ネギと葡萄

朗読の時間です。

本日は、
 原作 こそ泥太郎
「文子林人生の選択」第3章

少し曇った冬の日
昨日の雪は溶けかかり、少しひんやりとした風が頬をなでる

長い髪を風に揺らし、八百屋の前に立つ文子林

その黒髪は妖精の祝福
その眼差しは、月の輝き
サキール神に祝福され
ボルテックスを生き延びた彼女

八百屋の店主は、毎日この時間に現れる彼女を待っていた。
その祝福されし姿と
気さくな言葉は、疲れた彼の心を幾度となく癒やしていた。

店主は、今日のオススメ、長ネギを勧めてきた

文子林は、そのスラッと長い手を伸ばし、1本のネギを手に取ると
潤んだ瞳で、緑の葉を見つめている

店主は、文子林の瞳をネギ越しに見つめながら、心の奥にある言葉を押し殺す。

彼女は、YouTubeにも出演している高嶺の花
YouTubeでは相棒を笑い殺すなどと言われているが
今ここにいる姿はそんな姿ではない

ネギを3本ほど選んだ文子林は店内を見回っていた

すると、どこからか甘い香り

今まで感じた心の高鳴りを感じる

振り向くと、そこに!

薄い黄緑色の姿は
たわわとなり
美しき一粒一粒は輝きと、かぐわしき香り

その名を
シャインマスカット

1Kg3000円

心臓の鼓動が早くなる自分に
文子林は何が起きているのかわからない

これは何?
多くの恋を経験してきた彼女は
今までに感じたことがないこの感情に翻弄されていた

文子林を見た男たちは
いつも彼女に対して、同じ感情を抱いていた
それが、今まさに彼女の心に
大きな嵐を起こしているのだ

膝に力が入らない、、

あやうく膝をつきそうになる文子林を
店主が支える

心配そうに店主が見つめる

だが、文子林の視界にはそんな存在はいない
今見えているものは
芳醇な香りを放つシャインマスカットのみ

次の瞬間
店主は、文子林に一粒手渡す

高鳴る鼓動

これを食べて良いのか?

食べた瞬間、
私の人生は終わってしまうのではないか?

走馬灯のように、多くのネギの記憶が蘇る

この出会いにどんな意味が隠されているのか?
多くの期待と葛藤を心に、一粒を口に運ぶ、、、


原作 こそ泥太郎
「文子林人生の選択」第3章
読み手:すしF太郎 でお送りしました。

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