ほんの一昨日まで動いて、息をして、頷き返してくれたこの人と、何が違うというのか。湯灌を済まし、つやつやとした顔を見ながら、私は世の不思議に打たれていた。身体を運んだずっしりとした感触はしかし、祖父の重さとして手に残っていた。この重みを支えるだけの何かが、彼の中には、もうないのだ。

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