レールが垂直に交わるところ

なんてことはない。
日本ではあまり見られないが、大陸の鉄道では、意外にも2つの垂直に交わる十字のレールがある。
分岐器ではないからまっすぐにしか行けない。

私はそのとき、都内のどこか。
複線の十字に交わる線路の中にいた。
電車は漢字の井、の中の真ん中にいる私など介すこともなく平気で上下左右からやってくる。

私は怯える美しい女性の肩を腕に、大丈夫だから…と言っても、その細い肩は震えたまま。

どれだけ声をあげても手で合図したとしても、電車の運転手はスピードを落とすこともなく、絶え間なく走りすぎる。

その女性は実はおびえてなんかおらず、私の隙をうかがっていて、私の所有する何かを奪おうと虎視眈々だったようだが、電車の合間をものすごい早さで縫って抜けていった。

私ひとりになり、あぐらをかいてウトウトすることにした。

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