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集束超音波による血液脳関門の開通とアルツハイマー病治療薬aducanumab

January 4, 2024
N Engl J Med 2024; 390:82-85
DOI: 10.1056/NEJMe2311358

要旨

抗アミロイド抗体は、アルツハイマー病患者のアミロイドβ(Aβ)負荷を軽減するために使用されてきた。ウェストヴァージニア大学ロックフェラー神経科学研究所において、3人の被験者に対し特定の脳領域にアデュカヌマブ投与と同時に集束超音波(FUS)を照射し、血液脳関門(BBB)を一時的に開通させた。AβレベルをPETで測定したところ、集束超音波が照射された部位で対側半球の同領域よりもアミロイド減少が顕著だった。認知機能検査と安全性評価は、治療後30日から180日にわたって行われた。有害事象は目立たなかった。2名の患者においては症状の進行が抑えられた。

感想

たった3例でNEJMに掲載されるのかと驚いたが、それだけアルツハイマー病がもつ社会へのインパクトが大きいからなのだろうか。
FUSによる脳へのドラッグデリバリーに関する話題は近年よく耳にするようになった。下記reviewによると、脳腫瘍領域ではglioma、転移性脳腫瘍(乳癌、黒色腫)などで臨床研究が行われている模様。

Thavarajasingam SG, et al. Methodological and ethical challenges in the use of focused ultrasound for blood-brain barrier disruption in neuro-oncology. Acta Neurochir (Wien). 2023 Dec;165(12):4259-4277. doi: 10.1007/s00701-023-05782-5. Epub 2023 Sep 6. PMID: 37672093; PMCID: PMC10739192.


FUSだが、日本では2019年に本態性振戦に対する機能的定位脳手術が保険適応となり、その後パーキンソン病が追加されている。保有している施設も徐々に増加し、下記サイトの情報によると18施設になっている。

低侵襲であることは間違いないが、その一方で広く剃毛が必要、頭蓋骨が厚いと効果が下がるなどの問題はあると聞く。今後も注目していきたい。

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