再発神経膠芽腫に対する再照射について

BEV+再照射 とBEV単独を比較したPhase II試験
Tsien, CI et al., NRG Oncology/RTOG 1205, JCO, 2023

要旨

  • 目的: 再照射と同時期Bevacizumab(Bev)投与がBev単独と比べて全生存期間(OS)および無増悪生存率(PFS)を改善させるのかどうかについて検討。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、奏効率、治療関連有害事象、遅発性中枢神経毒性とした。

  • 方法:Phase II、前向きランダム化比較試験。層別化因子は年齢、摘出手術の有無、KPS。対象は、化学療法放射線療法(chemo-RT)が完了してから6ヶ月以上経過した再発GBM患者。BEVは未投与。再照射(re-RT、35 Gy10分割)+BEV投与(10 mg/kg、2週間ごとに1回)、ないしBEV単独の二群に1:1でランダム化割付が行われた。

  • 結果:2012年12月から2016年4月までに、182例の患者が無作為に割り付けられ、そのうち170例が適格であった。追跡期間中央値は12.8ヵ月であった。BEV+RTによるOSの改善はみられなかった(ハザード比、0.98;80%CI、0.79~1.23;P =0.46)。生存期間中央値は、BEV +RT vs. BEV単独で10.1ヵ月 vs 9.7ヵ月であった。PFS中央値はBEV+RTのPFS中央値は7.1ヵ月 vs. BEV単独 3.8ヵ月(ハザード比、0.73;95%CI、0.53~1.0;P = 0.05) 6ヵ月PFS率はBEV群29.1%(95%CI、19.1~39.1)からBEV+RT群54.3%(95%CI、43.5~65.1)に改善した。
    有害事象に関しては急性期にgrade 3を5%で認めたが、重篤な遅発性有害事象は認められなかった。ほとんどの患者は再発性GBMで死亡した。

  • 結論:本研究は再発GBMに対する再照射の安全性と有効性を評価した初の前向き多施設共同ランダム化比較試験である。総じて再照射は安全で忍容性が高いことが示された。BEV+RTはとくに6か月以内の臨床的有意義なPFSの改善を示したが、OSには差がなかった。


<論文の内容に関するメモ>

  • OSの予後良好因子について: 若年、良好なKPS、MGMTメチル化

GTV中央値 18 ml (0.5-208ml) / PTV中央値 54ml (4-412ml)

組み入れ除外基準:6cmを超える腫瘍、多中心性、髄膜播種ないし上衣下進展あり

<気になった点>

照射方法と照射範囲について
 線量は一律35Gy/10fr
 主にIMRT(86%)だが、3D-CRT、proton、その他なども含まれている 
 
GTV=増強部分
PTV=3mm以上のマージン付加
→ あくまで増強部分をターゲットの基準としており、FLAIR範囲やほかの定性的画像診断は含まれず

症例登録が予想したように伸びなかったため、適格基準が途中で変更されている。KPS60以上、再発腫瘍6cm以下、多焦点性再発(総合して6㎝以下)は除外されなくなった。これにより、OSに関して有意差が出にくくなった可能性はある。

感想

再発膠芽腫に対する治療は確立しておらず、いまだ予後は厳しい。さまざまな研究が進められており、新規治療としてBNCT、ウイルス療法なども実用化しつつあるが普及にはまだ時間がかかりそうである。BEV+RTは地味で、姑息的な手段ではあるものの、安全性・有効性の点において比較的安定しており、引き続き集学的治療における重要な駒になりうると考える。

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