人造大理石

素材の魅力-4

「人造大理石のメーカーなんですが……」

昨年の6月ごろだったと思います。あぁ、また営業の電話か。会社にかかってくる電話はその大半が営業の電話で、正直その時もすぐに電話を切るつもりでした。

「あぁ、うち庭や門周りなんかを設計する会社で、人造大理石って、キッチンや洗面のカウンターとかですよね? 屋外で使えないですよね。いらしていただいても多分使うことないので」

と答えると、その営業レディの答えは意外なものだったのです。

「人造大理石、屋外でも使えるんですよ。まずはサンプルとカタログをお持ちするので会うだけでもあっていただけませんか?」

数日後3cm角ほどのサンプルがぎっしりと高級なお菓子の箱のような入れ物に詰まったサンプル帳と海外の事例がたくさん載った洋書のような素敵なカタログを持って彼女は事務所に来てくれました。

そのカタログには今まで見たことがないような人造大理石の使用例が出ているのです!

この写真の白いパーゴラ(屋根のようになっている部分)は人造大理石です。よく木や金属でこのような形を作ることはありますが、ペンキで白くぬった木よりモダンな印象になります。鉄で作ると数年後に塗装のメンテナンスの必要が出て来ます。マットな質感、雰囲気ともにモダンな雰囲気にとてもよくあっていると思いました。人造大理石をこのような使い方をしているのは初めて見ました。

こちらの庭の手前の家具も白いところは人造大理石でできているそうです。
目からウロコが落ちる思いでした。人造大理石は昔から知っていたけれど、屋外でこのような使い方ができるとは考えてみたこともなかったからです。
次の写真の細かい細工も驚きでした。

この植物のような模様のカットは人造大理石の板を切り抜いて作っていると言うのです。繊細だと思いませんか?

早速どこかの現場に入れてみたくなりました。ちょうどその頃あるおたくのお庭に水盤を計画している最中だったのでその水盤の水が湧き出るオブジェとして人造大理石が使えないか考えてみました。

サンプルの中に光を通すものもあったので、オブジェはそれを使ってシンプルに立方体にしました。中に照明を仕込みます。ディテール(細かい部分)まで丁寧に製作してくれる工場を紹介してもらいました。

簡単な図面を元に工場の方との詳細の打ち合わせが始まりました。

「コーナーのところを少し丸みを持たせるようにしないと、コーナー部に光の影ができてしまうのです」

パッと見はコーナーができるだけシャープな方が格好がいいのですが、影はいけません。経験豊かな工場のスタッフの意見に従うことにしました。

それからも吹き出し口の位置や深さなどについて数回の打ち合わせの後完成したのが下の写真の白い立方体の水のオブジェです。



夜の姿はこちらです。

石風の水盤に神秘的な光が加わりました。

今回使った人造大理石はほんの小さな部分でした。次回はもっとダイナミックで効果的な使い方をしてみたいと思っています。

伝統木工技術の一つの組子なども屋外であのような細かい木の製作は難しいと思いますが、人造大理石ならできそうです。

今年はどんな人造大理石の使い方をしていくか、どのタイミングでご提案しようか、とてもワクワクしています。


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