山田植栽

ダイニングルームは必要か?

昭和の時代のそれも昭和40年代くらいのちょっと広めのマンションやちょっと高級な建売などの間取りによく「応接間」という言葉が出てきました。
一般家庭で「応接間」ですよ! これは想像ですが、英語のGust Roomを無理やり翻訳してできた部屋名かと思ってしまいます。

我が家にもありました。「応接間」と呼ばれている部屋が。でも結局その部屋はお正月に父の会社の人が来て麻雀をするときくらいしか使われているのを見たことがありません。
さらに、不思議なのは父と母の寝室にはその「応接間」を通らないといけない動線になっていたことです。
北側の部屋で来客を通すのには向いているとは思えない部屋でした。
我が家にお客様がくるとそれとは反対側の南側の大きな窓があるリビングに通します。ソファがあって、いつも明るくて一番心地よい部屋です。

私が子供だった頃友達の家に行くとだいたい「応接間」があってそこには季節が違う洋服や使わなくなったおもちゃなどがしまわれた、立派な納戸のようになっていることがほとんどでした。

「あ〜! そこ汚れてるから開けないで!」とか言われるような部屋は大概「応接間」という名前で作られた部屋。対して心地よくもなく割と狭いので物置と化してしまうのです。

さすがに最近は応接間があるうちは絶滅危惧種だと思いますが(大豪邸でいくつもゲストルームがあるような家は別です)

応接間とまでは言いませんが、ダイニングルームというものも、この狭い都市部の貴重な住宅事情で本当にいるのでしょうか。
実は我が家は長いことダイニングテーブルで食事をしていません。
きっかけは母が10年ほど前に圧迫骨折で腰を痛めてからダイニングチェアに座っているのが苦痛になったことでした。
一日の大半をリビングのソファで過ごします。
うちのリビングには少し広めのテーブルがあります。
床が絨毯ということもあり、母はソファに座って、私はその隣で絨毯に正座して食事をするというスタイルを取っています。

ソファーセットのところに正座する体制ってあまり格好がいいものではないですが、日本人って結構そうやって使っている人多いと思います。

例えばうちでホームパーティをするとき。日常使っているテーブルにもう一つテーブルを繋げて、ソファに座りたい人はソファに、ソファがない位置に座る人は正座やあぐらなどで、延長されたテーブルを囲んで約10名くらいまでなら優に座れるので、そのスタイルでパーティをします。

ダイニングとキッチンがひとかたまりで、飾り棚で仕切られてリビングがあるという構成だから、ダイニングはかなりプライベートな空間で人を招き入れるというよりキッチンの作業台のように使っています。

テーブルには4脚椅子が付いていますが、私が調理の合間に座るくらいでほとんど使いません。
母が元気だった時もリビングで食事をする比率がだんだん多くなっていたように覚えています。

例えば、ダイニングルーム、もしくはダイニングコーナーとなっているところは家事室とするとか、ちょっとした書斎コーナーにするとか。
隠れ家的な読書コーナーにするとか。趣味の部屋にするとか……。

限られた住空間をもっと個性豊かな「その家族らしい」ものにしていっても良いと思います。

リビングで食べることに抵抗がある場合は、いっそお庭をダイニングにしてはどうでしょう。
アウトドアテーブルセットを置いて、寒さ対策にはアラジンのだるまストーブ。夏の日よけにはオーニング。ちょっとした雨も防げます。庭の木々や小鳥の声を聞きながらの食事は最高の贅沢です。

下の写真のお宅はできるだけ庭のテラスで食事をする期間を長くするのに、よくカフェの屋外席にあるようなビニールのカーテンで風除けまで作りました。



晩婚で60歳を過ぎてもまだまだ新婚気分のような仲良しのご夫婦ですが飼っていらっしゃる猫と野良ちゃん数匹とで賑やかにこのテラスで食事をした後も何時間も過ごされるそうです。たった一枚のビニールカーテンですが随分効果があったそうです。

屋外の大敵は暑さ寒さと雨と蚊。これらのうち暑さ寒さと雨に付いては色々な対策方法があるのです。
いっそダイニングルームは家の中に作るのをやめて、ダイニングガーデンを広く素敵な空間にしてみませんか?

小鳥のさえずりを聞きながらの食事は室内のダイニングでは絶対に味わえない贅沢な演出のはずです。


家づくりの「当たり前」を疑うことから始めてみませんか?

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