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【スイクラ】02:Vita版とSwitch版の古橋旺一郎

Vita版とSwitch版における古橋の表情の違い

Vita版とSwitch版では共通編から古橋編における古橋の表情が違うことを前回の記事で指摘しました。今回はその違いについて考えたことを書きます。

両作での違いを大まかにまとめます。Vita版では正面を向き、険しい表情を浮かべることが多い。対してSwitch版では全体的に表情に力みがない。共通編と奇劇編では文字通り斜に構えていることが基本態となり、古橋編前半では汗をかいていることが増えました。話が進むにつれてVita版との違いが少なくなっていき、シーンによっては一切変更がないことも。

上記への解釈としては、Vita版では「纏う空気は愉しい感情を全て前世に捨て去ってきたかの如く重苦し」いこと、根の実直さ、表出する感情の「地味さ」がよく表れていました。

対してSwitch版は「すべてがどうでもよ」いために「いつも飄々とした」投げやりな態度だったのが、専属オフレンダに選ばれて以降は役目に取り組む中での心中の動揺や焦り、余裕の無さが汗として表現され、過去と向き合い己を取り戻すことによって文字通り真っ直ぐ向く姿が増えていくという、古橋の心の変遷が表に出ていたように感じました。

表情が変更されていることに気づいたとき、懸念がありました。Vita版では険しかった表情が徐々に柔らかくなっていくのが好きだったのですが、Switch版で斜に構えてる時って基本的に表情がゆるいんですよ。これではVita版での表情の変遷が損なわれやしないだろうかと。全然でした。

むしろ序盤で人を小馬鹿にしたような細目での笑みをひたすら見せつけられたから(あの「ごきげんよう」とても良かった)、後半に見せてくれる明るい笑顔、こぼれるような微笑が味わい深くなりました。主人公(柘榴ちゃん)の手を取り立ち上がるシーンが何の衒いもない笑顔になったのを見た瞬間は思わず叫びました。いやはや古橋は美しい。

Switch版で強調された古橋旺一郎の悪魔性と王威

表情の変化で感じたことがもう一つ。目の印象が強くなりました。

Switch版で斜に構えているときは視線を逸していることも多く、近づかれたり真っ直ぐ向かれて金緑色の双眸がこちらに注がれた時に思わず緊張することが時々ありました。おかげで物語の後半で主人公がこぼす「あの目に見られても怖くなくなった」という言葉を実感とともに理解できるようになりました。

目の印象が強くなったのは画面の解像度が上がったこと、縦横比や画面サイズが変わってそもそも絵が大きい印象になったことも影響してると思いますが、そうした環境の変化と表情の変化が相乗効果で印象を大きく変えたように感じます。

緑の目は魔性の目、でしたか。奇劇編で古橋は悪魔を「人ならざる力を持つ、神を嘲笑い人を蠱惑する存在」と定義しますが、Switch版の古橋はなるほど悪魔スイートクラウンの対存在で彼もまた悪魔なのかと思わされるものがありました。

蠱惑といえばSwitch版では古橋が主人公に近づいたり遠ざかったりする時に、衣擦れの音が一部追加されています。あれは所作の色気を感じてしまいなかなかに心臓と呼吸に悪かった。古橋旺一郎は紛れもなく人を蠱惑する存在だ。

増したのは魔性だけでなく王威もありました。斜に構えていることが多くなった分、正面を向いたときの「威圧感が半端ない」。

際立っていたのはオフレンダ会議中に日之世を諌めるシーン。ふと正面を向いて言い始めたとき、圧を感じてびっくりしました。あれは王者、裁定者としての諌めだった。魔性と王威を増した古橋は「赤い服の王様ここにあり」という感じでした。

古橋旺一郎はVitaとSwitchの両作を経て完成する

Vita版とSwitch版の表情から感じた古橋は、どちらも作中で語られている彼の姿そのものです。なので互いが互いを補完してやっと古橋旺一郎という人物像が完成したように感じます。

たとえば日之世が蠱毒を説明するシーン。Vita版では日之世が話し始めると古橋はすぐに動揺を見せます。私はこの時に「古橋は蠱毒の知識が備わっており、導入だけで日之世が何を言おうとしているか察することができるだけの知性がある」と解釈しました。

対してSwitch版では、日之世が話し終えるまで表情を変えない。これだけ見ると「蠱毒を知らず、最後まで聞かないと全容を察することができない愚鈍な性質」という解釈になります。

それはそれで良いのですが、Vita版を経た私はこう解釈しました。「Vita版の通り古橋は知ってるし話し始めですぐに察したけど、為政者の作法として相手が話し終わるまで反応を示さないようにしている。それがSwitch版の表情なんだろうな」と。

さらに加えるなら、先述した所作の話。Switch版で効果音が追加されたことで色気のある所作をする蠱惑的な人物という解釈が生まれましたが、では効果音のなかったVita版をどう受け止めるべきか。私は「一つ一つの所作が洗練された王子様」と理解することにしました。Switch版の効果音はあくまでイメージで、実際はそんないちいち物音を立てるような荒い動き方はしない人なんだろうな、と。

まとめ――カラーコードで象徴される古橋の違い

Vita版とSwitch版における古橋の違いを表してるのがブログで公表されたカラーコードです。

古橋

Vita版は#8b0000。R139、G0、B0。色相0度、彩度100%、明度55%。
Switch版は#990000。R153、G0、B0。色相0度、彩度100%、明度60%。

Switch版の方がR値(赤み)が14増え、明度が5%上がってます。わかる。Switch版の古橋はどこか鮮やかさを増しました。そういえばマリスもSwitch版では古橋に呼応するかのように鮮やかな赤色になってました。

でも色相――本質は変わらない。どちらも同じ、古橋旺一郎です。

Vita版の時点で古橋はひとつの物事にも様々な感情や印象を抱えていそうで、賢さと豊かな感性を持った人だと思っていました。Switch版が発売され、Vita版と比べることによってその印象が補強されたようで嬉しいです。

古橋の持つ様々な側面を堪能できる環境を与えられたのは、何よりの贅沢だと噛み締めています。TAKUYOさん、井上さん本当にありがとうございます。

次回は

Vita版時に発表されていた公式推奨攻略順で物語を眺めた時の感想を何回かに分けてやりたい……のですが、全文を読まないことには難しそうだなぁ……(今は歪愛グッドと真相バッドが終わっただけ)。

なので、旧ブログでやったRGB値とカラーコードから『スイクラ』のシステムとキャラ分析記事の改稿を少しずつアップしていこうかなと考えてます。つまり未定です。

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