヤンセンは初CAR-T製品です。バイオベンチャーが発見したアイディアをメガファーマが実用化(製造・開発・販売)するという近年よくあるケースです。

対象ライン

両製品とも現時点では5次治療以降の選択肢ですが、より早期の治療ラインの治験も実施中です。

売上高

売上高の推移

2022年第3四半期は、2021年に先行して上市されたAbecmaがCarvyktiの約2倍の1.07億ドル売り上げています。Carvykti売上が今後どのペースで伸びるかに注目しています。

抗原結合部位

いずれのCAR抗原結合部位も、BCMAという多発性骨髄腫に多く発現している分子をターゲットにしています。違いは、AbecmaはBCMAを認識する部位が1つ、Carviktiは2つあり、CarvyktiはよりBCMAとの結合を高める目的でデザインされたようです。

有効性

圧倒的にCarvyctiの勝利ですね。sCR(厳格な完全奏功; stringent complete response)が82.5%は驚くべき数字です…。上記の抗原結合部位の工夫が有効性に寄与しているようです。

安全性

こちらはAbecmaに采配が上がりました。Carvyktiでは神経毒性が問題になっており、Grade 5(死亡)のICANSや、Abecmaでは注意喚起されていないギラン・バレー症候群パーキンソニズムがあります。

*ICANS: CAR-T療法によっておこる神経毒性; immune effector cell - associated neurotoxicity syndrome
*ギラン・バレー症候群: 末梢神経障害によって、力が入らない、しびれるなどの症状がでる
*パーキンソニズム: パーキンソン病とは別の原因により生じるパーキンソン病の症状 - 緩慢な動作やふるえなど

市販後の供給課題

両製品とも供給が不足しており、治療を受けられるまでの患者の待期期間中央値は6ヶ月、最終的に待機リストにいる患者の25%しか治療できていないようです。供給不足の原因として以下が挙がっています。

・製造(遺伝子導入)に必要なウイルスベクター不足
・臨床試験で要求された基準より、市販品で要求されるFDAの品質管理基準の方が厳しい
患者のT細胞の生存率がFDAが規定した基準を満たさない
製造過程が非常に複雑で、簡単に・短期間でスケールアップすることができない

まとめ

Carvyktiの方が有効性は優れている反面、安全性に問題があり、先行品のAbecmaの方が売れている状況です。今後Carvyktiがどれほど売り上げを伸ばしていくかが気になるとことです。また、いずれも供給課題があり、「有効性・安全性のバランスが取れ、既存の製造課題を克服したCAR-T製品」がアンメットニーズとしてありそうです。

治験中のライバル

Arcellx社、Gracell社、Oricell社などが多発性骨髄腫を対象としたCAR-TのPhase 1試験をすすめています。それぞれの会社が上記のアンメットニーズを克服できる製品なのか、後日紹介していこうと思います。

参考文献

1. Munshi et al. NEJM 2021, DOI: 10.1056/NEJMoa2024850
2. Usmani, S. Phase 1b/2 study of ciltacabtagene autoleucel, a BCMA-directed CAR-T cell therapy, in patients with relapsed/refractory multiple myeloma (CARTITUDE-1): Two years post-LPI. Abstract #8028 [Poster]. Presented at the 2022 American Society of Clinical Oncology Annual Meeting.
3. FDA Package Insert - ABECMA
4. FDA Package Insert - CARVYKTI
5. Kourelis T, et al: Ethical challenges with CAR T slot allocation with idecabtagene vicleucel manufacturing access. 2022 ASCO Annual Meeting. Abstract e20021.
6. Anderson LD, et al. Idecabtagene vicleucel (ide-cel, bb2121), a BCMA-directed CAR T cell therapy, in relapsed and refractory multiple myeloma: updated KarMMa results. ASCO 2021 Virtual Scientific Program. Abstract #8016.

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